トレンドの採用マーケティングで人材不足解消!新しい手法とファネル戦略の事例

トレンドの採用マーケティングで人材不足解消!新しい手法とファネル戦略の事例

採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングの考え方やフレームワークを取り入れた新しい概念です。

この記事では、採用マーケティング戦略の立て方や具体的な手法を解説します。採用競争が熾烈化し人材不足が叫ばれる昨今、戦略的に求職者を集客して、離職する従業員を減らす取り組みが不可欠です。

求職者に選ばれる企業となるためにも、トレンドの採用マーケティングを取り入れていきましょう。

ビギニャー

おっ、先輩!もしかして今、新卒採用のためにうちのPR記事を書いていますか?

シニヤン

よくわかったね~!そうそう、ビギニャー君みたいな優秀な人材に来てほしいから、張り切って書いているんだ。最近は採用活動のハードルが高くなってきているし、もっと採用マーケティングに力を入れていこうかなって思って。

ビギニャー

採用マーケティング……?それって、採用活動ですか……?それとも、マーケティング活動なんですか……?

採用マーケティングとは

採用マーケティングは、マーケティングの考え方を採用活動に活用する新しい取り組みです。企業を商品として考え、採用競争の生き残りや定着・リファラル採用の促進を目的に行われます。

特徴的なのは、入社前から入社後までのプロセスをファネルとして捉える点です。認知や応募、ファン化・情報発信を目指し、コンバージョン(入社)後の従業員も対象にアプローチしていきます。

近年重要度が増してきた採用マーケティングですが、注目される理由や実施するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 採用マーケティングが重要な理由
  • 採用マーケティングのメリット
  • 採用マーケティングと従来の採用方法の違い
  • 採用マーケティングと採用ブランディングの違い

以下では、上記4つの観点から採用マーケティングの概要を説明します。

採用マーケティングが重要な理由

採用マーケティングが重要な理由は、次のような採用課題に対応する必要があるためです。

  • 採用競争が激化しているから
  • 求職者のニーズが変化しているから
  • 新卒採用が難しくなっているから

各課題について詳しくみていきましょう。

採用競争が激化しているから

採用マーケティングが重要視されているもっとも大きな理由は、採用競争が激化していることです。

少子高齢化により、日本では労働者不足が深刻化しています。実際、帝国データバンクの調査によると、正社員では52.1%、非正社員では30.9%が人手不足を感じているとわかっています。さらに、2023年に人手不足によって倒産した企業は、10月時点で206件にのぼりました。

このような状況下で、企業は「求職者を選ぶ側」から「求職者に選ばれる側」になりました。つまり、人手が必要なときに求人を出す採用活動だけでは、求めている人材の確保が困難になってきているのです。

優秀な人材を確保するには、自社で働くことの魅力を多くの求職者に伝え、求人応募や定着を促進する取り組みが欠かせません。その手段として有効なのが、採用マーケティングです。

求職者のニーズが変化しているから

求職者のニーズが変化していることも、採用マーケティングの重要性が高まった一因です。

給与や福利厚生だけではなく、ワークライフバランス、企業理念への共感、労働環境など求職者が職場に求めるニーズは年々多様化しています。「趣味の時間を確保できる」「最新の技術を学びたい」「産休・育休を取得したい」など、各求職者が求める条件は多岐にわたります。

現代の市場において、企業の安定性や認知度だけで求人応募を獲得することは困難です。求職者のニーズを満たせる企業であると伝えるためにも、多角的な面から自社をアピールする戦略の実施が不可欠なのです。

新卒採用が難しくなっているから

採用マーケティングは、新卒採用においても重要です。

中小企業の求人倍率は高い数値で推移しており、2023年3月の大卒求人倍率は1,000人未満の企業で2.66倍、300人未満の企業では5.31倍だったと判明しています。一方で、従業員1,000人以上の企業における有効求人倍率は0.73倍でした。

このデータをみると、企業規模が小さくなるほど新卒採用の難易度が上がっていることが読み取れます。

また、通年採用やインターンシップを経由した採用など、近年は新卒採用の方法が変わりつつあります。大企業を希望する学生や通常とは異なるフローで就職先を決める学生が増えてきたため、就活解禁にあわせて採用を開始すると、希望する人材の採用が難しい可能性があるのです。

これからの市場で新卒採用を行うには、長期的に学生とコミュニケーションを取り、自社への志望度を高めていく取り組みが不可欠です。

採用マーケティングのメリット

採用マーケティングを行うと、企業は次のようなメリットを得られます。

求人応募数が増加する

採用マーケティングでは、積極的に転職活動を行っている「転職顕在層」に加え、いい縁があれば転職を考えたいと思っている「転職潜在層」にもアプローチします。幅広い層に自社の魅力をアピールするため、求人応募数の増加が見込めます。

また、情報を発信する媒体をコントロールすれば、ターゲット層におけるピンポイントな認知拡大にも効果的です。狙った人材からの求人応募を促せるため、採用活動の負担軽減にもつながるでしょう。

採用コストを削減できる

従来の採用活動では、求人広告やエージェントへの依存度が高い傾向にありました。しかし、採用マーケティングでは、オウンドメディアやSNSなどさまざまな媒体を通してアプローチしていきます。

採用手法が多様化すれば、外部メディアやサービスへの依存度が低下して、採用活動にかかる費用の削減効果が得られるでしょう。「広告を出さなければ求人応募がこない」という状態から脱却でき、コストをかけずとも求職者のほうから集まってくる環境を整えられます。

ミスマッチを防げる

採用マーケティングでは、自社の魅力や求人応募してほしいターゲットを明確化し、言語化して発信していきます。そのため、自社と相性のよい人材を見つけやすくなる点がメリットです。

ターゲット人材からの求人応募増加はもちろん、採用活動を通じた認識のすり合わせも行いやすくなります。ミスマッチの少ない採用活動になるため、早期離職や内定辞退を防ぐ効果が期待できます。

採用マーケティングと従来の採用方法の違い

従来の採用手法と採用マーケティングの違いは、「アプローチするターゲットの範囲」です。

従来の採用活動では、転職顕在層に焦点を当て、応募・採用フェーズにのみアプローチします。また、全方位に求人広告を出して転職顕在層からの応募を待つ「プル型」の活動が中心で、企業から転職希望者へ積極的にアプローチすることは稀でした。

一方で採用マーケティングでは、応募・採用フェーズの転職顕在層だけではなく、企業認知フェーズの転職潜在層、入社後の従業員まで対象にしている点が特徴です。さらに、企業から自発的にアプローチする「プッシュ型」の活動が中心となります。

対象者を広げて積極的にアプローチすることで、より多くのターゲット人材確保を目指すのが、採用マーケティングの特徴です。

採用マーケティングと採用ブランディングの違い

採用ブランディングとは、自社をブランディングして競合他社と差別化を図り、採用市場における優位性の確立を目的としたプロモーション施策です。

採用ブランディングでは、求職者向けに企業理念やビジョン、職場の雰囲気などを戦略的に発信し、企業のファンを増やしていきます。それにより、求職者における企業認知度や応募意欲の向上を目指すのです。

採用マーケティングと採用ブランディングは、まったく別のものというわけではありません。採用ブランディングは採用マーケティングの手段のひとつであり、認知拡大や応募促進のプロセスで効果を発揮してくれます。

シニヤン

採用活動にマーケティングのノウハウを活かすのが、採用マーケティングなんだよ。この場合の商品は会社で、顧客は求職者・従業員ってことになるんだ。

ビギニャー

へぇ~。そういえば、僕もSNSとかオウンドメディアの記事を見てうちの会社に応募したっけなぁ。あれは、戦略的な採用活動だったのかぁ。

シニヤン

たしかそうだったね、懐かしいなぁ。あのときも、こんなふうに戦略を立てて採用マーケティングを実施していたんだよ。

採用マーケティング戦略の立て方

自社に適した採用マーケティング戦略を立てるときは、以下のプロセスで準備・アプローチを進めていく必要があります。

  • 自社の魅力を整理する
  • ターゲットを決める
  • ターゲットへの理解を深める
  • コンテンツを企画・発信する
  • ターゲットとコミュニケーションを取る
  • 効果測定と改善を行う

採用マーケティングで重要になるのが、情報を正しく整理することです。その際は、マーケティングでも利用されているフレームワークが役立ちます。

ここでは、各プロセスの詳細と役立つフレームワークを詳しくみていきましょう。

自社の魅力を整理する

まずは、アピールすべき自社の魅力を整理しましょう。「ここで働きたい」と思ってもらえる自社ならではの強みは、採用マーケティング戦略の中核となる重要な要素です。

「うちは中小企業だから」「給与も待遇も大企業に負けるから」と、自社には強みがないと考える企業も多いでしょう。

しかし、求職者が求めているのは企業規模や待遇のよさだけではありません。求職者一人ひとりが異なったニーズを持っているため、どのような会社にも魅力を感じてもらえるポイントは存在しています。他社と比べたときの優劣だけで魅力を定義することは避けましょう。

自社の魅力を整理するときは、次のようなフレームワークが役立ちます。

3C分析

  • 顧客・市場(Consumer):市場規模や成長性、求職者のニーズ、求職活動の傾向 など
  • 競合(Competitor):競合の採用戦略、競合の特徴、業界のポジション、今後予想される行動 など
  • 自社(Company):企業理念やビジョン、強み、リソース、事業や製品の状況 など

3C分析は、自社を取り巻く環境について分析するフレームワークです。市場や競合、自社に関する客観的な情報を収集し、よい面と悪い面について分析することで、独自性の確立や戦略立案に役立てます。

SWOT分析

  • 自社の内部環境:Strength(強み)、Weakness(弱み)
  • 自社を取り巻く外部環境:Opportunity(機会)、Threat(脅威)

SWOT分析は、自社の内部・外部環境を整理し、挑戦すべき市場や課題、強みなどを分析するフレームワークです。効果的な戦略の策定だけではなく、策定した戦略をレビューするときにも役立ちます。

あわせて「強み×機会」「弱み×機会」「強み×脅威」「弱み×脅威」のように、内部環境と外部環境を掛け合わせて戦略を立てる「クロス分析」も行っておきましょう。

ターゲットを決める

次に、採用マーケティングのターゲットを決めます。

採用マーケティングのターゲットは、求職者だけではありません。次のように、さまざまな人々がターゲットになります。

ターゲット特徴
求職者転職活動中の「顕在層」だけではなく、現在転職意欲がない「潜在層」も対象とする
社員既存顧客としてエンゲージメント向上やファン化を目指し、定着や紹介者・情報発信者への育成を促す
アルムナイ(退職者)採用候補者や良質な情報の発信者、ビジネスにおける顧客としてエンゲージメントの向上を目指す
タレントプール(不採用者・内定辞退者)ネガティブな情報の発信を防ぎ、採用候補者に転換する

なお、ターゲットを決める際は「STP分析」を実施するとスムーズです。

  • セグメンテーション(Segmentation):学歴、専攻、経歴などで求職者を分類する
  • ターゲティング(Targeting):求める人材の具体的な条件を絞り込む
  • ポジショニング(Positioning):ターゲットに認識してほしい自社の立ち位置を決める

STP分析を行うことで、ターゲットにすべき具体的な人物像や自社が売り込むべき要素がみえてきます。

ターゲットへの理解を深める

自社に転職してもらうためのストーリーを考えるために、ターゲットへの理解を深めていきましょう。ターゲットの心理状況や行動、抱えているニーズを分析して、「入社したいと思ってもらうにはどうすればよいのか」を考えます。

この際に役立つのが、次の3つのフレームワークです。

ペルソナ設計

ペルソナとは、商品やサービスを使ってもらいたい架空のユーザー像です。対象者を大まかに絞り込んだターゲット像よりも具体性を高め、実在している人物のプロフィールのように細かい要素まで設定します。

例えば、ターゲットでは「4年制大学の新卒で、理系学部出身」とざっくり対象者を絞り込みます。一方でペルソナは、「都内在住の4年制大学新卒で、専攻は〇〇。出世欲が高く、理想の年収は〇〇万円。よく使うSNSは……」と、プロフィールやライフスタイル、内面的な要素まで深掘りしていくのです。

具体的なペルソナ像を設計できれば、ターゲットが求める情報・コミュニケーションを理解しやすくなります。その結果、ターゲット目線の魅力的な施策を実施できるようになるのです。

キャンディデイトジャーニー

キャンディデイトジャーニーは、ペルソナの行動や心理状況を可視化する「カスタマージャーニー」を求職者向けにアレンジしたものです。求職者の感情・行動を認知や情報収集、比較・検討、求人応募などのプロセスに分けて整理し、課題発見や最適な接点・施策の考案に役立てます。

キャンディデイトジャーニーを作成するときは、憶測で分析を進めないように注意しましょう。情報収集や既存顧客への調査をもとに、根拠にもとづいて分析することが大切です。

採用ファネル

ファネルとは、顧客が商品やサービスを知ってから購入するまでの流れをフェーズ化し、分析するフレームワークを指します。これを採用活動に応用し、企業の認知から応募、選考、入社後のプロセスに対応させたのが採用ファネルです。

採用マーケティングでは、採用ファネルを活用した戦略設計が重要です。ここまでの分析で得られた情報をもとに、各フェーズで求職者の入社意欲を向上させる体験を提供することで、採用活動の成功を目指します。

採用ファネルの各フェーズで有効な施策やポイントは、後ほど詳しく解説します。

コンテンツを企画・発信する

ここまでの準備が整ったら、ターゲットに向けて訴求するコンテンツの企画や発信に進みましょう。

発信すべきコンテンツは、求職者のフェーズによって異なります。フェーズごとに訴求したい内容としては、次のようなものが挙げられます。

フェーズ目的訴求内容
認知企業の魅力を周知し、憧れを抱いてもらう事業戦略・ビジネスモデル・企業理念・事業内容・社会貢献性・成長性 など
興味・関心企業をより知ってもらい、入社後のイメージを抱いてもらう社風・業務内容・スキルセット・キャリアイメージ・価値観 など
動機形成企業や社員に親近感を抱いてもらい、応募する動機を形成する社員個人のキャリアパスやライフスタイル・職場環境・具体的な働き方 など
応募・決断入社への安心感を抱いてもらい、決断を促す企業の実情・社内文化・福利厚生・制度 など
定着社員とのエンゲージメントを高め、早期離職を防いだり情報のシェアを促したりする入社後研修・メンター制度・面談・異動・社内広報などを通じた個別のフォローアップ

また、認知拡大フェーズではSNSや求人媒体、興味段階ではオウンドメディアや動画コンテンツなど、フェーズによって最適なチャネルは異なります。キャンディデイトジャーニーの内容をもとに、チャネル設定も行っておきましょう。

自社でコンテンツの企画や発信が難しい場合は、外注も可能です。進捗や効果を把握するために、施策やチャネルごとにKPIを設定することも忘れないようにしましょう。

ターゲットとコミュニケーションを取る

情報発信と同時に、ターゲットとコミュニケーションを取る施策も重要です。面と向かってコミュニケーションを取ることで、信頼関係を構築しやすくなったり愛着心を抱いてもらいやすくなったりする効果が得られます。

認知段階のターゲットに対しては、イベントへの招待が有効です。気軽に参加できるイベントを開催すると、効率よく候補者と接点を持てます。

興味・関心段階や動機形成段階のターゲットに対しては、面談や座談会などのカジュアルな交流が有効です。候補者と交流して相互理解を深め、応募意欲を高めたり認識をすり合わせたりしましょう。

応募・決断段階のターゲットとは、インターンシップや選考を通じてコミュニケーションを取ります。意欲が高い候補者をスピーディーに選考へ案内することで、候補から外されるのを防ぎます。

入社後の社員に対しては、日常的なコミュニケーションが重要です。直属の上司や管理監督者が日ごろから部下に声掛けするのはもちろん、定期的に研修や面談を実施してフォローアップを行いましょう。密なコミュニケーションは、エンゲージメント向上だけではなく社員のメンタルヘルスケアにも効果的です。

効果測定と改善を行う

通常のマーケティング活動と同様に、採用マーケティングでも効果測定と改善を繰り返すPDCAサイクルは重要です。施策やチャネルごとにKPIの達成度合いを確認し、目標や施策の修正を実施しましょう。

ただし、採用マーケティングは短期間で成果につながるものではありません。成果を得るには、年単位の取り組みが必要になります。継続的な情報発信やコミュニケーションが不可欠なので、「効果がないから」とすぐにやめてしまうことは避けてください。

ビギニャー

へぇ~!いろいろな分析を行って、計画的に情報発信したりコミュニケーションを取ったりすることが大切なんですね!でも、情報発信やコミュニケーションって、具体的にどんな手法で行えばいいんですか?

シニヤン

そうだねぇ。従来の採用活動では採用メディアとか実際の面接とかが主な手法だったんだけど、今はこんな手法がトレンドかな。

【最新トレンド】採用マーケティングの具体例な手法

採用マーケティングでターゲットとコミュニケーションを取るときは、以下のような手法が有効です。

  • メディア
  • ソーシャルリクルーティング
  • 動画・音声コンテンツ
  • イベント
  • リファラル採用
  • 採用管理ツール

ここからは、各手法の詳細をみていきましょう。

メディア

採用マーケティングの中核となるのが、メディアを通したコミュニケーションです。自社メディアや採用に特化したメディアで情報発信を続け、認知拡大や応募意欲の育成を目指します。

なかでも採用マーケティングで活用されるのが多いのは、次の3つのメディアです。

オウンドメディア

オウンドメディアは、自社が自由に管理・運用できるメディアです。ホームページや自社ブログ、採用LPなどが該当します。

オウンドメディアを活用した採用活動は「オウンドメディアリクルーティング」と呼ばれ、新しい手法として注目度が高まっています。企業ビジョンや社風、具体的な業務内容を伝えられるため、マッチ度の高い求職者の発掘に役立つでしょう。

オウンドメディアは、内製化が可能であれば少ないコストで運用できます。しかし、制作に時間や手間がかかったり、外注の場合は費用が高額になりやすかったりするため、予算を抑えてスピーディーに成果を出したい場合は外部メディアの活用がおすすめです。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、企業がデータベースに登録している会員に対して直接コンタクトを取る採用手法です。代表的な例を挙げると、中途採用サービスの「BizReach(ビズリーチ)」や「Wantedly(ウォンテッドリー)」、新卒採用サービスの「OfferBox(オファーボックス)」が挙げられます。

求職者からの応募を待つ従来の求人メディアとは異なり、企業が積極的に求職者を探す点が特徴です。

求職者は自身の経歴やスキルなどをサービス上に保存しておき、企業はその内容を見てスカウトメッセージを送信します。求職者が企業に興味を抱けば面談や選考に進む、というのがダイレクトリクルーティングの一般的な流れです。

希望する人材と直接接触できる点が、ダイレクトリクルーティングのメリットです。その一方で、人材の抽出に手間がかかるというデメリットもあります。

求人検索エンジン

求人検索エンジンは、求人情報のみに特化した検索エンジンです。有名なサービスとして、「Indeed(インディード)」や「求人ボックス」が挙げられます。

求人検索エンジンには、ホームページや求人メディアに掲載されている情報がまとめて表示されます。加えて、求人を直接投稿できる機能もあるので、求人情報を多くのターゲットに知ってもらいたいときに便利です。

近年は、「登録が不要で気軽に使える」「求人情報を網羅的に調べられる」と求人検索エンジンを好んで利用する求職者が増えてきました。リーチできる層が広く掲載コストも比較的安いため、積極的に活用しましょう。

ソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングは、SNSを活用した採用活動を指します。無料で始められて気軽に情報発信できる点が支持され、採用手法のトレンドになりつつあります。

近年は、「〇〇社の人事」というアカウントが増えており、自社のPRや候補者との交流に役立てている企業が多くみられるようになりました。堅苦しくなりすぎず、企業や採用担当者のありのままの姿を知ってもらえる点が、ソーシャルリクルーティングの魅力でしょう。

XやInstagram、Facebookなどの代表的なSNSの他に、noteの活用もおすすめです。noteには情報収集を目的としたビジネスパーソンのユーザーが多いため、採用マーケティングと相性のよいSNSであるといえます。

動画・音声コンテンツ

動画や音声コンテンツを活用した採用活動も、トレンドの手法です。社内の様子や先輩社員のインタビューなどを動画コンテンツとして配信すれば、興味・関心を高めたり応募を促進したりする効果が得られます。

実際、YouTubeやTikTokでコンテンツを配信し、自社の魅力を伝えることに成功している企業は少なくありません。なかには、TikTok動画がきっかけで求人応募数が激増した事例もあります。

また、「ながら聞き」ができるPodcastの需要も高まっています。有益情報を音声コンテンツとして配信し、自社への憧れや興味・関心につなげるという手法も有効です。

イベント

イベントの開催も、採用マーケティングの手法としておすすめです。採用に特化したイベントだけではなく、誰でも参加できるイベントの開催も高い効果を発揮してくれます。

例えば「新商品体験イベント」「社内(工場)見学イベント」を開催すれば、転職顕在層だけではなく潜在層にもアプローチできます。子どもや学生にも来てもらうことで、将来的な求人応募数増加にもつなげられるでしょう。

イベントを通じて自社の雰囲気や商材の魅力を知ってもらえれば、幅広い層における転職意欲や自社への憧れを高められます。

リファラル採用

リファラル採用は、紹介や推薦による採用手法です。従業員の人脈を活用して、自社に適した人材とのマッチングを狙います。コストを抑えつつ人材の質・マッチング率を高めたいときにおすすめです。

リファラル採用は、企業の魅力や文化を知ってもらったうえで入社してもらえるため、定着率が高くなりやすい傾向にあります。ただし大量採用が難しいので、優秀な人材を確実に少しずつ採用したい場合に活用しましょう。

リファラル採用をスムーズに行うには、企業の魅力を伝えられる資料を従業員に配布したり、紹介に対するインセンティブを用意したりする必要があります。

採用管理ツール

採用管理ツールは、採用活動を管理・支援するITツールです。代表的なものとして、「HRMOS(ハーモス)採用」や「ジョブカン」が挙げられます。

採用マーケティングは、従来の採用活動に比べて担当者の負担が多くなりやすい傾向にあります。採用管理ツールは担当者の負担を軽減し、効率的かつミスのない採用活動の実施をサポートしてくれるのです。

最近は、LINEで採用活動を完結できるツールや、採用サイトをノーコードで作れるツールなどが登場しています。採用マーケティングに初めて取り組む企業でも、専用のサポートツールを利用すれば効果的な施策を打ち出しやすくなるでしょう。

ビギニャー

へぇ~。採用マーケティングの手法って、こんなにたくさんあるんですね。これだけ選択肢が多いと、どれを選んだらいいかわからなくなりそうです。

シニヤン

そうだねぇ。ターゲットのフェーズや行動に適した手法・チャネルを選ぶことが大前提なんだけど、どの段階でどの手法が有効なのか、最初はわかりにくいかもしれないね。

シニヤン

それじゃあ、今度は採用ファネルを活用しながら、フェーズごとに最適なアプローチ手法とポイントを具体的にみていこうか。

採用ファネルのフェーズ別ポイント

さまざまな層をターゲットにする採用マーケティングでは、ターゲットのニーズや適切なアプローチ手法をフェーズごとに理解しておくことが重要です。ここでは採用ファネルをもとに、5つのフェーズに分けて戦略のポイントをみていきましょう。

  • 認知(潜在層)
  • 興味(顕在層)
  • 応募
  • 選考・内定
  • 入社

上記の5項目を詳しく説明します。

認知(潜在層)

認知フェーズでは、まだ転職の意志は顕在化していないが、自社のニーズにマッチする候補者に対するアプローチが重要となります。業界や事業の概要などを幅広く伝え、「こんな会社もあるのか」と知ってもらうことが何よりも大切です。

潜在層がターゲットなので、採用活動に絡めた情報発信はそこまで必要ではありません。オウンドメディアやSNSを通じたコミュニケーションやイベントの開催など、求職活動をしていない人とも接点を持てる施策の実施が効果的です。

興味(顕在層)

興味フェーズでは、転職の意志が顕在化し、どこかいい企業はないか比較・検討している候補者に対してアプローチします。自社を転職先候補として認識してもらうために、企業を深く知ってもらえるような情報の発信が重要となります。

ここで有効となるのが、求人応募媒体を通じた候補者との接点創出です。求人媒体への掲載や採用イベントの開催、人材サービス会社との提携、会社説明会の実施など、転職に向けて行動を起こしている候補者と接触できる機会を増やしましょう。

あわせて、次のアクションに進みたいと思ってもらえるよう、オウンドメディアやSNS、動画コンテンツなどを通じた情報発信を継続します。

応募

応募フェーズでは、自社に強い関心を寄せている候補者に対する、転職先候補として選んでもらうためのアプローチが大切です。単に接点を持つだけではなく、自社について深く知ってもらうプロセスが必要になります。

オウンドメディアや動画コンテンツを利用した情報発信はもちろん、メールや面談、職場見学などを通したコミュニケーションも有効です。「ここで働く自分」をイメージしてもらえるよう、業務内容や職場の雰囲気、キャリアパスなどを具体的に知ってもらう施策を実施しましょう。

この際、企業のよい面だけではなく悪い面もしっかりと伝えてください。ミスマッチを防ぎ、長期的に活躍してくれる人材を採用しやすくなります。

選考・内定

選考・内定フェーズでは、選考中の候補者や内定通知者に対してアプローチを行います。

求人に応募して選考に進んだからといって、安心してはいけません。選考を辞退する求職者は非常に多く、採用活動に割いたリソースを無駄にしてしまうことは珍しくないためです。

このフェーズで意識したいのは、「安心して入社できる会社」であると強く印象付けることです。リクルーターとの面談や社内イベントを通じ、企業への愛着度や志望度を高める施策を積極的に実施しましょう。

また、候補者が選考のなかで不安や悩みを抱くと、企業から心が離れてしまうケースがあります。一人で悩んでしまう候補者を減らすために、不安や疑問を解消する機会を設けたり、自社ならではの強み・魅力を再提示したりする取り組みも不可欠です。

入社

入社フェーズでは、内定者や従業員に対するアプローチを行います。

近年は、内定を辞退する求職者が後を絶ちません。入社するまで油断せず、候補者の志望意欲やモチベーションを維持するための取り組みを実施しましょう。この際に有効な施策としては、先輩社員との交流会や研修、内定者インターンシップなどが挙げられます。

また、既存者に対するフォローも忘れてはいけません。定期的な研修やメンター・上司によるフォロー、希望・能力に応じた配置換え、交流イベントなどを通じ、会社やチームのメンバーに愛着を持ってもらえるよう継続的に取り組んでいきます。

シニヤン

こんな感じかな。すべての候補者に同じ施策を実施しても、成果を得ることはできないんだ。「誰に・何を・どうやって届けるのか」を意識したアプローチが肝心なんだよ。

ビギニャー

勉強になります、先輩っ!せっかくなので、採用マーケティングに成功した企業の事例も知っておきたいのですが……。

シニヤン

もちろん、いいよぉ。

採用マーケティングの企業成功事例

採用マーケティングに成功した企業の事例を2つ紹介します。

面白い採用手法で話題作りに成功|株式会社カヤック

広告・PRのクライアントワークやゲーム事業を展開する株式会社カヤックは、面白い採用手法で注目を集め、多くの求人応募者を獲得している企業です。

次のようなユニークな選考を行い、「面白法人」でともに働く仲間の採用に力を入れています。

  • 推しへの愛をプレゼンする「推しプレゼン採用」(2023年10月〜)
  • マラソン完走で書類選考免除「42.195km採用」(2023年8月〜)
  • 自分に関する検索結果で選考する「エゴサーチ採用」(2015年6月〜)

他の企業にはない独自性の高い採用活動は大きな話題を生み、SNSで多くのシェアを獲得したりメディアに取材されたりと、企業の認知拡大に貢献。さらに、ユニークな選考にはターゲティング効果もあるため、自社にマッチした人材の獲得に成功しました。

採用スペシャルコンテンツの提供や独自性の高い教育・研修制度の発信も積極的に行い、企業への興味や応募意欲の喚起に効果を発揮しています。

SNSで採用情報を拡散|シャープ株式会社

電気通信機器・電気機器メーカーのシャープ株式会社は、SNS運用に力を入れている企業です。Xのフォロワーは83万人にものぼり、積極的に情報発信やユーザーとの交流を行っています。

特徴的なのは、自社情報を発信するだけではなく、「アカウントの中の人」の人間味が感じられる運用方針にしている点です。親近感があって面白いアカウントだと、多くのファンに支持されています。

もちろん、これほど注目されているアカウントから採用情報が発信されれば、影響力・拡散力は抜群。顕在層はもちろん、潜在層へのアプローチにも成功しています。

ビギニャー

いろいろと教えてくださって、ありがとうございました!採用マーケティングのお仕事、とっても魅力的で興味深いですね~!僕もいつか任せてもらえるように、採用についても勉強しておこうっと。

シニヤン

勉強熱心で感心だなぁ。それじゃあ、一緒に採用マーケティングのコンテンツ作りをしてみよっか!

ビギニャー

え!?いいんですか!?よ~し、張り切っちゃうぞ~!!

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