株式会社ゴンドラ(東京都千代田区、代表取締役社長 古江恵治)は、リード獲得を目的とした広告運用経験者59名を対象としたWeb広告運用における重要業績評価指標(KPI)の最新動向に関する調査結果を実施しました。
広告運用の世界で、KPI(重要業績評価指標)は大きな転換点を迎えています。
CPA(顧客獲得単価)を重視した運用は、短期的なコスト効率を測るうえで有効ですが、「その顧客は本当に売上や利益に貢献しているのか」という課題が浮上しています。その結果、CPO(注文ごとのコスト)やROAS(広告費用対効果)を指標とする運用へシフトする企業が増えています。
しかし、KPIの移行は一筋縄ではいきません。どのようなデータやツールを活用すべきか、組織内でどのように共通理解を得るべきか、多くの企業が課題に直面しています。
本記事では、リード獲得をKPIとする広告運用(資料請求などリード獲得をコンバージョンポイントとしている広告運用)経験者59名を対象に行ったアンケート調査の結果をもとに、KPI移行の実態や課題について詳しく解説します。
INDEX
大多数の回答者がCPAをKPIに使用
広告運用のKPIはCPA(顧客獲得単価)が主流
広告運用のKPIとして最も多く使用されているのはCPA(顧客獲得単価)で、全回答の約80%がこれを選択しました。CPAは、短期的なコスト効率を評価する指標として分かりやすく、多くの回答者が予算管理や施策評価の基盤として利用しています。
しかし、顧客の質や長期的な収益性を評価するには十分でないことが課題として挙げられる場合があります。
収益性を重視するKPIの利用も拡大しつつある
CPO(注文ごとのコスト)およびROAS(広告費用対効果)は、それぞれ約51%の割合で使用されており、収益性や広告投資効果をより包括的に評価する手段として注目されています。
特に、CPOは広告費を直接的な成果(注文)に結びつける指標であり、売上の貢献度を明確に把握するために効果的です。また、ROASは広告費用対効果を視覚化する指標として、広告全体の効率性を測る上で重要です。
さらに、LTV(顧客生涯価値)を使用する割合は約31%にとどまりましたが、長期的な収益最大化を目指す施策として特定の企業で注目されています。LTVをKPIに含めることで、顧客の継続利用やリピート購入といった要素を広告戦略に組み込むことが可能になります。
この結果から、短期的な成果を測るCPAが依然として主要な指標である一方で、CPOやROASといった収益性を重視するKPIの利用が拡大していることがわかります。企業の広告運用の目的が多様化し、収益最大化を目指す中で、より包括的なKPIを導入する動きが今後も加速すると考えられます。
約7割の回答者が広告運用のKPIをCPAからCPOやROASに移行した経験あり
回答者の約73%がKPIをCPA(顧客獲得単価)からCPO(注文ごとのコスト)やROAS(広告費用対効果)に移行した経験があると答えました。一方で、27%は移行していないと回答しています。
この結果から、広告運用の評価基準としてCPOやROASを採用する割合が増加していることがうかがえます。
KPIを変更する企業が増加
CPOやROASは、広告費用を収益や顧客価値に結びつける指標であり、特にリード獲得をKPIとする広告運用(資料請求などリード獲得をコンバージョンポイントとしている広告運用)を行う企業にとって有用です。
このような移行の多さは、KPIの変更が単なるトレンドにとどまらず、収益性の向上やデータドリブンな意思決定を実現するための実践的な手法であることを示しています。
また、ITP(Intelligent Tracking Prevention)をはじめとするCookieデータ欠損の課題が広がる中、MAツールとの連携によって売上ベースでROASを評価する重要性も高まっています。
KPIを変更していない企業にはさまざまな課題が考えられる
一方で、移行していない企業については、例えば、一度移行を試みたものの社内体制の整備やデータ基盤の構築が課題となり、結果的にCPAに戻したケースなど、さまざまな理由が考えられます。
特に、CPAは計算が簡単で即時的な評価が可能なため、依然として広く利用されていると推測されます。しかし、長期的な視点では、収益性や広告費用対効果の向上を目指すために、CPOやROASへの移行が推奨されると言えるでしょう。
CPA重視の広告運用が必ず収益に繋がるわけではない
CPA重視の広告運用が抱える課題
49%が「CPA(顧客獲得単価)の低い広告媒体に配信を寄せても売上に繋がらない」と回答しており、最も多くの広告運用者が抱える課題として浮き彫りになりました。また、47%が「獲得した顧客の質が低く売上に繋がらない」と回答しており、広告運用の成果が必ずしも収益に直結していない現状が確認されました。
さらに、「CPAが低くてもリピート率が低い」と回答した割合が34%、「LTV(顧客生涯価値)の向上が難しい」と回答した割合が25%に達し、顧客の継続的な価値創出に課題を感じている広告運用者が多いことがわかります。「データやレポートの分析が不十分で次の施策が決められない」という回答も19%に上り、広告運用におけるデータ活用基盤の不十分さが広告の改善を妨げている可能性が示されています。
広告運用の課題解決には「幅広い指標の活用」が不可欠
これらの結果から、CPAを重視した広告運用には、顧客の質を適切に評価する手段が限られており、売上やリピート率の向上に結びつかない傾向があることが明らかになりました。
CPAは広告運用のコスト効率を把握するうえで有用な指標ではあるものの、顧客の長期的な価値やロイヤリティの形成といった観点が不足している点が課題といえます。また、データ分析やレポートの活用が十分でないため、次の施策を具体的に設計する能力が不足していることも、企業が広告効果を最大化できない理由の一つと考えられます。
これらの課題を克服するためには、CPAに限定せず、LTVやリピート率の向上を含む広範な指標を広告運用に組み込むことが重要です。具体的には、CRMツールやMAツールを活用して顧客データを統合し、顧客の行動や属性をもとに施策を最適化することで、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な売上や顧客関係の深化を実現する仕組みを構築する必要があります。
CPOやROASを重視する運用広告において7割弱がCRMツールを利用している
導入ツールは企業によってさまざま
最も多く利用されているツールはCRMツールで、68%が導入していると回答しました。CRMツールは顧客情報を一元管理し、LTV(顧客生涯価値)や顧客行動データを基にした効果的なターゲティングを可能にするため、CPOやROASを重視した広告運用において欠かせない存在となっています。
次に多く利用されているのはMAツールで、54%の回答者が活用していることが分かりました。MAツールは、広告運用からリード育成、さらには顧客の購入行動に至るまでのプロセスを自動化することで、効率的な運用を実現しています。
また、44%は自社データベースを活用しており、独自の顧客データを基に分析や戦略立案を行っています。さらに、大手のCRMやMAツールではGoogle広告と連携し、検索広告のキーワード単位でROASを算出することも可能です。
広告媒体の管理ツールやCDPは今後の利用拡大に期待
一方、広告媒体の管理ツールは36%の回答者が利用しており、運用の効率化やパフォーマンス測定に役立っています。ただし、CRMやMAツールほど普及しておらず、目標広告費用対効果やコンバージョン値といった設定や指標を広告配信に活用できていない傾向が見受けられます。
同様に、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)の導入率は22%にとどまっていますが、複数のデータソースを統合して高度な分析を可能にする点から、今後の利用拡大が期待されています。
広告運用を成功させるカギは「顧客データ」
全体として、CPOやROASを重視した広告運用においては、顧客データを効果的に収集・活用するためのツールの重要性が高まっていることがわかります。
特に、CRMやMAツールの活用は、広告の成果を最大化する上で中核的な役割を果たしており、広告主がLTVの向上や費用対効果の最適化を目指す際に大きな助けとなっています。また、独自データベースやCDPを通じて、より精緻なターゲティングや広告効果の可視化を実現することが、今後さらに求められるでしょう。
CPAからCPO、ROASにKPIを移行する際に苦労した点は「運用担当者のスキル不足」が最多
KPI移行時の課題
「運用担当者のスキル不足」が最も多くの回答を集めており、全体の58%がこれを課題として挙げました。次いで、「社内の理解を得ること」が56%と高い割合を占めており、KPI移行を進めるうえで、人的なリソースや組織的なサポートが不足している現状が浮き彫りになりました。
また、「必要なデータの収集・統合」を課題とする回答が49%に達し、データを正確かつ効率的に管理する基盤の構築が依然として重要な課題であることがわかります。「適切なツールの導入」は36%の回答者が苦労した点として挙げており、広告運用に適したソリューションの選定や導入が容易ではない現状が見受けられます。
さらに、「効果測定基準の再設定」(24%)や「チーム内でのKPIに対する意識の統一」(14%)といった課題も一定数挙げられており、組織全体でKPI移行に対する共通認識を持つことの難しさが示されています。
一方で、「KPI移行後のパフォーマンス低下への対応」を挙げた回答者は8%にとどまり、実際の広告パフォーマンスよりも、移行プロセスにおける内部的な問題が大きな課題となっていることがわかります。
KPI移行には「運用担当者のスキル向上」と「データ基盤の強化」が不可欠
これらの結果から、KPI移行を成功させるためには、運用担当者のスキル向上やデータ基盤の強化が欠かせません。また、社内での理解を深め、組織全体で移行のメリットを共有することが重要です。
具体的には、研修やワークショップを通じて担当者のスキルを向上させるだけでなく、CRMやMAツールなどを活用してデータの収集・統合を効率化し、適切な意思決定を支える基盤を構築する必要があります。
加えて、移行後のKPIが広告運用全体にどのような影響を与えるかを可視化し、組織内で共有することで、移行プロセスに対する不安を軽減することが求められます。このような取り組みを進めることで、KPI移行の課題を克服し、広告運用の効果を最大化することが可能となるでしょう。
調査結果に対する株式会社ゴンドラ シニアコンサルタント 藤原洋平からのコメント
今回の調査を通じて、広告運用におけるKPIが急速に変化している現状が明らかになりました。
従来のCPA(顧客獲得単価)は、短期的なコスト効率を把握するためには有用な指標ですが、顧客の質や長期的な収益性を評価するには限界があります。そのため、CPO(注文ごとのコスト)やROAS(広告費用対効果)への移行を検討する企業が増加傾向にあります。
この移行は、広告費用を効率的に配分し、収益を最大化するための重要なステップであり、広告運用全体の精度を高めるものです。特に、リード獲得をKPIとする広告運用(資料請求などリード獲得をコンバージョンポイントとしている広告運用)では、単にコンバージョンが発生しただけでは売上に直結せず、後続のフォローコールや営業活動、クロージングの成果を含めた数値を考慮した広告指標の設定が求められます。
一方、Cookie規制の強化により、広告運用の基盤となるデータの欠如が新たな課題として浮上しています。Cookieの利用が制限される中、多くの企業がターゲティングや効果測定に必要なデータを十分に取得できない状況に直面しています。このデータ不足は、特にKPI移行後の広告運用に深刻な影響を与えており、広告パフォーマンスの正確な評価や次の施策の設計を困難にしています。
さらに、調査結果からも、KPIシフトには「運用担当者のスキル不足」や「社内の理解を得ること」が大きな障壁となっていることがわかりました。それに加えて、「必要なデータの収集・統合」や「適切なツールの導入」も重要な課題として挙げられ、これらが整備されなければ、広告運用の最適化はさらに困難になります。
広告運用の改善をご検討や現状の施策に懸念をお持ちの方へ
ゴンドラでは、広告運用からCRMまで一気通貫で対応できる体制を整えており、特にROASやCPOをKPIとした広告運用に強みを持っています。顧客の購買行動データやLTV(顧客生涯価値)を最大化するために、CRMツールやMAツールを活用し、広告費用の適正化と収益性向上を目指した戦略設計をトータルで支援します。これにより、企業が直面する課題を効率的に解消し、KPI移行をスムーズに進めることが可能です。
また、広告運用をCRMと連携させた包括的な施策を行うことで、短期的な広告効果に加え、中長期的な収益性の向上を図ることができます。このような一貫した運用体制は、社内リソースや専門知識に限りがある企業にとって、特に有効です。
広告運用からCRMに至るまでの一連の流れを効率化し、広告費を最大限に活用した成果を得るために、ぜひゴンドラにご相談ください。貴社のビジネスにおける広告運用の効果を最大化し、持続可能な成長を実現するお手伝いをいたします。
調査概要
調査実施会社:株式会社ゴンドラ
実施期間:2024年11月27日~2024年12月4日
調査対象:リード獲得をKPIとする広告運用の実務経験者がある20歳以上の男女59名
調査方法:インターネット調査
CONTACT お問い合わせ
WRITING 執筆
藤原 洋平
Google、Yahoo! JAPANを中心としたリスティング広告、Facebook、instagram、X(旧Twitter)、LINEを中心としたSNS広告、アフィリエイト広告、インフルエンサーキャスティングなど、webマーケティング全般を手掛ける。
これまで数多くのセミナー・ウェビナーに登壇。書籍「BtoBマーケティングの基本 IT化のインパクトを理解する12 の視点」(日経BP)を執筆。