Cookie規制とは、Webにおけるユーザーの行動や情報を収集・活用するCookie技術の利用を制限する動きです。
日本では2022年4月にCookieを規制する法律が施行され、マーケティング業界に大きな変化をもたらしています。
この記事では、Cookie規制がマーケティングやWeb広告に与える影響と、今後のビジネスで気をつけたいことをわかりやすく解説します。
ついに、日本でもCookie規制の動きが本格化したね。ビギニャー君、Cookie規制でマーケティングがどう変わるのか、ちゃんとおさらいできてる?
何回か先輩と一緒に勉強したのでなんとなく理解できていると思いますが……、これを機にもう一回復習しておきたいです!
そうだね。今後スムーズに仕事ができるよう、今日は改めてCookie規制とマーケティングについて勉強し直そうか。
INDEX
Cookie規制とは、Cookieが保存するユーザーの情報利用を制限する動きを指します。この規制によって、個人関連情報取扱事業者は本人の許可なしにCookieによる情報収集や活用ができなくなります。
これだけ聞いても、詳細がわからずに混乱してしまう初心者マーケターは多いかもしれません。まずは、以下の3つの観点からCookie規制に関する基本的な知識をみてみましょう。
- 日本のCookie規制はいつから?
- Cookieの意味と種類
- どうしてCookie規制が行われるの?
各項目の詳細を解説します。
日本のCookie規制はいつから?
アメリカやEUなど、海外の一部地域ではすでにCookie規制が実施されており、違反した場合の罰則も用意されています。日本では2020年6月に個人情報保護法が改正され、Cookieを活用したデータ収集と利用について同意取得が義務付けられました。
2022年4月から実行されたこの規制は、マーケティング業界に大きな影響を与えると考えられています。ユーザーから同意を得られれば、引き続きCookieを活用した広告配信などを行うことは可能です。
しかし、今後さらにCookie規制が厳しくなっていくことは十分に考えられるので、今のうちからサードパーティCookieに依存しないマーケティングに対応しておくことが非常に重要なのです。
Cookieの意味と種類
Cookieとは、サイトを閲覧しているユーザーの行動や情報を、一時的にユーザーのブラウザに保存する仕組みです。Cookieを使ってユーザーの行動を計測することで、サイトの分析や興味・関心に合った広告(リターゲティング広告)の配信、IDやパスワードの入力省略などの機能が使えるようになります。
なお、Cookieには次のような種類があります。
- ファーストパーティ(1st Party Cookie):閲覧しているサイトでしか利用できないクッキー
- セカンドパーティ(2nd party Cookie):他社のサイトが発行した、ファーストパーティクッキー
- サードパーティ(3rd Party Cookie):閲覧サイト以外から発行され、サイトを横断して利用できるクッキー
現時点で規制の対象となっているのは、主にサードパーティクッキーです。
どうしてCookie規制が行われるの?
Cookie規制が行われる理由は、ユーザーのプライバシー侵害を防ぐためです。サードパーティクッキーは自分が利用しているサーバー以外から付与され、ユーザーが知らないうちにその人の行動や個人情報を記録してしまいます。
Webマーケティングの際は、その情報を反映して広告の配信などを行うので、人によっては「プライバシーの侵害だ」「監視されている」と感じてしまうこともあるでしょう。
このようなインターネットユーザーの不安を解消して個人情報を守るために、Cookie規制は重要性を増してきたのです。実際、過去にはサードパーティCookieを選挙活動に悪用したり、個人の行動を分析して他社に売ったりして問題になった事例も存在しています。
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海外では以前からCookieが問題視されていて、日本よりも前に規制が始まっていたんですよね!
おお、ちゃんとマーケティングのトレンドを抑えていて偉いね!Cookie規制はリターゲティング広告に大きな影響を与えるんだけど、そこは理解できているかな?
えっと、たしか……。
従来のWebマーケティングにおいて、Cookieは非常に重要な役割をもっていました。特にCookieと関連性が深いのが、リターゲティング広告です。
Cookie規制が実施されるとリターゲティング広告にどのような影響が出るのでしょうか。Cookie規制がリターゲティング広告に与える影響とリターゲティング広告の現状・これからを解説します。
Cookie規制はリターゲティング広告に影響する?
リターゲティング広告とは、Cookieで収集した情報を活用して、一度自社に訪れたことがあるユーザーに対して自社の広告を配信する追跡型広告です。
例えば、「とある通販サイトを訪問したら、他のサイトに行っても通販サイトの広告が表示されるようになった」という経験は誰にでもあるでしょう。これが、リターゲティング広告なのです。
自社に一度興味を持ったユーザーに訴求できるリターゲティング広告は、コンバージョン率や費用対効果が高いマーケティング手法として知られています。
しかし、Cookie規制が実施されるとユーザーの情報を収集しにくくなるため、リターゲティング広告の配信が制限されます。リターゲティング広告に依存している企業は、今後大きな影響を受けてしまうことでしょう。
リターゲティング広告の現状
Cookie規制が実施された今、リターゲティング広告はどのような影響を受けているのでしょうか。現在、すでにいくつかのブラウザではサードパーティCookieをブロックしている状況です。
SafariやFirefoxでは、リターゲティング広告の配信が規制されています。Google ChromeはまだサードパーティCookieのサポートを終了していませんが、2024年後半より順次廃止していくと発表しています。これにより、Chromeでもリターゲティング広告が配信できなくなっていくことは間違いないでしょう。
結局、リターゲティング広告はいつからなくなる?
各ブラウザによってCookie規制に対する動きは異なるため、リターゲティング広告がいつ配信できなくなるかについて一概にいうことはできません。
しかし、現在プライバシーに配慮しつつ必要な情報を届けるための方法が、Googleをはじめとするさまざまな企業によって模索されています。なぜなら、Cookie規制によってEC市場の急激な縮小を防ぐ必要があるためです。
たとえリターゲティング広告が使えなくなる日がくるとしても、新しいターゲティング手法を活用した広告配信技術が必ず台頭します。各企業では積極的に独自のターゲティング手法を提供・開発しているため、今後も最新の情報をチェックし続けることが大切です。
うぅ……、Cookie規制でかなりマーケティングに影響が出そうですね……。なんだか僕、これからうまくマーケティングできるか心配になってきました。
説明したように、リターゲティング広告に代わるターゲティング手法が台頭してきているから、そう心配することはないかもしれないよ。
リターゲティング広告の代替手法、気になります……!
Cookie規制により少しずつ制限されつつあるリターゲティング広告。各媒体では、リターゲティング広告に代わる広告手法が登場してきています。
今後、マーケターはどのような手法でユーザーを狙い撃ちする広告を配信していけばよいのでしょうか。ここでは、各媒体で活用したいリターゲティング広告の代替手法を解説します。
- Yahoo!
- X(旧:Twitter)
- LINE
- Facebook・Instagram
以下では、媒体独自のターゲティング手法を詳しくみていきましょう。
Googleでおすすめのリターゲティング(リマーケティング)広告の代替手法は、次の2つです。
動的ラインナップ
動的ラインナップは、YouTubeで配信されるインストリーム広告の一種です。YouTubeにアップロードされている動画を分析し、あらかじめ用意されたターゲットに適した広告を配信します。例えば、「子どものいる家庭」や「ビジネスアイデア、蓄財術」などのターゲットが用意されています。
トピックターゲティング
特定のトピックに関連するWebページやアプリケーション、動画に広告を掲載できる機能です。Google広告のターゲティング機能で利用することが可能です。
例えば、「インターネット、通信」というトピックを選択すると、インターネットや通信に関連した情報を扱うWebページなどに広告を配信できます。
Yahoo!
Yahoo!でおすすめのリターゲティング広告の代替手法は、次の4つです。
サーチターゲティング
ユーザーがYahoo! JAPANで検索したキーワードをもとに、特定の人だけに広告を配信するディスプレイ広告の機能です。Yahoo!ニュースやYahoo!知恵袋など、各種Yahoo!関連サービスに幅広く広告を配信できます。
例えば「パソコン おすすめ」と検索すると、検索キーワードと広告をマッチングされ、パソコンに関する広告が表示されます。
広告クリッカーターゲティング
Yahoo! JAPANの広告をクリックしたユーザーに対し、最適な広告を配信する機能です。ファーストパーティデータである広告クリック識別子(yclid)を利用するため、Cookie規制の影響を受けずにユーザーの行動履歴に応じた広告配信が可能となります。
自社サイト流出ターゲティング
Yahoo!のドメインページから自社サイトに遷移したユーザーに対して、最適な広告を配信する機能です。「Yahoo!の検索結果」や「Yahoo!サービスから直接遷移できるページ」であれば、自由に設定が可能です。対象者が限られるため広告配信のボリュームは減少しますが、精度の高いターゲティングが行えます。
プレイスメントターゲティング/サイトカテゴリターゲティング
プレイスメントターゲティングとは、広告を配信するサイトとしないサイトを指定して、広告の配信先を制御するターゲティング機能です。
この機能を使えば、「サイトAには広告を配信して、サイトBとCには配信しない」という細かい設定が可能となります。似たような機能として、サイトカテゴリを選択する「サイトカテゴリターゲティング」も利用可能です。
X(旧:Twitter)
X(旧:Twitter)でおすすめのリターゲティング広告の代替手法は、次の4つです。
興味関心ターゲティング
X(旧:Twitter)側が用意している25種類のカテゴリと350種類のサブトピックを選択することで、そのトピックに興味を持つユーザーに広告を配信する機能です。ボリュームが出やすいターゲティング手法なので、まずは1~2つほどカテゴリを選び、様子をみながら入れ替えや追加をしていくことがおすすめです。
キーワードターゲティング
指定したキーワードを含むツイートをしたユーザーや、そのツイートに反応したユーザーに広告を配信する機能です。商材名を含むツイートを指定することで、より自社と相性のいいユーザーを狙い撃ちできます。
ハンドルターゲティング
指定したハンドル(X(旧:Twitter)アカウント)のフォロワーや、類似するフォロワーに対して広告を表示する機能です。商材と関連性が高いアカウントを指定すれば、確度が高いユーザーを狙い撃ちできます。
ツイートエンゲージャーリターゲティング
自社のツイートが表示された、もしくはエンゲージメントが発生したユーザーに絞って広告を配信する機能です。過去にリーチしたユーザーに再リーチできるため、効率的にコンバージョンを目指せる点がメリットです。
LINE
LINEでおすすめのリターゲティング広告の代替手法は、次の2つです。
クロスターゲティング
LINE公式アカウントやLINE広告、LINEで応募から取得したデータをもとに、最適な広告を配信する機能です。LINEが提供する複数のプロダクトのデータを活用するため、より精度が高くて効果の高いターゲティングが可能です。LINE公式アカウントをもっている人であれば、誰でも利用できます。
友だち追加ポップアップ
LP離脱や閲覧時間などをトリガーに、LINEの友達追加を促すポップアップを表示させる機能です。友だち追加はもちろん、コンバージョンにつなげることが可能なケースもあります。
Facebook・Instagram
Facebook・Instagramでおすすめのリターゲティング広告の代替手法は、次の2つです。
興味・関心ターゲティング
ユーザーのアクティビティから興味・関心がありそうなカテゴリを分析し、最適な広告を配信する機能です。「テクノロジー」や「ショッピング」、「ファッション」などさまざまなカテゴリで絞り込むことが可能です。
デモグラフィックターゲティング
ユーザーがアカウント登録する際に入力した情報をもとに、最適な広告を配信する機能です。年齢や性別、地域や学歴などさまざまな項目で絞り込めます。
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へぇ~。リターゲティング広告の代替手法ってこんなにたくさんあるんですね!
そうそう。こういう代替手法をうまく活用すれば、これからもWebマーケティングで成果を上げていくことは可能だと思うんだ。
ところで、Cookie規制がマーケティングに与える影響って、他にもあるんでしょうか?
今までCookieを活用していた企業がCookie規制時代のマーケティングに対応するためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは、気をつけたいポイントや対処法を4つ紹介します。
- 同意管理ツールを導入する
- サードパーティCookieに依存しない体制づくりをする
- カスタマージャーニーを意識したアプローチをする
- 自社コンテンツを強化する
各項目の詳細をみていきましょう。
同意管理ツールを導入する
まずは、同意管理ツールの導入を検討してみましょう。同意管理ツールとは、Webサイトに訪問したユーザーに対してCookie取得・活用を明示し、許可をもらうためのツールです。実際、Webサイトを閲覧しているときに、ポップアップでCookieの取得について同意を求められたことがある方は多いかもしれません。
このポップアップで拒否された場合はCookieが取得できませんが、同意が得られた場合は規制に対応しながらCookieが活用できます。同意管理ツールには無料のものと有料のものがあるので、まずは無料のものからお試し導入してみるとよいでしょう。
サードパーティCookieに依存しない体制づくりをする
サードパーティCookieに依存しない体制づくりをすることも、意識したいポイントです。マーケティングの際は、サードパーティCookie以外にも次のような情報を活用できます。
- ゼロパーティデータ:アンケートや口コミなどユーザーが自ら提供する情報
(ファーストパーティCookieの一部として捉えることもある) - ファーストパーティCookie:自社サイトのみで収集したCookieデータ
上記のデータはCookie規制に対応しており、信頼性も高いとされています。そのため、これからのマーケティングでますます重要性が増していくと考えられているのです。
カスタマージャーニーを意識したアプローチをする
今後は、リターゲティング広告に頼ったマーケティングが難しくなります。しかし、お客さまの興味・関心、行動を踏まえたマーケティングが重要なことには代わりありません。Cookie規制に対応しながらお客さま一人ひとりに合ったマーケティングを行うためには、「カスタマージャーニー」を活用する戦略が大切です。
まずは企業の顧客像をいくつかのパターンに分ける「セグメント」を行い、それぞれの年代や行動、嗜好などを踏まえてカスタマージャーニーを作成してみましょう。
お客さま個人の行動や感情を正確に把握することはできませんが、各プロセスの行動を分析できれば、精度の高いマーケティング手法が導き出せます。
カスタマージャーニーで顧客行動を分析したら、SNSや広告などのさまざまな手法を組み合わせてマーケティングを行いましょう。Cookieに頼らなくてもユーザーのニーズに応じた施策を実施しやすくなります。
この手法は、新規顧客の獲得だけではなくリピーターを増加させたいときにも有効です。Cookieに頼りきるのではなく、積極的にお客さまの行動や感情の変化を知るための分析を行い、能動的に働きかけることを意識することが大切です。
自社コンテンツを強化する
コンテンツを強化し、広告がなくても自社で集客できる仕組みづくりをすることも非常に大切です。自社コンテンツとは、企業ブログだけではなく、SNSやランディングページ(LP)、YouTubeチャンネルなど幅広いコンテンツを指します。
自社コンテンツに魅力があれば、リターゲティング広告がなくても多くのユーザーに訴求しやすくなります。
また、SEO効果が出てコンテンツの露出が増えれば、新規顧客の獲得にも大きく貢献してくれるでしょう。自社コンテンツに集客できれば、それだけ多くのファーストパーティCookie情報が集められるようになります。
その結果、さらに精度の高い顧客分析ができるようになり、訴求力が高いマーケティング施策の考案に役立てられるという好循環が生まれます。
なるほど~。Cookieに頼らなくてもお客さまのニーズを理解したり、一人ひとりに合ったアプローチをすることはできるんですね!
そうそう。工夫次第で有効なマーケティング施策はいくらでも実行できるから、落ち着いて対処していけば大丈夫だよ。
ちなみに、Cookie規制に対応しながら広告配信する技術としてGoogleが開発している「Topics」については知ってるかな?
現在、GoogleではCookie規制に対応したマーケティングを支援するための新サービス「Topics」を開発しています。Topicsの登場・実装により、これからのWebマーケティングは大きく変化するかも!?ここでは、Topicsの概要と現状を解説します。
Topicsとは
Topicsとは、現在Googleが開発しているターゲティング広告の代替手法です。Topicsは、Chromeユーザーの過去3週間の閲覧履歴を保存し、「ペット」や「旅行」など関心の高い項目を3つ選び、広告主に共有する仕組みです。
ユーザーはGoogleやほかの外部サーバーを介さず、デバイス上だけで項目を選定でき、自分の意思で項目の確認・削除、機能の停止を設定できるようになります。
この情報をもとに広告を配信することで、Cookieの情報を使わずともひとり一人に合った情報を届けられるようになるのです。Topicsはまだ開発段階ですが、2024年後半に終了するChromeサードパーティCookieの代替技術として検討されています。
まだまだ最終的なサービス内容がどうなるかはわかりませんが、Webマーケティング担当者はGoogleの今後の動きにもしっかりと注目しておく必要があります。
FLoCはどうなった?
GoogleはCookieの代替手法として「FLoC(Federated Learning of Cohorts:コホートの連合学習)」というツールも開発していました。このツールは、閲覧履歴をもとにユーザーを関心別のグループに振り分けた情報を活用する機能を持っています。
しかし、FLoCには「個人の特定が可能なほどグループの規模が小さくなる」という弱点がありました。そのため、FLoCに取って代わる技術としてTopicsの開発が進められているのです。
Topicsの現状
現在Topicsは、トライアル利用が可能な段階に入っており、大規模な導入に向けたリリースに近づいています。Topicsの詳しい概要や利用方法は、Chrome Developersから確認しておきましょう。
現在、配信されている「Topics API」は、FLoCで懸念されていた問題に関するフィードバックを受け、プライバシーに配慮した透明性の高い広告配信を目指しています。
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