Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)は、Facebook広告の機械学習によって自動で広告配信が最適化されるキャンペーンです。
この記事では、ASCのメリットやデメリット、設定方法をわかりやすく解説します。
配信のコツを知って、効果の最大化を目指しましょう。
この前先輩に教えてもらったGoogleのP-MAXキャンペーン、しばらく使ってみたんですけど、とっても便利ですね!機械学習で広告配信が自動化・最適化されるから、手間が最小限に抑えられています!他の媒体にも同じような広告があればいいのに。
お、さっそく知識を活かしてくれてうれしいよ。P-MAXキャンペーンが気に入ったなら、Facebook広告のAdvantage+ショッピングキャンペーン(ASC)も使ってみたら?
Advantage+ショッピングキャンペーン……?何ですか、それ!?
INDEX
Facebook広告の「Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)」とは?
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)は、Meta社提供のFacebook広告で利用できる、機械学習による最適化・自動化に特化したキャンペーンです。2022年10月1日より提供が開始されたもので、効率性を向上しながらコンバージョンの最大化・パフォーマンス改善が目指せます。
Meta社では広告配信の自動化を目指す「Meta Advantage」というプロダクトラインアップに注力しており、ASCはそのなかのひとつです。Google広告で提供されている「P-MAXキャンペーン」のFacebook版だと考えるとわかりやすいでしょう。
ここでは、ASCをより深く知るために押さえておきたい以下の4項目について解説します。
- Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)のメリット
- Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)のデメリット
- Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の利用条件
- Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)と従来のキャンペーンの違い
それぞれを詳しくみていきましょう。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)のメリット
ASCを利用するメリットは、次の5つです。
- 機械学習によってパフォーマンスが向上する
- 運用工数を削減できる
- 一気に複数の広告クリエイティブを入稿できる
- 配信比率を調整できる
- さまざまな商材に向いている
どのようなことなのか、詳細を説明します。
機械学習によってパフォーマンスが向上する
ASCは、従来のキャンペーンとは異なった機械学習ロジックを活用し、ターゲティングやクリエイティブ、配信面を自動で最適化してくれます。そのため、広告運用にリソースを避けられなかった企業や今までFacebook広告で成果が得られなかった企業でも、パフォーマンスの最大化が狙えるのです。
「新しいターゲットを発見したい」「費用対効果を向上させたい」という場合は、チャレンジしてみる価値があるでしょう。
運用工数を削減できる
ASCでは機械学習により広告配信が最適化されるため、細かいターゲティングやクリエイティブ設定が不要です。工数を最小限に抑えて広告配信できる点が、大きなメリットです。
今まで広告設定・運用に割かれていたリソースを他の業務に回せるので、取り組める施策の幅が広がるでしょう。クリエイティブの改善や分析に割ける時間が増えれば、より広告効果を高められるようになります。
一気に複数の広告クリエイティブを入稿できる
ASCでは、1つのキャンペーンに画像や動画、カルーセルなどさまざまな形式の広告を最大150枚まで一気に入稿できます。広告配信の際は、あらゆるクリエイティブとターゲティング、配信面の組み合わせがテストされるため、従来のキャンペーンよりも機械学習の幅が広がります。
入稿にかかる手間を削減できるだけではなく、今まで手動では見つけられなかったベストな組み合わせを見つけられる点がメリットです。
配信比率を調整できる
従来のキャンペーンでは、既存ターゲットと新規ターゲットそれぞれに広告を配信したいときは、キャンペーンを分ける必要がありました。一方でASCでは、既存のターゲットと新規ターゲットの両方に対する広告配信が可能です。
さらに、配信比率を分けることもできます。1つのキャンペーンだけで、狙ったターゲットへの訴求に適した広告が配信できます。
さまざまな商材に向いている
「Advantage+ショッピングキャンペーン」というキャンペーンの名称から、ASCは有形商材やECサイト向けの広告であると思われるかもしれません。しかし、実際は有形・無形を問わずさまざまな商材に向いている広告なので、幅広い企業で活用できます。
現在はクリニックや人材、HR、オンライン予約など、幅広い分野でASCが活用され、高い成果を挙げています。広告運用を効率化したい企業は、業種や商材にとらわれずにASCを取り入れてみるとよいでしょう。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)のデメリット
ASCには多くのメリットがありますが、次のようなデメリットも存在しています。
- 機械学習に一定期間を要する
- 手動による調整ができない
- 要因を分析しにくい
デメリットの詳細をみていきましょう。
機械学習に一定期間を要する
ASCを配信するときは、複数のターゲティングやクリエイティブ、配信面をテストして機械学習を行います。そのため、ベストな組み合わせが導き出されるまでは、パフォーマンスが発揮されない可能性がある点に注意が必要です。
運用開始時は、テスト期間として最低でも7日以上は様子をみましょう。また、この期間中は機械学習を促すために、成果につながらなくても予算を投入し続ける必要があります。
即効性があるキャンペーンではないので、最低限の予算・期間で成果を出したいときは不向きだといえるでしょう。
手動による調整ができない
ASCでは、ターゲットやクリエイティブを手動で設定できません。そのため、意図しない広告配信につながる可能性があります。
ターゲットやクリエイティブに制約がある場合、ASCによる広告の自動配信がトラブルにつながるリスクに注意が必要です。広告を細かく調整する必要があるときは、他のキャンペーンを活用しましょう。
要因を分析しにくい
ASCは自動的に配信されてしまうため、成果の要因を分析しにくい点にも注意が必要です。どの要素がどの成果につながったのかを正確に把握できないので、運用開始後の調整や改善を行うことが困難です。
広告成果とその要因は、他の媒体における広告運用にも活かせる重要なノウハウになります。そのノウハウを蓄積しにくい点は、運用者にとって大きなデメリットでしょう。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の利用条件
リリース当初ASCは段階的に提供されていたので、「条件を満たしていないと利用できない」といわれていました。しかし、現在は誰でも利用できるキャンペーンとして解放されています。
ただし、ASCを利用したい場合は、キャンペーン作成時に目的を「売上」に設定する必要があります。他の目的には対応していないため、設定時は注意しましょう。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)と従来のキャンペーンの違い
ASCを利用するときは、従来のキャンペーンとの違いをしっかりと把握しておくことが大切です。
それぞれの特徴は、表のとおりです。
項目 | ASC | 従来のキャンペーン |
機械学習 | 改良された新しい機械学習モデル | 従来の機械学習モデル |
クリエイティブ | 1広告セットあたり最大150のクリエイティブ自動で配信される | 制限なし(最大6件を推奨)手動で設定する |
配信面 | 自動配置 | 手動・自動 |
最適化 | 最小のCPAでCVの最大化を目指す | 入札戦略で設定したイベントのCVを目指す |
入札 | 自動 | 手動 |
ターゲティング | 自動(国のみ指定) | 手動 |
ASCの特徴として、設定できるクリエイティブの数に制限がある点、入札やターゲティングなど従来のキャンペーンでは手動で行っていた設定が自動化される点が挙げられます。機械学習をもとに広告が自動配信されるため、最小限の手間でパフォーマンスの最大化を目指せます。
簡単にいうと、AIが自動で配信してくれるFacebook広告ってことだね。
へぇ~、Facebook広告にも自動配信できるキャンペーンがあるんですね!気になります!
それなら、詳しい使い方をみてみようか。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の使い方
ASCは、簡単な設定だけで配信を開始できます。
ここでは、ASCを配信するときの設定方法を詳しくみていきましょう。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の設定方法
ASCは、Facebookの広告マネージャから設定が可能です。
詳細な手順は、次のとおりです。
- 広告マネージャの「+キャンペーン作成」を選択する
- キャンペーン目的で「売上」を選び、「次へ」をクリックする
- 「Advantage+ショッピングキャンペーン」を選び、「次へ」をクリックする
- キャンペーンに任意の名前をつける
- コンバージョンの場所を、「ウェブサイト」「ウェブサイトとアプリ」から選択する
※場合によっては「ピクセル」「アプリ」についても選択する必要がある - 「オーディエンス」で配信したい国を最大8つ選択する
- 「最適化と配信」を選択する
- 既存の広告クリエイティブを利用するために、「おすすめの広告>インポート」を選択する
- 「広告レベルに移動」をクリックし、クリエイティブを個別に編集する
- 準備ができたら「公開」をクリックする
上記の設定が完了したあとはFacebookによる審査が行われ、問題がなければ広告配信が開始となります。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の予算割合を指定する方法
ASCでは、既存ターゲットと新規ターゲットそれぞれに配分する予算の割合を指定できます。希望する場合は、次の手順で設定を行いましょう。
- 広告セットの編集画面で「アカウント設定で編集」をクリックする
- 「広告アカウント設定」で「Advantage+ショッピングキャンペーン」を見つける
- 既存の顧客として指定したいオーディエンスを選択して「実行」をクリックする
- 広告セット編集画面に戻り、「予算と掲載期間」の「既存顧客の予算上限」にチェックを入れる
- 既存顧客への予算上限割合を設定する
これで、既存ターゲットと新規ターゲットの予算割合を指定できました。
こんな感じかな。設定する項目が少ないから、初心者でも配信を開始しやすいと思うよ。
ほんとだぁ!これなら、僕にも使えそうです。広告配信が自動化されるってことは、配信設定さえしておけばあとは運用をお任せしてしまっても大丈夫なのでしょうか?
実は、そういうことでもないんだよね。ASCを配信するときは、運用のコツを意識する必要があるよ。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)運用のコツ
ASCを運用するときは、以下のコツを意識すると成果を高めやすくなります。
- 日予算の目安を把握しておく
- 「地域の除外」「最低年齢の引き上げ」「配信面の除外」設定を活用する
- ユーザーに適した訴求を行う
- クリエイティブはできるだけ多く設定する
それぞれの詳細をみていきましょう。
日予算の目安を把握しておく
Meta社からは、ASCのパフォーマンスを安定させるには7日間のキャンペーンで50件以上、もしくは1日あたり15件以上の購入コンバージョンを達成する必要があると言及されています。※
あくまでも目安ですが、この条件を達成するためには、ASCに十分な予算を投入することが大切です。
日予算の目安を把握するときは、「CPA×50」で週あたりの予算を割り出してから1日あたりの予算を算出します。ただし、テスト期間はCPAが高くなる可能性があります。可能であれば、少し予算に余裕を持たせましょう。
「地域の除外」「最低年齢の引き上げ」「配信面の除外」設定を活用する
ASCでは、ターゲティングに関する設定を行うことはできません。しかし、「地域の除外」「最低年齢の引き上げ」「配信面の除外」に関しては手動で管理できるので、希望がある場合は設定しておきましょう。
設定手順は、次のとおりです。
- 広告マネージャで「広告アカウント設定」を開く
- 「オーディエンス管理」を選択する
- 「特定のロケーションでのみ宣伝できる」をオンにして、除外したい地域を選択する
- 「年齢制限付きの商品またはサービスを宣伝している」をオンにして、最低年齢を選択する
- 「特定の配置でのみ宣伝できる」をオンにして、広告を表示したくない配置のチェックを外す
- 「変更を確認」を選択し、問題がなければ「確認」を押す
設定の内容は、広告アカウントにおける既存のASCすべてに適用される点に注意しましょう。変更は、最大48時間以内に反映されます。
ユーザーに適した訴求を行う
ASCの「広告セット>内訳>利用者層データ別>オーディエンスタイプ」から、新規顧客と既存顧客の内訳を確認できます。効果を最大化するためにも、この情報を活用して広告を運用することが大切です。
各ユーザーに対して高い成果を発揮しているクリエイティブを確認できれば、クリエイティブの追加や差し替えを行いやすくなります。単に企業が伝えたいことを訴求するだけではなく、ターゲットが求めている情報を伝達できるクリエイティブになるようブラッシュアップしていきましょう。
クリエイティブはできるだけ多く設定する
ASCを配信するときは、できるだけ多くクリエイティブを設定してください。クリエイティブの量が多いほど多くデータを収集でき、広告を最適化しやすくなるためです。
時間をかけて作り込んだものを数個だけ入稿するよりも、バリエーション豊富なクリエイティブを多く入稿する運用方針を推奨します。最初はさまざまなパターンをテストすることに重点を置き、運用するなかでクリエイティブの質を磨き上げていくと効率的です。
ふむふむ。運用のコツ、しっかりと意識しておきたいと思います!
それとね、ASCを配信するときは注意点にも気をつける必要があるんだよ。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の注意点
ASCの運用時は、次の注意点を意識しましょう。
- 複数のキャンペーンを並走させる
- 設定を編集しすぎない
- クリエイティブをブラッシュアップする
各項目の詳細を説明します。
複数のキャンペーンを並走させる
ASCには機械学習の時間が必要なので、既存のキャンペーンからいきなり切り替えると、学習期間中にパフォーマンスが大きく低下するリスクがあります。
そのため、「パフォーマンスを維持したい」「既存のキャンペーンから切り替えるべきか悩んでいる」という場合は、2週間程度は既存のキャンペーンと並走させることがおすすめです。パフォーマンスを比較してから判断すると、大きな失敗を防げます。
並走期間中は同じ内容の広告を入稿して予算をそろえると、正確にパフォーマンスを比較しやすくなります。
設定を編集しすぎない
ASCが情報を収集している期間中(最低7日間)は、広告セットや予算をむやみに編集することを避けてください。変更があるたびに機械学習が再度行われるため、情報収集期間が長引いてしまう可能性があります。
また最適化が実行されたあとも、広告セットや予算の大幅な編集を頻繁に行うと、情報収集に入ってしまう点に注意しましょう。設定の変更は、パフォーマンスの改善が見込まれる場合のみ行うことをおすすめします。
クリエイティブのブラッシュアップが必要
ASCで忘れてはいけないのが、クリエイティブのブラッシュアップです。
いくら広告配信が最適化されても、クリエイティブに問題があればコンバージョンにつながることはありません。ユーザーの内訳やクリエイティブの成果を確認しながら、随時クリエイティブを最適化しましょう。
ASCは最適化・自動化に特化したキャンペーンですが、クリエイティブに関してはどうしても人の力で制作・改善する必要があります。すべてのプロセスを自動化することはできない点を理解しておきましょう。
この注意点を知らないと、広告予算が無駄になってしまう可能性があるんだ。気をつけようね。
は~い、わかりましたっ!ところで先輩、ASCで実際に成果を上げた企業ってあるんですか?
もちろんだよぉ。それじゃあ、ASCの企業成功事例をみてみようか。
Advantage+ショッピングキャンペーン(ASC)の企業成功事例
ここでは、ASCを活用してコンバージョンを増加させた企業の成功事例を2つ紹介します。
Brooklinen
Brooklinenは、高品質なシーツを手ごろな価格で提供しているアメリカのD2Cブランドです。同社はMetaのビジネスパートナーであるSaaS企業 Smartly.ioと手を組んでいち早くASCを取り入れ、広告の費用対効果の向上に成功しました。
ASCを取り入れた目的は、サイバーウィーク期間のコンバージョンを向上させることです。結果として、前年同時期と比較してコンバージョン率は45%向上し、CPC(クリック単価)は8%、CPM(インプレッション単価)は12%減少しました。
既存のワークフローにASCを統合しつつ、新しいビジネスチャンスの獲得に成功しています。
SNKRDUNK
SNKRDUNKは、人気ブランドのスニーカーやトレーディングカードを取り扱う、日本に本社を置くEコマースプラットフォームです。広告を経由した売上や投資対効果の向上、工数削減を目的にASCを導入しています。
同社は、広告配信にあたりABテストを実施。通常キャンペーンのカタログ広告を配信した場合と、通常キャンペーン+ASCを並走させたパターンに分けて効果を比較しました。
その結果、通常キャンペーンとASCを組み合わせたパターンでは購入数が1.6倍に増加。費用対効果も1.7倍まで向上しました。獲得効率の改善だけではなく、リーチ拡大効果も得ています。
へぇ~!日本にもASCを積極的に取り入れて効果を実感している企業があるんですね!
そうなんだよ。もちろん、「絶対に既存のキャンペーンより高い効果が得られる」とは断言できないんだけど、商材や運用方法が適していれば、目的の達成に貢献してくれるはずだよ。ビギニャー君も、ぜひWeb施策のひとつとして活用してみてね。
はいっ!先輩に教えてもらった知識を活かして、僕も効率的な広告運用を目指すぞ~っ!
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