共感マーケティングとは、ユーザーに共感してもらえる仕組みを作ることで、ファン化やブランディング、売上アップを狙う販売戦略です。
コンセプトの設定やSNS・インフルエンサーの活用が重要なカギを握る共感マーケティングは、どのような方法で始めればいいのでしょうか?
この記事では、共感マーケティングの手法から成功事例、活用の流れまでわかりやすく解説します。
ビギニャー君、最近そのブランドの商品をよく使っているよね。気に入ってるの?
ここの商品、デキるビジネスマン向けの商品がコンセプトで、使ってるだけで一目置かれるんです~!オシャレだし機能的だし、ついついSNSでも自慢しちゃうんですよね~。
おお、共感マーケティングをうまく取り入れている企業なんだね~。
INDEX
共感マーケティングとは?
共感マーケティングとは、ユーザーに共感してもらえる仕組みを作り、ファン化や商品購入を目指すマーケティング戦略です。サービスの良し悪しだけをアピールするのではなく、消費者の心に訴えかけて感情を動かすことを重要視している点が特徴的です。共感マーケティングには以下の2つの考え方があります。
- 企業が信念に基づいた取り組みを行い、ユーザーから共感を集めてファン化・ブランディングを目指す
- 生の声や口コミ、インフルエンサーによる発信を活用し、商品やブランドのイメージアップを目指す
このような取り組みを通して、驚きや喜びといった「感情の変化」、企業の信念や取り組みへの「強い共感」を戦略的に生み出します。そして、ファンに愛されて安定的な利益を生み出せる商品やブランドになることを目指すのです。
とくに、近年はSNSや口コミ、インフルエンサーを活用した共感マーケティングが注目されています。購入検討者と等身大の目線で発信された情報は、非常に共感を生みやすい傾向にあります。なぜなら、「リアルな声なら信用できる!」「この人が使っているなら私も使ってみたい!」と思わせる強いパワーを持っているためです。
したがって、共感マーケティングを実施する際は「消費者をマーケティングの仕掛け人に回す戦略」が欠かせないのです。
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もしかして僕、めちゃくちゃ戦略にハマってしまっています……!?共感マーケティングを取り入れたこのブランド、恐るべしですね……。
しっかりとユーザーのニーズを捉えていて、なおかつSNSで共有させたくなる商品作りがしっかりとできてるのはすごいね!僕もそのブランド使ってみようかなぁ
先輩もぜひ!ところで、共感マーケティングを活用している企業はほかにもあるんですか?
共感マーケティングに成功した企業の事例
共感マーケティングの意味や戦略を聞いても、イマイチどのようなことをすればいいのかピンとこない方も多いかもしれません。そこでここでは、共感マーケティングに成功したブランドや企業の事例を2つご紹介します。
無印良品
シンプルで洗練された陳列とアイテムが人気を集めている無印良品は、共感マーケティングに成功した代表的なブランドです。無印良品の特徴は、簡潔でシンプルな「空白の商品」を取り扱っている点です。
「省資源」「低価格」「シンプル」「アノニマス(匿名性)」「自然志向」といったさまざまなユーザーのニーズに対応できています。
豊かな素材や技術を取り入れつつ、環境への配慮も忘れない無印良品の理念に魅力を感じるユーザーは年々増加中。「ムジラー」と呼ばれる、熱狂的なファンも存在しています。
ファンはブランドコンセプトに共感して商品を購入するだけではなく、Instagramなどで無印良品の商品を活かしたインテリアや収納を積極的にシェアしています。
その投稿を見た消費者が無印良品に興味を持ち、さらにファンが増えるという理想的なマーケティングサイクルが構築されているのです。
Apple社
iPhoneなど数々のヒット製品を生み出したApple社も、共感マーケティングを上手に取り入れている企業です。単に商品を売り出すのではなく、書籍や映画などを通してスティーブ・ジョブズ氏の想いを発信。
「創業時の想い」や「製品を開発するまでの苦労」、「数え切れない挑戦や失敗」を消費者に伝えています。新商品が発売されるときはメディアで開発秘話を取り上げるなど、ユーザーの共感や感動を呼ぶマーケティングが積極的に実施されています。
Apple社のストーリーに共感したファンが、SNSなどを通した情報共有を積極的に行ってくれることは、決して珍しくありません。それを見た消費者が「Apple製品ってオシャレで革新的だな」「使いやすそうだな」と共感することで、現在もファンが増え続けているのです。
ブランドの戦略をしっかりと分析してみると、意外といろんなところで共感マーケティングが活用されているんですね!
聞いた限りとっても難しそうですが、共感マーケティングって具体的にはどうやって実施すればいいんでしょうか?
共感マーケティングは、こんな風に実施するんだよ。
共感マーケティングを始める方法
「共感マーケティングを始めたい」と思ったら、これから紹介する流れで分析や施策の立案を進めましょう。
- ペルソナとニーズを分析する
- 自社分析で共感ポイントを洗い出す
- ストーリーを発信する
- UGCを獲得する仕組みを作る
各プロセスのポイントを詳しく解説します。
ペルソナとニーズを分析する
まずは、商品を売りたいターゲットを絞り込みましょう。このとき、単に「30代女性」と属性から大きなユーザー像を決めるだけでは不十分です。
「30代の主婦で、子ども1人と夫と3人暮らし。趣味は園芸で…」といったように、実在する人物のように詳しくユーザー像を設定すると、より強い共感を生み出しやすくなります。
このように、詳細な情報まで想定したユーザー像を「ペルソナ」と呼びます。ペルソナを設定したら、その人のニーズを分析して共感してもらえる商品コンセプトを考えましょう。
主婦の例で言えば、「家事の時短商品がほしい」「育児を効率化したい」などのニーズやコンセプトが候補として挙げられます。
自社分析で共感ポイントを洗い出す
次に、自社分析を行って強みや独自性を明らかにして、ペルソナに共感してもらえるポイントを洗い出します。
たとえば、「子育て世代の女性社員が開発した」「パパがママに贈りたいプレゼント1位に選ばれた」などのストーリーや実績があれば、ペルソナの感情を動かしやすくなります。
どのようなことをアピールすればいいかわからないときは、自社分析に役立つフレームワークを活用するといいでしょう。
ストーリーを発信する
コンセプト決めや商品開発が完了したら、その商品のストーリーを消費者に向けて発信します。
- なぜそのコンセプトにしようとしたのか
- 開発の苦労や課題はあったのか
- 商品を利用したお客さまにどのような変化があったのか
- どのような課題を解決し、価値を提供する熱意があるのか
このような情報をSNSや自社コンテンツ、パッケージ、広告などで取り上げることで、共感を集められます。この際、より高い熱量を込めれば、濃いファンの獲得を目指せるでしょう。
UGCを獲得する仕組みを作る
UGC(User Generated Content)とは、口コミやブログ記事を含む「一般ユーザーによって作られたコンテンツ」です。共感マーケティングではUGCの存在が非常に重要ですが、「いい商品を作れば放っておいてもUGCが増える」という単純なものではありません。
初期段階では、口コミ投稿キャンペーンなどの企画を活用しながら戦略的にUGCを増やしましょう。そして、中長期的に自動的にUGCを投稿してもらえる空気感や仕組みを作り上げることが大切です。
インパクトが強い商品開発にばっかり目が生きそうになるけど、いちばん大切なのは「ユーザーのニーズを満たせる価値を提供すること」であることを忘れないようにね。
はーい、先輩!さっそく僕も仕事のときに共感マーケティングを取り入れてみようっと!
そういえば、共感マーケティングと一緒に押さえておきたいビジネス用語もあるんだよね。それも教えておこうか。
あわせて押さえておきたい「エモーショナルマーケティング」とは
共感マーケティングには、似たような意味を持つ言葉が存在しています。それが、「エモーショナルマーケティング」です。エモーショナルマーケティングは、顧客の「欲しい」という欲求を強くかき立て、購入してもらうマーケティング手法です。
ポイントは、「ニーズ」よりも強い感情である「ウォンツ」を刺激すること。たとえばエモーショナルマーケティングでは、ビジネスパーソン向けのスーツを販売するときに以下のように訴求します。
- ニーズ:このスーツはお手入れが簡単で、動きやすいです
- ウォンツ:まだスーツのお手入れに時間をかけますか?一流のビジネスパーソンならコレ!
このように、エモーショナルマーケティングはニーズよりも本能的な感情を刺激して、より強い購買意欲をかき立てる強力な手法なのです。エモーショナルマーケティングは、合理的に判断されるBtoB商材よりも、感情に左右される場合が多いBtoC商材に向いているとされています。
た、たしかにウォンツを刺激されると購買意欲がかき立てられるかも……!エモーショナルマーケティング、しっかりと覚えておきますっ!
企業の戦略を分析してみると、意外といろんなところで共感マーケティングが活用されているんですね!
そうなんだよねぇ。とくに、近年は共感マーケティングへの注目度が上がっているんだけど、その理由はわかるかな?
顧客から共感を得るビジネスが重要な理由
今、共感マーケティングが注目されている理由は次の2つです。
- 商品やサービスが多すぎるから
- 広告やネットの情報が信頼されなくなってきているから
技術が進化した今、たくさんの企業が同じような商品やサービスを提供できるようになりました。加えて、いろいろな企業がこぞってマスメディアやネットに広告を載せ、お金を払って商品の魅力をアピールするようになってきています。
その影響で、消費者は「情報が本当か信頼できない」「どの商品がいいのかわからない」と、商品選びの軸に迷うことが増えてしまったのです。
しかし、魅力に感じてもらえるポイントを増やしたりユーザーの声を届けたりすれば、自社を選んでもらうための仕組み作りができます。共感マーケティングは、現代の市場やユーザーの心理にマッチしたマーケティング手法なのです。
たしかに、選択肢や情報が多すぎて「結局どれが本当にいいのかわからない」って思うことが増えてきました!僕もSNSや口コミを基準に商品を選ぶことが多いし、納得です!
そうだよね。ビギニャー君みたいな消費者が増えたから、共感マーケティングには多くのメリットがあるんだ。
共感マーケティングのメリット・効果
共感マーケティングを実施すると、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットを4つご紹介します。
- ファンを獲得できる
- 認知拡大を目指せる
- 信頼してもらえる
- 口コミを得られる
各項目を詳しくみてみましょう。
ファンを獲得できる
共感マーケティングのメリットは、ファンを獲得できて購買行動につなげやすい点です。感情に強く訴えかける施策を実施するため、共感が得られれば熱狂的なファンやロイヤルティの高い顧客の獲得に直結します。
このような顧客は購入単価や頻度が高くなりやすいですし、自ら商品の魅力やストーリーを発信してくれる可能性があります。さらなる拡散が見込める点も、うれしいポイントでしょう。
認知拡大を目指せる
企業のコンセプトや取り組みにユーザーが共感してくれると、「友だちにシェアしたい」「みんなにも知ってほしい」と思ってもらえるようになります。
SNSや口コミで拡散してくれる人が増えるので、大幅な認知拡大を目指せるのです。とくにX(旧Twitter)は拡散性の高いSNSなので、共感マーケティングの実施時は積極的に活用することがおすすめです。
信頼してもらえる
共感マーケティングは、企業や商品の信頼向上に効果的です。なぜなら、人は何かしらの共感ポイントを見つけると、プラスの感情を抱きやすい傾向にあるためです。
たとえば、環境問題に関心を持っている人と「環境にやさしい洗剤」には、大きな共通点がありますよね。この共通点があるだけで、ユーザーは「この企業は信頼できる」と自ら進んで選んで自社をくれるようになるのです。
口コミを得られる
共感してくれたユーザーは、積極的に口コミを投稿してくれます。実際、好きなブランドやお気に入りの商品を知ってほしくて、何気なくSNSに感想を投稿した経験がある方は多いでしょう。商品を愛用しているユーザーからの口コミは信頼度が高く、商品の認知拡大やイメージアップに大きく貢献してくれます。
認知度向上が狙えて信頼度もアップするなんて、共感マーケティングってメリットしかないのでは……!?
一見そう思えるんだけど、共感マーケティングにはデメリットもあるから注意が必要なんだよ。
え!?デメリットもあるんですか!?
共感マーケティングのデメリット
共感マーケティングのデメリットは以下の2つです。
- 万人受けしない
- 即効性がない
どのようなことなのか、詳しくみていきましょう。
万人受けしない
共感マーケティングのデメリットは、万人受けしない点です。当たり障りない表現やコンセプト・信念だけでは、消費者から強い共感を得るのは難しいでしょう。
そのため、時には思い切った表現や戦略の実施が必要になります。しかし、内容によっては批判されたり、ネガティブな印象を持たれたりするリスクがあることも理解しなければいけません。
即効性がない
ファン化やブランディング、ロイヤルティの向上といった効果を狙う共感マーケティングは、すぐに成果が出るものではありません。時間をかけて効果を測定する必要がありますし、成果が出ないこともあります。消費者の共感を得られるまで、試行錯誤しながら根気強く取り組むことが大切なのです。
共感を得たりシェアしてもらったりするのって、「普通の商品」だと難しいからね。印象に残る商品にするためには、それだけ独自性のある思い切った戦略が必要になることは覚えておこうね。
なるほど~。強い印象を残しつつ、誰かを不快にしたり反感を買ったりしないよう気をつける必要があるんですね……!
そうだね。共感マーケティングを成功させるためにも、実施するときはこんなコツを意識するといいよ。
共感マーケティングのコツ
共感マーケティングを成功に導くためには、以下のコツを意識する必要があります。
- 顧客に寄り添う
- どんどん自己開示を行う
- ストーリー性を語る
- コミュニティや社会貢献イベントを行う
見ず知らずの企業や人がいきなり「商品を買ってください」と説得しても、消費者は警戒して心を閉ざしてしまいます。そのため、まずは顧客にとことん寄り添い、「この企業はわかっている」「自分の味方だ」と信頼してもらうことが大切です。
そして、自己開示したり自社のストーリーを語ったりして、少しずつファンになってもらうことを目指しましょう。自己開示やストーリーティングは、営業色や説得色が強くないため、ストレートに心へ届きやすいというメリットがあります。
さらに、可能であればユーザーや見込み顧客に向けたコミュニティの運営や、社会貢献イベントなども実施しましょう。実際に顧客と交流したり社会貢献しているところを知ってもらったりすれば、より強い共感を得られやすくなります。
ふむふむ。よ~くわかりました!僕、共感マーケティングがピッタリなクライアントさんを思い出しました!さっそく提案してきます!!
お、行動が早くて感心感心。でもその前に、共感マーケティングの注意点も押さえておこうか。
ち、注意点!?なんだろう……!?
共感マーケティングの注意点
共感マーケティングを成功させるために意識したい注意点を4つご紹介します。
- 付け焼き刃な内容はバレる
- 誇大広告・誤解させる表現は避ける
- BtoBには通用しにくい
- 「商売感」を全面に押し出さない
各項目を詳しくみていきましょう。
付け焼き刃な内容はバレる
共感マーケティングでよくある失敗として挙げられるのが、ファン化やブランディングを狙って付け焼き刃なコンセプトにしてしまうことです。「形だけのコンセプトなんだろうな」「共感を狙っているのが見え見えだな」と思われてしまうと、消費者の心を動かせません。
今までの行動や理念を踏まえ、違和感を抱かれたりブランドイメージと乖離しすぎたりしないコンセプトを設定することが大切です。とくに次のポイントに気をつけると、消費者に納得してもらえる共感マーケティングを実施しやすくなるでしょう。
- 企業側に強い信念や思いがある
- ユーザーや社会のために取り組んでいて、エゴではない
- 企業全体や社員同士で共通の認識を持っている
- 今までの行動や発言と一貫性がある
誇大広告・誤解させる表現は避ける
共感を狙うあまり、あまりにも強い表現や大げさな言葉を使うのは避けましょう。「絶対に痩せます!」「本当に高品質なのはこの商品だけ」などの極端な表現は、トラブルを引き起こしたり競合企業に迷惑をかけたりするおそれがあります。
根拠のない断定表現や健康・美容関連商品の表現は「景品表示法」や「薬機法」に抵触する可能性があるため、とくに注意が必要です。自社商品の魅力を引き出すためのキャッチコピーや説明を心がけ、関係者やユーザーに迷惑をかけたり、真実ではない事柄を伝えたりするのは避けてくださいね。
BtoBには通用しにくい
感情に訴えかける共感マーケティングは、BtoBマーケティングに通用しにくいという特徴があります。BtoBマーケティングの商材は購入した企業の業績やビジネスに直結することが多く、感情を排除した合理的な判断が必要だからです。
たとえば、社内で使うWebシステムを選ぶときは、開発秘話よりも機能性や価格、導入後の効果のほうが重要視されますよね。また、BtoB商材は単価が高く複数の人物が購入の意思決定をするため、心理的な効果を狙った共感マーケティングだけでは十分な効果を得られないのです。
「商売感」を全面に押し出さない
共感マーケティングは、あくまでユーザーの共感を得てファンになってもらうことを目指す施策です。その結果に「売り上げ向上」があるのであって、初めから宣伝感や商売感を前面に押し出されると、ユーザーの気持ちは冷めてしまいます。
ファンとのコミュニケーションや共感を得るための発信に努め、商売感はできるだけ出さないようにしましょう。
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