ABテストとは、複数パターンの施策を用意し、どのパターンがもっとも高いコンバージョン率を得られるのかを検証する手法です。
「はじめてABテストにチャレンジしたい!」と思っても、いざやってみようとするとどのように実施すればいいのかがわからない方はいることでしょう。
本記事では、ABテストの概要や、やり方を詳しくご紹介します。
シニヤン先輩!今日はABテストを試してみようと思うんです!
おっ、いいねいいね!初めての実施だろうし、今回は僕が一緒に見ていてあげるよ。
いいんですか!?よろしくお願いしまーす!
ABテストとは?
ABテストとは、同じ情報で表現の異なるAのパターンとBのパターンを用意し、どちらの方がよりコンバージョンにつながるのかを比較・検証する手法です。場合によっては、3パターン以上のコンテンツで検証することもあります。
マーケティングではよく耳にするABテストですが、目的や種類を詳しく知っている方は少ないかもしれません。まずは、ABテストの概要を解説します。
ABテストの目的
ABテストの目的は、次の2つです。
- コンバージョン率(CVR)の向上
- クリック率(CTR)の向上
ABテストを実施するときは、たとえば「画像Aを使った広告」「画像Bを使った広告」の両方を公開して、どちらの方がユーザーの反応がいいかを確認します。
このテストを行うことで、より成約やクリックに至りやすいパターンを検証できるのです。何が成約やクリックに貢献しているのかを分析することも可能なため、効率的にCRO(コンバージョン率を最適化)を実施できます。
ABテストの種類は3パターン
ABテストは、実施方法によって3つの種類に分類できます。それぞれの種類を詳しくみてみましょう。
同じURLで行うABテスト
もっともオーソドックスなのが、URLを変えずにサイトの中身だけを変えるABテストの手法です。ソースコードを書き換える必要がなく、ABテストの用意にあまりリソースを割かなくてもいいというメリットがあります。SEOに影響を与えにくい点も特徴的です。
別ページにリダイレクトさせるABテスト
別名「スプリットURLテスト」とも呼ばれています。テスト対象のページに訪問したユーザーを、別のURLにリダイレクトさせるABテストの手法です。見た目だけではなくページの中身も別のものにするため、URLもページも2つ用意しなければいけません。
多変量テスト
複数の要素の組み合わせを比較するABテストの手法です。通常、ABテストは変更要素をひとつに抑えて検証する必要がありますが、多変量テストでは自動で複数の要素を比較できます。これにより、効率的に最適な組み合わせを見つけられます。
ABテストを試してみようと思ったのはいいものの……、やり方をよく知りませんでした!先輩、教えてもらうことってできますか……?
あれ、やり方を教えていなかったっけ?それじゃあ、ABテストの手順を詳しくみてみようか。
ABテストのやり方
ABテストは、どのような流れで実施すればいいのでしょうか。ここでは、具体的な手順を解説します。
- ABテストの目的を整理する
- 仮説を立てる
- ABテストを実行する
- テストの結果を分析して改善を繰り返す
各プロセスを詳しくみていきましょう。
ABテストの目的を整理する
まずは、ABテストの目的を整理しましょう。ABテストの最終的な目的といえば「コンバージョン率の改善」「クリック率の向上」などですが、初めからこれらの数値を大幅に向上させることはできません。
最初は「離脱率の低下」や「滞在時間を長くする」など、コンバージョン前の段階における目的を設定することが大切です。
仮説を立てる
次に、目標を達成するために必要な施策の仮説を立てましょう。
- 滞在時間が短い原因はファーストビューかもしれない
- クリック率が低いからボタンのデザインを変えてみよう
このように、「何がどう悪くて・どう改善すればいいのか」について考えてみます。このときは微細な部分ではなく、よりコンバージョンに近い要素から優先的に改善案を立てていくことが重要です。
ABテストを実行する
仮説を踏まえたうえで別パターンのページや広告などを制作できたら、さっそくABテストを実施していきましょう。
ABテストは、定番の「Googleオプティマイズ」だけではなく、さまざまなツールで行えます。いくつか比較してみて、自社に適したものを選びましょう。また、ABテストの実施方法には次の2種類があります。
- 別々の時期にAパターンとBパターンをテストする「逐次テスト」
- AパターンとBパターンを同時期にテストする「並行テスト」
逐次テストは時季によって結果が変わる可能性があるため、同条件で比較できる並行テストがおすすめです。
注意点として、ABテストのために行った施策がユーザーのニーズにそぐわず、悪い影響が出る可能性がある点が挙げられます。どのような影響が出るのかをしっかりと予測して、すぐに対処できるよう準備しておきましょう。
テストの結果を分析して改善を繰り返す
ABテストの結果が出たあとは、分析を行って改善策に反映します。「どっちの施策がよかったか」だけではなく、「どうしてよかったのか」「どこが間違っていたのか」などを考えることが大切です。
また、ABテストを1回で終わりにするのではなく、他のパターンと組み合わせてテストして、より良い施策に磨き上げていくことを推奨します。
ABテストで小さな改善を繰り返せば、コンバージョン率やクリック率向上という最終的な目標に近づいていけるでしょう。
なるほどぉ。目標設定と仮説、そして繰り返しABテストを実施することが大切なんですね!わかりました!
ところで、ABテストってどんなものを対象に実施すると効果的なんですか?
ABテストの対象
ABテストの対象にできる要素は非常に多くありますが、大切なのは「影響が大きく、改善の効果が出やすいところ」を検証していくことです。特に次の3点は、クリック率やコンバージョンへの影響が大きい部分だといえるでしょう。
- 広告
- Webサイト
- アプリケーション
詳しく解説します。
広告
ABテストは、Web広告と非常に相性のいい施策です。広告では、次のようなポイントの改善にABテストを活用できます。
バナー
広告のバナーは目立ちやすいがゆえに、直感的に「イイ」と思ってもらえるかどうかがカギになります。たとえば、キャッチコピーが全く同じだったとしても、デザインが違うだけで大きくクリック率が変わってきます。どんなデザイン、どんなキャッチコピーならより効果的なのかを検証することが大切です。
LP
広告をクリックした人が遷移してくるランディングページは、コンバージョンにつながるかどうかに直結する重要なページです。
たとえば、ファーストビューやメインビジュアル等は第一印象に大きく関わり、お問い合わせボタンまわりのレイアウト等はユーザビリティにも影響してくるでしょう。どのようなデザイン、どのようなレイアウト、どんな訴求内容が効果的なのかを検証するのは非常に大切です。
広告文
主にリスティング広告における広告文です。広告を配信する際アピールしたいポイントはたくさんあると思いますが、それぞれのポイントが「ユーザーがどれくらい興味を惹かれるものなのか」には優劣があるでしょう。
どのようなキーワードを使えばよりユーザーの心をキャッチできるのか、しっかりと検証することが大切です。
Webサイト
ABテストは、Webサイトを対象に行う場合もあります。WebサイトでABテストを行うときは、これらのポイントを重点的に検証してみましょう。
ファーストビュー
ファーストビューは、ページを開いたとき最初に目に入る部分です。Webサイトや広告でもっとも目立つ場所なので、画像を変えたり文字のレイアウトを変えたりするだけで高い効果を得られる可能性があります。
メインコピー
メインコピーとは、メディアやページで最初に目にするコピーです。キャッチコピーと言い換えることもできます。ユーザーは、メインコピーを読んだだけでその先を読み続けるかどうかを判断します。
複数パターンのメインコピーを作成してABテストを実施すれば、よりユーザーの興味を引くサイトに仕上げられるでしょう。
CTAボタン
CTAボタンとは「Call To Action(行動喚起)」の略語で、購入やお申し込みを促すボタンです。企業が目指す目標(CV)に至ってもらうためには、必ずCTAボタンをクリックしてもらう必要があります。
そのため、非常に重要度が高いポイントなのです。CTAボタンのABテストを行うときは、ボタンの色やサイズ、周辺のコピー、数や位置などを複数検証してみましょう。
動線
ABテストでは、ユーザーの動線を改善することも可能です。CTAボタンが複数あったりリンクが複数あったりするサイトでは、ユーザーが迷ってしまい、本来向かって欲しいゴールから気を逸らさせてしまう可能性があります。
- 必要なリンクを最低限残して他は削除する
- あえてレコメンドエリアを表示させない
このように、動線を整えるためにABテストを実施すると、ユーザーの行動をコントロールできるようになる可能性があります。
タイトル
タイトルや見出しは、ユーザーの注目を集めやすい箇所です。タイトルや見出しだけを見て「このサイトを読み続けるかどうか」を判断するユーザーもいるので、ニーズに沿ったタイトルや見出しをつけることが非常に重要です。ABテストを行い、わかりやすく興味を引く文言に仕上げましょう。
アプリケーション
ABテストは、アプリケーションに対して行う場合もあります。アプリ自体をよりよくするためにABテストを行うときもあれば、より多くのユーザーにアプリをダウンロードしてもらうためにABテストを行うときもあります。
ABテストを行う対象はわかったんですけど、具体的にどんなふうに改善していけばいいのでしょうか……?
そうだね、例えば……。
ABテストの改善事例
ABテストでは、具体的にどのようなポイントを改善するのでしょうか。ここでは、パターン別に改善事例をご紹介します。
- バナー・広告の改善事例
- ECサイトの改善事例
各パターンを詳しくみてみましょう。
バナーや広告の改善事例
バナーや広告を対象にABテストを行うときに検討できる施策としては、次のようなものが挙げられます。
- テキスト文字数を変える
- テキストそのものを変更する
- 画像を変える
- タイトル文を変える
- CTAボタンの色味や文言を変える
- LPの構成を入れ替える
ABテストの成功事例として、オバマ大統領の献金サイトの事例が挙げられます。画像とボタンの文言、色味を変えたページを複数用意してABテストを繰り返した結果、60億円もの献金集めを成功させました。
ECサイトの改善事例
広告を対象にABテストを行うときに検討できる施策としては、次のようなものが挙げられます。
- CTAボタンのレイアウトを変更する
- ページレイアウトを変える
- デザインが異なる商品画像に差し替える
- 入力フォームをシンプルなものにする
- レコメンドなどの表示をやめて離脱動線をなくす
たとえば、商品詳細ページのレイアウトを変更したり、購入ボタンのデザインを変えたりするだけで、コンバージョン率は大きく変わります。
ただし、ECサイトを大幅にリニューアルすると既存顧客が戸惑ってしまう恐れがあります。ABテストを行うときは、ユーザーの操作性が低下しないように十分注意しましょう。
だいぶABテストの実施方法についてイメージできてきました!よ〜し、これでどんどんクライアントさんのページを改善していくぞっ!
うんうん、がんばってね、ところでビギニャー君。ABテストを行うときのデメリットはちゃんと理解できているかな?
え?ABテストってデメリットがあるんですか?
ABテストのメリット・デメリット
ABテストを実施するときは、メリットとデメリットの両方を理解したうえで活用することが大切です。詳しいメリットとデメリットをみていきましょう。
ABテストのメリット
ABテストのメリットは、次の3点です。
- 比較的少ない予算で行える
- リニューアルの失敗を防げる
- 検証と改善にかかる工数を抑えられる
ABテストでは、より効果の高い広告やページを少ない予算で見極めることが可能です。ABテストツールには無料で使えるものも多いので、ツールの導入費や運用費も抑えられます。
また、広告やサイトリニューアル時の失敗リスクを低減できる点も大きなメリット。少ない工数と予算で、もっとも効果的なクリエイティブを目指せます。
ABテストのデメリット
ABテストのデメリットは、次の2点です。
- 正しく仮説を立てる必要がある
- サンプル数が少ないと正しい結果が得られない
ABテストを成功させるためには、正しく仮説を立てることが欠かせません。「とりあえず広告文を変えてみよう」では、本当にCVRに影響している要素を見つけるのは難しいでしょう。根拠のある仮説を立てて検証していく必要があります。
また、ABテストは、ある程度のサンプル数がないと正確な効果検証を行えません。最低でも100人分のサンプルを収集しましょう。
ABテストは意味ないって本当?
ABテストは非常に有用性高い施策ですが、正しく行わなければ意味のある結果は得られません。たとえば、目的や仮説をしっかりと立てないと、ABテスト自体が目的になり、意味のない施策となるでしょう。
また、2つ以上の要素を同時にテストすると、どこがコンバージョンに影響しているのかわからなくなる。サンプル数が少ない場合も、正確な結果を得られない可能性があります。このように、ABテストは計画的に行わないと意味がなくなるケースもあるため注意が必要です。
たしかに、根拠なく変更したり数人にテストを行なったりするだけでは効果を得られませんよね……。気をつけます!
うん、ABテストを実施するときはぜひ意識してみてね。それとね、ABテストを成功させるためには、こんなポイントも意識する必要があるんだ。
ABテストを成功させるためのポイント
ABテストを成功に導くために、以下の3つのポイントを意識してみましょう。
- 結果をしっかりと検証する
- 影響が大きいところからテストする
- 1箇所ずつテストする
各項目を詳しく解説します。
結果をしっかりと検証する
ABテストで大切なのは、結果を確認したときに「なぜそうなったのか」をしっかりと考え、次に活かしていくことです。たとえば、コンバージョンボタンのABテストを行ってみたとしましょう。
テスト内容:ボタンの形や色などのデザインは変えず、コピーの内容を変更してテストする
- ボタンパターンA:「資料を無料DL」
- ボタンパターンB:「気になる資料はこちらをクリック」
テスト結果:ボタンパターンAのコンバージョンの方が、ボタンパターンBよりも1.8倍高かった
この結果を踏まえると、次のように考えられます。
- 可能性1:パターンBはコピーの内容がわかりづらく、パターンAはわかりやすかった
- 可能性2:パターンBはコピーの文字数が多くて見づらく、パターンAは見やすかった
可能性1が正解であるならば、次からはコピーの内容をわかりやすくすれば、よりコンバージョンに繋がりやすくなるでしょう。
また、可能性2が正解であるならば、次からは文字数をすっきりさせればよいかもしれません。ABテストでは、このように「なぜそうなったのか」「よりよくするにはどうすればいいのか」を考え、PDCAを回していくことが大切です。
影響が大きいところからテストする
コンバージョンへの影響が少ないページ・部分に注力しても、なかなか成果は出ないものです。たとえば、アクセス数100のページのコンバージョン率を10%向上させるよりも、アクセス数1,000のページのコンバージョン率を3%向上させた方が、成果は大きいといえるでしょう。ABテストは、目的に対して影響の大きいページ・部分に注力しましょう。
1箇所ずつテストする
やればやるほど効果的に思えるABテストですが、複数箇所のテストを同時に行ってはいけません。なぜなら、一度に2か所以上テストしてしまうと、「どこを改善したことで効果が出たのか」がわからなくなってしまうからです。2か所以上でテストを行いたい場合は、時期をずらすなど工夫しましょう。
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WRITING 執筆
LIFT編集部
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