昨今、アフィリエイト業界は変革期を迎えています。EC市場の拡大やデジタル技術の進化により、従来の手法が見直しを迫られる一方で、新たな成長の機会も続々と生まれていることが一因です。
今後のアフィリエイト業界を牽引していく成長ドライバーは一体何なのか、サードパーティCookieを巡る動きやAIによってもたらされる変化にどう対応していけばよいのか、各社が可能性を模索しています。
本座談会では、アフィリエイトが直面する課題とその解決策について、株式会社ADWAYS DEEEの皆さまを迎え、実務的な視点から深く掘り下げていきます。業界リーダーたちの洞察から、アフィリエイトマーケティングの今後の展望と成功への道筋を探っていきましょう。
INDEX目次
参加者
株式会社ADWAYS DEEE(JANet)
左から
・代表取締役 田村鷹正 様
・インターネットDivision バイスゼネラルマネージャー 柳晃平 様
・プロダクトセールスDivision シニアサービスコンサルタント 愛川諒平 様
株式会社ゴンドラ
・取締役CQO 梅村明弘
・コンバージョンデザイン部部長 尾﨑恵美子
2024-2025年のアフィリエイト業界の成長ドライバーは?
2024年に大きく伸長したジャンル
藤原:
本日は、座談会にお越しいただいてありがとうございます。早速ですが、1つ目のテーマ「アフィリエイト業界の成長ドライバー」について考えていきたいと思います。
まずは、2024年を振り返って伸びたジャンルや、来年伸びていきそうなジャンルをお聞かせください。
柳 様:
アフィリエイト市場全体としては、BtoCやECジャンルの伸長が顕著でした。コロナ禍を経たことで、従来は店頭で購入していたユーザーがオンラインに移行しつつある影響が見られています。
加えて、投資系のジャンルも伸長しました。海外情勢が大きく動いたこともあり、今まで海外株に投資をしていたユーザーがリスクの低い国内投資にシフトしたり、不動産投資を始めたりする新しい動きが見られました。
2025年も「ポイントモール」に注目が集まる
愛川 様:
私は、インフルエンサーとポイントモールと呼ばれるメディアが大きく伸長したと考えています。特に、ポイントモールは今後のアフィリエイト市場を成長させていくひとつのドライバーになるのではないか、と想定しています。
ECのアフィリエイトにおいては、成果の9割がポイントモールで発生している状況です。通常、ユーザーは楽天やAmazonを中心にオンラインショッピングを楽しまれていると思いますが、実はその他のクレジットカード会社が運営しているポイントモールも大きく伸びており、オンライン購買が増加しています。
今後ECサイトを運営するお客様にとって、ポイントモールというのは欠かせないチャネルになっていくと考えています。
藤原:
ポイントモールというと、ポイント目当ての利用者は継続率が悪い印象がありますが、その点はいかがでしょうか?
尾﨑:
ポイントモールには、2つの層のユーザーがいると考えています。確かにポイント目当てのユーザーもいるのですが、楽天やYahoo!のように、お得に商品購入するためにポイントモールを活用しているユーザーも一定数います。
ポイントサイトは、広告主の中にはやはりマイナスイメージを持っている方が多いことは事実です。実際の継続率や購買データを示しながら、導入の判断材料を提供していくことが必要ですね。
藤原:
なるほど。では柳さん、金融分野ではいかがでしょうか?インフルエンサー活用含めてお伺いしたいです。
柳 様:
金融分野については、ポイントサイトのあり方はそこまで変わっていないように感じています。金融分野はアフィリエイト市場の中でも多くの売上シェアを占めていますが、インフルエンサーの活用も予想に比べ進んでいません。
比較検討の時間が長い商材なので、「この人が使っているから自分も使いたい」という感情は、生まれにくいのだと思います。業界によって、成長ドライバーは大きく違うのではないかと思いますね。
アフィリエイトで伸びている業界・商品トレンドとは?
金融分野では新しい形の投資商材が台頭
藤原:
では、実際にどういった業界や商品、サービスが伸びているのか、いくつかピックアップしてお話しいただけますでしょうか?
金融分野では、かなり取り扱っているジャンルが増えてきているように感じますが。
柳 様:
そうですね。金融商材は商品自体が増えたというよりも、積極的に認知度を高めようとする広告出稿が増えてきました。例えば、ロボアドバイザーのような投資系商材も増えていますし、不動産投資も含め、投資関連の商材は大きく伸びています。
田村 様:
Instagramをきっかけにした投資需要も増えていますね。今までの証券口座開設とは異なる、新しい形の投資商材がInstagramなどのSNSも活用され、広がっているように感じます。
柳 様:
少額で始められる投資商材が増えたことで、若年層が投資に興味を持ちはじめたことも特筆すべき点ですね。
従来の株式投資は、10株や100株単位での取引が必要でハードルが高いと感じる方が少なくありませんでした。ただ、ここ1年ほどで、そのハードルを下げられる商材を積極的に打ち出していこうという動きが大きく進んでいます。
eコマース専用ブランドや海外格安ECにも注目
藤原:
他の分野では、どのような商品が伸びている傾向にありますでしょうか?
愛川 様:
コロナ禍を経て、医療健康意識の高まりからサプリメントやスキンケア関連商品、フードテック分野も伸びています。UberEatsなどのフードデリバリーも、物流技術の向上により鮮度を保った配送が可能になり、成長しました。
また、ファッションブランドのeコマース専用ブランドも増加傾向にあります。YouTuberが立ち上げるD2Cブランドなども増えてきましたね。
SHEINやTemuといった海外の格安ECも、近年一気に伸びています。国内のEC事業者は、このような海外ECの台頭を意識しつつ、インバウンドの獲得についても戦略を立てていく必要がありそうです。
田村 様:
従来は単品通販系の広告主が多かったのですが、最近はDtoC企業の、とりわけメーカー企業が直接運営するオンラインショップが増えていますね。もともと楽天やYahoo!といったマーケットプレイスで販売していた商品を、自社のECサイトで展開し、そこでお客様とのエンゲージメントを高めていくという流れがみられます。
ゲームやアプリ分野の変化は以前ほど大きくありませんが、ヘルスケア系アプリやマイレージ管理アプリなど、実用的なアプリの広告は増えました。ただし、1社あたりの予算規模は、従来のゲームアプリと比べると小さい傾向にあります。これは、やみくもに広告を配信するのではなく、エンゲージメントの高いユーザー獲得が重要になってきているからだと考えています。
オムニチャネルマーケティングへの関心が拡大
藤原:
ありがとうございます。近年のアフィリエイトやEC業界の流れを受けて、広告主様の取り組みにも変化はありましたか?
田村 様:
近年は、訪日外国人も買い物をオンラインですることが増えてきました。その影響があり、従来のように店舗から購入する方もまだまだ多いのですが、同時にECショップの売り上げも伸びているんですよね。
コロナ禍の際、オンラインでブランドや商品を認知する方が増えたのですが、その購買行動の流れが今も引き継がれているのだと思います。その影響で、オンラインからオフラインも含めた統合的なマーケティング施策を打ち出す傾向が強くなっている印象はありますね。
愛川 様:
私も、クライアント企業と接していて「オムニチャネルマーケティング」への関心の高まりを実感しています。
ただし、各社がオンラインとオフラインの連携を意識している一方で、まだ明確な成功事例や勝ちパターンが業界内に確立されていない状況であることは否定できません。そのため、アフィリエイトにおいても購買データやオムニチャネルの活用について相談を受けることが増えています。
藤原:
実店舗を持つ企業や、オムニチャネルに取り組んでいる企業の場合、来店計測はどのように管理されているのでしょうか?
愛川 様:
以前はGoogleアナリティクスで来店計測ができていたのですが、GA4にはその機能がなくなってしまいました。今は、GPS計測やbeaconを活用したデータを組み合わせながら計測しています。これらのデータをもとに、デジタル広告を見たユーザーの来店率や来店単価を測定し、リスティングやディスプレイ広告の最適化を行っています。
また、オフラインからオンライン購買への誘導など、回遊型の購買行動も増えましたね。従来の直線的な購買導線から、オンラインとオフラインを行き来する複雑な導線へと変化しつつあります。
田村 様:
そういったなかで、ゴンドラさんでは特に伸びているジャンルや、今後の可能性を感じている分野などはありますか?
梅村:
新しいマーケットではありませんが、我々は特定の業界に絞って取り組みを始めています。例えば、ホテル業界では脱OTAと予約型サイトからの脱却といった業界全体にかかる明確な課題感があります。コスト削減という文脈であるため、なかなか提供するソリューションも難しいところではありますが。
また、不動産系やハウスメーカーなど、これまでエリアの制約で難しかった分野にも取り組んでいます。高額商材ですが、アフィリエイト経由でも契約にまでつながっていることが確認出来ています。単純な問い合わせや来場・来店予約を成果地点にしていますが、その後実際の契約にどれだけアプローチできたかを重視しています。
先ほどの来店計測の話と同じように、より深くさまざまな成果指標をみていく必要があるかなと考えています。ただ、まだまだ道半ばという状況です。
アフィリエイトはユーザーへの情報提供に最適な広告
田村 様:
私たちの視点からすると、いつもの行動のついでにポイントを貯められる「ポイントモール」とは異なり、金融商品や不動産は、集客が難しい点が多いと考えています。なぜなら、しっかりとした説明がないと不安を感じるユーザーが多いからです。
企業が一方的に情報を発信すると、怪しく感じられてしまう部分もあります。そのため、第三者によるさまざまな切り口での情報提供が重要になってきます。そういう意味では、アフィリエイト業界との相性はよいと考えています。
梅村:
たしかに、アフィリエイトはユーザーが取捨選択するための情報量を提供しやすい広告だと思います。
尾﨑:
情報提供の観点で言うと、新しくアフィリエイトを始めようとしている、あるいは提案しようとしているときに課題となるのは、「既存の情報を掲載するだけでは不十分」だという点だと思います。
新商品をリリースするタイミングで、ユーザーに情報が少ないと判断されれば、コンバージョンも信用も得られません。それを防ぐために、最初は広く網を広げてできるだけ多くの情報を提供し、信頼性を高めていくところからスタートするクライアントも多いですね。
ただ、その先のオムニチャネル展開までは、まだできていないところが多い状況です。
アフィリエイターに選ばれる設計とは?
ポイントは「成果地点」の設定
藤原:
私も商談に同席することがあるのですが、まだまだアフィリエイトに馴染みのない企業が多いのも事実です。運用型広告では月間1,000万円、2,000万円を使っているようなクライアントでも、アフィリエイトの仕組みをよく理解していないケースが少なくありません。
アドアフィリエイトの成果承認について「全承認でお願いします」と説明しても、なぜ全承認が必要なのかという概念自体がない。承認の良し悪しの判断基準もあいまいで、そこから説明が必要なケースが多く苦戦することがあります。
この点について、どのような設計が望ましいのかアドバイスをいただけますでしょうか?
愛川 様:
不動産分野を例に挙げると、5年前に不動産投資の領域を担当していたときは、アフィリエイトの魅力はリード獲得にありました。
具体的には「無料会員登録やメルマガ登録といった成果地点を設定し、CPAを100円程度で回して、集まったリストに対してインサイドセールスを行う」という手法が一般的でした。しかし、最近は「実際の来場や契約にどれだけ結びついたのか」を重視する傾向が強くなっています。
契約のハードルが高い商材に関しては、アフィリエイトでの成果地点は低めに設定し、CPAも安く抑えることを推奨することがあります。その一方で、実際の契約単価をしっかりと見たうえでリード獲得単価を設定することが大切です。例えば、リード獲得のためにアフィリエイトを活用する場合「成果地点を浅めに設定したうえでCPAを適正化する」といった具体的な提案ができると理想的ですね。
「成果」が事業成長につながるかという視点が不可欠
藤原:
なるほど。金融分野ではどうですか?
愛川 様:
カードローンは依然として申し込みベースの成果地点が主流ですが、どのローン会社も利用限度額に対する出金率やLTVを考慮したうえで、申し込みのCPAを設定しています。このような運用方法は、アフィリエイトに馴染みのない業界にも展開していく必要があると考えています。
アフィリエイターにとっては、成果地点が浅ければ浅いほど取り組みやすく、承認頻度が短いほどキャッシュフローが回しやすいのは事実です。ただし、重要なのは「それが本当にクライアントの事業成長につながっているのか」という部分です。金融業界で進んでいるようなLTVを見込んだうえでCPAを設定する考え方を、アフィリエイトを始めた業界にも浸透させていく必要があると思います。
業界によって適切なCPAが変わってくるということも含め、我々も半ばコンサルティングのような提案もしていかなければならないと思いますね。
商材・メディアに適した単価設定も重要
藤原:
適切な成果地点の設定は、広告主だけではなくアフィリエイターにとっても重要なポイントですよね。他に、広告主がアフィリエイターに選ばれるためのキャンペーン設計のコツはありますか?
柳 様:
メディアの種類によって適切な設計は異なると考えています。商材とチャネルの組み合わせに適した成果地点や、単価を把握して、各チャネルで活動するアフィリエイターに対して適切な価格を提示することが重要なポイントになります。
また、認知が低い商材や新しい商材に関しては、掲載を促進するために成果地点を浅めに設定することを推奨します。アフィリエイトが成立するためにはメディアへの掲載が大前提なので、掲載を担保するための単価設定が必要です。
一方、知名度のある商材については、クライアントの希望を考慮しつつ、メディアにとっても予測していた収益が急に無くならないよう、適切な価格交渉を行うことが重要です。
代理店としては、クライアントとメディアの双方が納得できるように調整を行っていく必要があります。
アフィリエイトの成否を分けるのは「フィードバックの速さ」
藤原:
アフィリエイト広告の手法に関して、課題はありますか?
田村 様:
私は広告主側の経験もありますが、実は当時、アフィリエイトは使いにくい広告商材だったんです。
例えばリスティング広告やディスプレイ広告だと、自分たちで運用していればすぐに結果がわかり、その場でチューニングができます。今日獲得した成果が翌日にはわかり、「このキーワードは効果がないから停止しよう、ここは強化しよう」といった判断ができるんですよね。
一方でアフィリエイトは、成果地点によってはすぐにフィードバックすることができません。例えば、「契約」のように深い成果地点にしてしまうと、フィードバックが数か月先になってしまう可能性もあります。
藤原:
なるほど。アフィリエイターとしては成果地点が浅い方が稼げるのでメリットが多い一方で、広告主は深い成果地点を求める傾向にある、というすれ違いが起きているのですね。
田村 様:
そうなんです。しかし、メディアがいち法人・個人事業主として投資を行い、広告を出してくれているという視点で考えると、少しでも早く成果を返してあげるべきだとも思います。この原理を理解していただければ、メディア側も成果に対する透明性を高めることや、フィードバックの速さを重視してくれるようになるかもしれません。
アフィリエイトと他の広告には大きな違いがあるので、理解が難しい面があることは事実です。私自身、広告主側にいたときは、早くフィードバックを返したかったのに返せないというジレンマがありました。これは、アフィリエイターにとってもやりにくい状況だったと思います。
広告主からのフィードバックをいかに早くできるかが、アフィリエイトの成功失敗の分かれ目になると感じています。
藤原:
その温度感のすり合わせは、事前にやっておかないと難しいですよね。
柳 様:
はい。ただし、私たちは必ずしも成果地点を浅くすることを推奨しているわけではありません。そこは明確にしておきたいですね。
アフィリエイト業界が直面している問題
サードパーティCookieの代替手法を確立することが重要
藤原:
ありがとうございます。では次に、アフィリエイト業界が直面している問題についてお聞かせください。
直近でいえば、Cookie規制の影響やPR表記など、いろいろな変化があったかと思います。2024年を振り返って、新しい変化によって対応が必要になった部分や、来年以降さらに大きな問題となりそうな点について何かありますでしょうか。
愛川 様:
Cookieに関しては、2024年の7月に、GoogleはChromeのサードパーティクッキー廃止を“撤回”しました。とはいえ、ユーザーのプライバシー保護の観点から、広告配信プラットフォームを提供する事業者は、引き続き注視していかなれければならないでしょう。
アフィリエイトの計測に関しては、弊社のサービスは既にファーストパーティーCookieを使用した計測に切り替えており、大きな影響が出ることはありません。ただし、アドネットワークなどのリターゲティングには影響が出てくると考えています。
そのため、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の導入を促進し、ファーストパーティーデータを活用した新たなリターゲティング手法を浸透させていくことが重要です。IM-UIDなども活用しながら、企業がファーストパーティーデータをどう構築し、従来のIDに代わる手法を確立していくかがキーになってきます。
※CDP(カスタマーデータプラットフォーム):顧客データの効率的な収集や統合、分析を行うプラットフォーム。
※IM-UID:インターネット接続で取得できるCookie以外の共通IDソリューション。
田村 様:
我々が取り扱う金融領域では、申込後の借入れなどのデータフィードバックまで行い、チューニングまで実施しています。もちろん個人情報に配慮しつつ、データの取り扱いルールをしっかりと定めた上で行っています。
ユーザーにとって必要なサービスであれば、アフィリエイターと広告主のマッチングは自然と行われます。逆に、無理にアフィリエイターに選んでもらおうとしても、絶対に上手くはいきません。重要なのは、広告主に対して日々の成果地点をどうメディアへ提供できるかということです。
柳 様:
ただし、現時点は完全な解決策を提示できる段階ではありません。正直、門前払いされるケースもまだまだ多いのが現状です。業界全体としても、具体的な提案手法を確立できていないため、ナレッジの蓄積が必要だと考えています。
プライバシーに対する考え方に変化が出ている
藤原:
2021年に総務省や一般社団法人キャッシュレス推進協議会から決済データの利活用に関して他業種との連携を推進する方向性が示されていましたよね。
田村 様:
そうですね。この文脈で興味深いのは、世代別の個人情報活用に関する調査結果(※)です。10代・20代の若い世代は、個人情報の活用に対して非常に前向きな姿勢を示しているんです。「ちゃんと使ってくれるのであれば活用してもらってもよい」という考えが多いんですよね。
つまり、今の10代・20代が、10年後に消費意欲が上がり活躍している社会人になっていく頃には、社会全体のデータ活用に対する考え方も変わってくるのではないでしょうか。安全に配慮しつつ、積極的に活用して欲しいという意識が強まると思います。
柳 様:
SNSの発展とともに、プライバシーに対する考え方自体が変化してきていますよね。
AIと戦うのではなく、共存していく姿勢が求められる
藤原:
AI技術の活用も進んできましたが、この点についてはどのようにみていますでしょうか?
田村 様:
我々が最も注視しているのは、GoogleのAI Overviewの影響です。調査によると、90.4%のユーザーがAI Overviewに好意的な反応を示しており、AI Overviewだけで情報ニーズが満たされたと回答した割合も15%に上ります。(※)
検索流入が15%も減ったら、大きな影響がありますよね。Googleは現在、さまざまな「〇〇とは」といった基本的な検索クエリに対してAIを活用し回答を提供しています。一般的な情報に関しては、検索結果を経由せずにAIによる回答だけで解決できるケースが増えているんです。
ここで問題になるのは、例えば「クレジットカードのおすすめ」など、より具体的な意思決定に関わるクエリまでAIが回答するようになった場合、メディアのあり方がどう変わるのかということです。我々も調査チームを作って勉強会を行っていますが、正直なところまだわからない部分が多いです。
梅村:
Googleが個人データを完全に把握し、購買行動まで正確に推測できる段階に達すれば、AIによる回答の精度も上がってくるでしょう。しかし、現状ではまだそこまでの域には達していないというのが実情ですね。
愛川 様:
Googleは7月にやっと関連商品の提案を始めました。これまではGDNで閲覧した商品がそのままクリエイティブとして表示されていましたよね。これが、例えば「椅子を見たユーザーはクッションにも興味があるかもしれない」という推測ができるようになり始めたんです。まだまだ精度は低い状況ですが。
田村 様:
SNSの影響も大きいですね。我々の世代は今でもGoogleで検索しますが、若者はSNSで検索をする傾向にあります。
今後は、AI検索も一般的になるようであれば、検索行動自体が大きく変わってくる可能性があります。特に金融アフィリエイトの分野では、ここ数年で大きな変革が起こるのではないでしょうか。それは私たちにとって、チャンスでもありリスクでもあると考えています。
柳 様:
実際に、ユーザーの検索手法も少しずつ変化してきています。これまでは単純なキーワードが中心でしたが、最近では3から4つの言葉をつなげて検索をするユーザーが増えています。これには、SNSでの検索やGoogleのAI Overviewの影響もあるかもしれません。
AIは、今後も私たちの行動やビジネスに大きな変革をもたらすでしょう。大切なのはAIと戦うのではなく、共存していくことではないでしょうか。
AIの台頭でSEOに対する考え方にも変化が生まれている
藤原:
AIによる検索結果の表示方法も変わってきていますね。AIの説明の下に参照リンクが表示され、そこにアフィリエイトメディアが含まれているケースもあります。これについてはどのようにみていますか?
愛川 様:
弊社の独自調査チームの結果によると、SEO上位のメディアがAI Overviewの関連情報源として採用される傾向があることがわかっています。そのため、1位から5位のメディアは恩恵を受ける可能性がありますが、5位から10位の1ページ目のメディアのトラフィックは大きく落ちるおそれがあります。この動向については、今後も注視していきたいですね。
藤原:
AI Overview内で紹介されている参照サイトは、サーチコンソール上では1位として表示されていますよね。そうすると、SEO自体に対する考え方が変わっていきそうですね。
愛川 様:
そうですね。ランキングサイトはAI Overviewにあまり採用されません。一方で、ユーザーが知りたいことに対して明確な回答が記載されている、いわゆるコンテンツ型・記事型の実用的な上位サイトは採用されやすい傾向にありますね。
その影響もあり、最近ではコンテンツ戦略の転換が始まっています。例えば、ふるさと納税関連でも、ランキングのコンテンツを10月から廃止して、自治体と返礼品に特化した情報量の多い記事構成に変更しているトップメディアもあります。それくらい大きな変化が起きています。
田村 様:
たしかに、例えば「ふるさと納税 ポイント還元」といった検索では、まだAI Overviewは表示されていません。しかし、このようなクエリでも表示され始める時期は確実に訪れると考えています。その時に備えて、今から準備をしておく必要がありますよね。
藤原:
検索手法が変わりつつあるのは、身をもって実感しています。僕自身、以前は何か検索する際はGoogleを開いていましたが、今は検索したい内容によってはChatGPTを開くこともあります。今後は、Googleのトラフィック自体が減少していく可能性もありますね。その一方で、AI検索エンジンのPerplexityが広告を導入するなど、別の市場が形成されつつあるように感じます。
梅村:
確かにその通りです。AIは、きちんと扱えるようになれば必ずしもマイナスばかりではないのかもしれません。ただし短期的にみると、アフィリエイトや広告の領域で大きく影響を受けることは避けられないでしょう。
適切なPR表記・情報掲載がアフィリエイト業界にとって必要不可欠
藤原:
ありがとうございます。それでは、PR表記についてはどのようにお考えですか。
愛川 様:
PR表記については、昨年10月からステマ規制が開始され、現在ではだいぶ浸透してきていますね。ステマ対策として法規制が入ったことで、一定の表記の適正化効果は出ていると思います。
その一方で、CVRの低下や獲得数の減少といった影響はあまり感じていません。これは、ファンマーケティングの本質的な部分、つまり誰かの推奨で購入するという行動自体は変わっていないからだと個人的に考えています。
とはいえ、PR表記やステマ規制への対応は引き続き重要です。今後は、法令順守のための表記管理体制や、AIツールを活用した表記コントロール、社内の管理体制整備などに強みを持つ広告代理店が、広告主から選ばれやすい状況になっていくのではないでしょうか。
梅村:
私たちも、早くからサイト表記チェック体制を整えていました。それが今では武器になっていて、代理店としての役割が売りになってきているんですね。
尾﨑:
表記チェックを行ってステマ規制に対応するのはもちろんなのですが、信頼性のある情報の掲載をメディア側に浸透させていくことも、アフィリエイト業界にとって必要不可欠だと考えています。
自分たちのメディアで発信している内容によってユーザーの行動や判断が変わることがあるという理解の元、間違った情報は出せないという意識を強く持ってもらえるといいですね。
2025年のアフィリエイト業界の変化予測
表記の適正化と承認作業の自動化を目指す
藤原:
それでは、最後のテーマに移らせていただきます。(株)矢野経済研究所「アフィリエイト市場に関する調査(2024年)」(2024年4月24日発表)の調査(※)によると、アフィリエイトの市場規模は2027年には5,800億円まで伸びるという予測が出ています。
今後ますます市場が拡大するアフィリエイトマーケティングにおいて、広告主側が成果を出すために押さえておきたいポイントがあれば教えてください。
田村 様:
我々が、そして業界として絶対に取り組まなければならないのは、不正対策です。これは広告業界の責任だと考えています。先ほどの表記管理のミスの話と、悪意を持って不正を行う人たちは、分けて考える必要があります。
表記の誤りについては、人の目で何千何万というサイトを見る場合、リスクを完全に回避するのは現実的に不可能です。そのため、我々はクラウドやAIを活用した解決に力を入れています。
また、薬機法・景表法のプロが在籍する弊社独自の仕組みを通じて、メディアとのデータ共有や表記管理にしっかりと取り組んでいます。人的限界を超えるところは、テクノロジーを活用しながらベンダー側でもしっかりとアプローチしていきたいですね。
さらにもうひとつの課題として、成果の承認作業を自動化できないか、という点があります。アフィリエイトは他の広告手法と比べて、テクノロジーや広告の概念的な進化が遅れている部分があります。例えば、成果の認証作業を月1回手作業で行っているような状況では、メディアへの早いフィードバックは難しくなってしまいます。そのため、データ活用や自動化を通じて、少しでも早くフィードバックできる体制を整えていく必要があると考えています。
広告予算の中でアフィリエイトの割合を高めるためには、他の広告にできない、アフィリエイト広告ならではの価値を高めていかなければなりません。逆に言えば、他の広告ができて当たり前のことには、当たり前のように追いついていく必要があります。
広告主に成果をフィードバックする代理店としての役割がより重要に
梅村:
広告主の要求に応えるためには、より詳細なデータ分析と、その結果のメディアへのフィードバックが重要になってきています。クライアントさんが望んでいる形で成果報酬を設計し、自分たちの事業にどうつながっているかを明確に示せるようになることが重要ですね。
尾﨑:
確かに、メディアさんに情報をちゃんとフィードバックするという点は、なかなかできていない部分だと思います。私たちは、代理店の立場としてお客様から情報を吸い上げることはしていますが、どうしても限界があって、メディアさんから見るとかなり抽象的な情報になってしまいます。
その抽象的な部分をもう少し明確にして、「あなたが獲得したリードはこういう結果になっています」というところまでしっかり伝えることで、メディアさんの意欲も変わってくると思います。代理店として、もう少し先の情報までしっかりと伝えていく必要があると感じています。
藤原:
素晴らしいですね。本当にその通りだと思います。
田村 様:
大変な作業ですが、「このページはこうした誘導キーワードを置いたため結果が出た」など、細かい情報までフィードバックを我々はしています。
同じランディングページでも、流入キーワードが変わるとユーザー属性も大きく変わってしまうんです。その組み合わせのチューニングというのが何万、何億通りとできるのがアフィリエイトの良さだと思うので、その点を一緒にチューニングしていければと考えています。
柳 様:
弊社としては、システムを作るだけでは何も解決しないとも考えています。代理店やメディアも含めて、ステークホルダーが事業成長に必要な情報を出し合って、ホワイトボックス化をしていく。
ユーザーも含めた三方良しならぬ五方良しのような状態で、一緒にアフィリエイト業界を作っていくことで、さらに市場が成長していけると考えています。
藤原:
ありがとうございます。予定していた時間が近づいてまいりましたので、この辺りで座談会を終了させていただければと思います。
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
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WRITING 執筆
LIFT編集部
LIFT編集部は、お客様との深いつながりを築くための実践的なカスタマーエンゲージメントのヒントをお届けしています。