フレームワークとは、ビジネスやマーケティングに必要な情報を整理したり、分析したりするための枠組みです。
フレームワークは無数にあるので、何を使えばいいかわかりにくいですよね。
この記事では、たくさんある中から「初心者はこれだけ押さえればOK」というフレームワークを、目的別にまとめました。
ぜひCRMや目標設定などに活用してみてください。
最近仕事が増えて、頭がパニックになることが多いんです。先輩、考えを上手にまとめる方法はありませんか……?
それだったら、フレームワークを活用してみたらどうだい?
ふ、フレームワーク……?
INDEX
フレームワークとは?
フレームワークとは、ビジネスやマーケティングの戦略を考えるとき、思考の整理や問題を分析するために活用される枠組みです。
決められた項目に沿って情報を整理することで、最適な答えを見つける手助けをしてくれます。たとえば「パソコンの売上を上げたい」というときに、いきなり具体的な戦略を考えるのは難しいですよね。
前準備として市場の状況や製品の強み、顧客のニーズなどを分析することで、初めて効果的な戦略が考案できます。フレームワークを活用すると客観的な分析ができるので、結果が主観に左右されにくく、チームのメンバー全員が同じ認識や目標を持てます。
へぇー!型にはめて考えを整理するだけなら、僕でもできそうです!先輩っ、フレームワークについてもっと詳しく教えてください!
フレームワークは、実はたくさんの種類があるんだよぉ。それじゃあ今日は、ビジネスやマーケティングで活用できるフレームワークを、目的別に見てみようか。
よ~し、全部メモするぞ~!
状況整理のフレームワーク
まずは、自社や市場を正しく理解して状況を整理するためのフレームワークを紹介します。
- PEST分析
- 3C分析
- SWOT分析
- 5フォース分析
各フレームワークを詳しくみてみましょう。
PEST分析
4つの外的要因から業界を分析し、社会全体の動向を把握してビジネスに活かすフレームワークです。
- Politics(政治):法律、税制、政権交代など
- Economy(経済):経済状況、為替、株価、景気動向など
- Society(社会):人口動態、構成、流行、世論、教育など
- Technology(技術):技術、特許、インフラ、イノベーションなど
以上の項目を分析することで、自社にとって脅威やチャンスとなる要因を発見できます。
3C分析
自社の経営環境について分析するためのフレームワークです。
- 顧客や市場(Consumer):市場規模や成長性、顧客のニーズ、消費行動の傾向など
- 競合(Competitor):競合企業のシェア、競合企業の特徴、業界のポジション、今後予想される行動など
- 自社(Company):企業理念やビジョン、強み、リソース、事業や製品の状況
客観的な情報を収集し、良い面と悪い面の両方から分析することで、独自性や自社が生き残る戦略を考案しやすくなります。
SWOT分析
自社の内部・外部環境を整理し、挑戦すべき市場や課題、強みなどを分析するフレームワークです。
- 内部環境:Strength(強み)、Weakness(弱み)
- 外部環境:Opportunity(機会)、Threat(脅威)
あわせて「強み×機会」「弱み×機会」「強み×脅威」「弱み×脅威」のように、内部環境と外部環境を掛け合わせて戦略を立てる「クロス分析」も行っておきましょう。
5フォース分析
5つの脅威を整理し、市場への参入判断や戦略立案に活かすフレームワークです。
- 競合他社:競合他社の数、シェア率など
- 代替品:代替品となるものはないか(デジタルカメラ⇔スマートフォン)など
- 売り手:仕入元との力関係など
- 買い手:消費者の値引き交渉力や低価格競争など
- 新規参入:技術力や資本力がある新規参入者のリスクなど
上記の力が強い業界は収益率が低くなりやすく、参入する市場としてあまり価値が高くないと判断されます。
戦略立案のフレームワーク
戦略立案のときに役立つのは、以下のフレームワークです。
- STP分析
- 4P分析
- 4C分析
- VRIO分析
- ビジネスモデルキャンバス
各項目の詳細は以下のとおりです。
STP分析
商品のターゲットや自社の立ち位置を考えるためのフレームワークです。
- セグメンテーション(Segmentation):年齢や嗜好などで消費者を分類
- ターゲティング(Targeting):ターゲットにする消費者を絞り込む
- ポジショニング(Positioning):自社の立ち位置を決める
自社の強みや独自性を確立する「ポジショニング」を行う際は、「ポジショニングマップ」が活用できます。
4P分析
自社商品の理解を深めるためのフレームワークです。
- 商品(Product):商品の特性はどのようなものか
- 価格(Price):価格は適切か
- 場所・流通(Place): 販路や流通チャネルは適切か
- 販促(Promotion):広告・宣伝はどうするのか
4C分析と合わせて活用することで、自社商品に適したマーケティング戦略の立案に役立ちます。
4C分析
商品の価値や利用のしやすさを分析するフレームワークです。
- 顧客価値(Customer Value):機能性やブランド価値など
- 顧客の経費・負担(Customer Cost):商品の購入に費やす費用や時間など
- 利便性(Convenience):購入場所や支払いなど、商品利用の利便性
- コミュニケーション(Communication):広告やSNSなど、顧客との接点
顧客目線で分析できるので、具体的なマーケティング施策を考えるときに効果的です。
VRIO分析
自社の競争優位性を知るためのフレームワークです。
- 経済的価値(Value):自社の経営資源がどれくらい売上に影響を与えるのか
- 希少性(Rarity):自社製品の独自性がどれくらいあるのか
- 模倣可能性(Imitability):他社に模倣される可能性の高さはどれくらいか
- 組織(Organization):人材や業務フローなど、組織体制が整っているか
自社と他社の差別化ポイントを洗い出せるので、自社ならではの独自性の高い戦略立案に役立てられます。
ビジネスモデルキャンバス
新しいビジネスモデルを模索するときに役立つフレームワークです。
- 顧客セグメント:価値を提供する顧客、ターゲットにしたい顧客層はどこか
- 価値提案:提供する商品やサービスは何なのか
- チャネル:商品やサービスをどのような方法で周知するのか
- 顧客との関係:どのように顧客と良好な関係を築くのか
- 収益の流れ:どのような流れで収益が発生するのか、どのように回収するのか
- リソース:価値を提供するために必要となる経営資源は何か
- 主要活動:ビジネスモデルに必要な活動や準備は何か
- パートナー:事業活動において協力者になる企業はどこか
- コスト構造:事業活動に必要な固定費や変動費は何か
価値を提供する顧客層からビジネスモデル、自社のリソースまでまとめて可視化することが可能です。新規ビジネスについて社内で共通認識を持ちたいときはもちろん、既存ビジネスの見直し時にも活用できます。
CRM・顧客理解のフレームワーク
CRM・顧客理解に効果的なフレームワークは、以下のとおりです。
- 行動モデル
- RFM分析
- マーケティングファネル
- カスタマージャーニーマップ
- 5W1H
以上のフレームワークを詳しく解説します。
行動モデル
顧客の購買意思決定プロセスを整理するフレームワークです。
- AIDMA:発見(Attention)、興味(Interest)、欲求(Desire)、記憶(Memory)、行動(Action)
- AISAS:AIDMAに検索(Search)と共有(Share)を追加したモデル
- AISCES:AISASにComparison(比較)Examination(検討)を追加したモデル
プロセスごとに顧客の行動や感情を整理することで、「どうすれば次のフェーズに進んでもらえるのか」を考えやすくなります。
RFM分析
Recency(直近の購買)、Frequency(頻度)、Monetary(購入金額)の3つの要素で顧客を分析し、それぞれへのアプローチ方法を考えるフレームワークです。
「最近購入してくれて頻度も単価も高い顧客」「頻度も単価も低くしばらく購入していない顧客」などに分類することで、各顧客に適した訴求方法が見つかります。
マーケティングファネル
顧客の心理プロセスをフェーズ化し、漏斗のように図式化して整理するフレームワークです。
- パーチェスファネル:購買行動に焦点を当てたファネル
- インフルエンスファネル:購入後の行動に焦点を当てたファネル
- ダブルファネル:上記の2つを組み合わせたファネル
各フェーズでの顧客数の変化を把握し、それぞれの問題点や課題を浮き彫りにする効果があります。
カスタマージャーニーマップ
顧客が商品と出会ってから購入するまでのプロセスを地図のように表し、感情や行動、課題などを整理するフレームワークです。各接点の問題点を洗い出せるので、フェーズごとの具体的な施策を考えるときに有効です。
5W1H
見込み顧客の購買にまつわる動機や行動を探るために使われるフレームワークです。
- 「When(いつ)」
- 「Where(どこで)」
- 「Who(誰が)」
- 「What(何を)」
- 「Why(何故)」
- 「How(どのように)」
上記の観点から分析します。ほかにも、報連相のときに5W1Hを意識すると、伝達をスムーズに行えるようになります。
目標設定のフレームワーク
目標設定のフレームワークとしてよく活用されるのは、以下の4つです。
- KGI/KPI
- SMART
- As is/To be
- マンダラート
各項目を詳しく解説します。
KGI/KPI
最終目標(KGI)と、KGI達成に必要な中間目標(KPI)を設定するフレームワークです。最終目標に至るまでの行動や成果を細かく設定することで、「いつ・だれが・何をすべきか」を明確にします。
SMART
目標の質を高めるためのフレームワークです。
- Specific(具体的か)
- Measurable(計測可能か)
- Achievable(達成可能か)
- Related(関連性があるか)
- Time-bound(期限があるか)
上記の要素を満たしているかをチェックすることで、成果につながる目標設定ができます。
As is/To be
理想と現状をそれぞれ書き出して比較することで、改善点を見つけ出すフレームワークです。非常にシンプルでわかりやすいので、気軽に活用しやすい点がメリットです。
マンダラート
縦3マス×横3マスのマス目を9セット用いるフレームワークです。目標設定や達成までの道のりの把握、アイデア出しなどに活用できます。まずは、中央のマスにメインテーマとなるキーワードを書き出し、その周りに関連するキーワードを記入します。
そして、記入した8つのキーワードに関連するキーワードをさらに書き出す……という流れで目標や思考を整理していきましょう。そこから、使えそうなキーワードをピックアップして施策などに反映します。
思考整理のフレームワーク
思考を整理するためのフレームワークとしては、以下のものがおすすめです。
- MECE
- ロジックツリー
- マインドマップ
- オズボーンのチェックリスト
- So What?(つまり?) /Why So?(なぜ?)
それぞれを詳しく解説します。
MECE
「網羅的で重複がない」という意味を持つ思考法です。MECEを実践すれば、たとえば以下のようなことが把握できます。
- 男性を主夫とサラリーマンに分類すると兼業主夫に重複が生まれる
- 男性を主夫とサラリーマンに分類すると個人事業主が漏れる
より正確に情報を整理したいときは活用してみましょう。
ロジックツリー
特定の議題を複数の要因や要素に分解して、論理的に整理するフレームワークです。 たとえば「PV数が低い」という議題の場合、「コンテンツの質が低い」「サイトの認知度が低い」などの複数の原因が分析できます。
さらに、そこから「コンテンツの質が低い」原因として、「リソースが足りない」「ノウハウがない」などが導き出せるかもしれません。複数の要因を枝分かれさせて木のように整理するので、ロジックツリーと呼ばれているのです。
マインドマップ
議題に関連する自由な思考やアイデアを分岐させるように書き出して、可視化したマップです。連想される単語を書き出したり複雑なアイデアの全体像を可視化したりと、ロジックツリーよりも自由に書き進める点が特徴です。
オズボーンのチェックリスト
9つのチェックリストに答えていきながら、思考を整理したり新しいアイデアを生み出したりするフレームワークです。
- 転用:ほかの使い道はないか
- 応用:既存のものはないか、そのアイデアを応用できないか
- 修正:意味や様式、型などを変えられないか
- 拡大:より大きく、強く、高く、重くできないか
- 縮小:より小さく、弱く、低く、軽くできないか
- 代用:ほかのもの、アプローチで代用できないか
- 置換:レイアウトや操作などを入れ替えられないか
- 逆転:上下左右前後や発想を逆転させられないか
- 統合:ほかのものと組み合わせられないか
強引に発想を飛躍させるため、思いもよらない新しいアイデアを生み出せる可能性があります。
So What?(つまり?) /Why So?(なぜ?)
物事の道筋を立てて、論理的に思考を進めるフレームワークです。課題について、「So What?(つまり?)」「Why So?(なぜ?)」と思考していくことで、結論や原因を論理的に探っていきます。
戦略改善のフレームワーク
改善戦略に役立つフレームワークとしては、以下のようなものが挙げられます。
- PDCA
- なぜなぜ分析
- KPT
- 親和図法
- バリューチェーン
それぞれの項目を詳しく解説します。
PDCA
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
以上を繰り返して、業務の改善を目指すフレームワークです。素早くPDCAサイクルを回せば、早い段階で問題点を見つけられます。
なぜなぜ分析
課題に対して「なぜ?」と繰り返し問いかけ、原因を明らかにするフレームワークです。何度も問いかけを行うと真の要因が判明するので、より効果的な改善策や再発防止策を見つけ出せます。
KPT
KPTは、Keep(よかったこと)とProblem(課題)を洗い出し、再度Try(次の挑戦)するためのフレームワークです。問題点だけではなく成果が出た施策についても目を向けられるため、さらに効果的な施策が目指せます。
親和図法
アイデアや思考などをグルーピングして思考を整理するフレームワークです。まずは無作為にアイデアを書き出し、親和性の高いアイデアを集めてグルーピングします。そして、まとめた情報をもとにアイデアや思考を整理するのです。
バリューチェーン
バリューチェーンとは、活動を「主活動」と「支援活動」の2種類に分け、バリュー(付加価値)を生み出しているポイントを知るためのフレームワークです。
- 主活動:製造、物流、マーケティング、販売、サービスなどの活動
- 支援活動:管理、人事、労務管理、開発などの活動
まずは自社のプロセスを洗い出し、強みや強みをリストアップしましょう。さらにVRIO分析と組み合わせれば、より経営戦略の最適化やコスト削減に役立てられます。
フレームワークって、こんなにたくさんの種類があるんですね!
そうそう。とにかく種類が多いから、活用シーンごとに最適なものを用いることが大切なんだよ。
フレームワークは、どんなシーンで活用できるんですか?
ビジネスでフレームワークを活用するシーンの例
ビジネスでフレームワークを活用するシーンは、非常に多く存在しています。ここでは、活用シーンの一例をご紹介します。
- 戦略立案に使う
- 業務改善に使う
- 目標達成に使う
各シーンの詳細を解説します。
戦略立案に使う
フレームワークは、経営やマーケティングの戦略立案に役立ちます。企業の強みや弱み、競争優位性を正確に把握できるため、自社にとって効果的な施策の実施につながるでしょう。
業務改善に使う
フレームワークを使うと、新しい価値観やアイデアを見つけられます。そのひらめきは施策の立案だけではなく、業務改善にも役立つことでしょう。業務の効率化やパフォーマンスのアップ、売上向上などに活用できます。
目標達成に使う
フレームワークを活用して情報を整理すると、企業やチームで共通意識を持てるようになります。また、課題の整理や現状の把握、目標達成のために必要な行動が明確になるため、最短ルートで目標達成を目指せるのです。
フレームワークは、本当にいろいろなシーンで活用できるんだ。「混乱してきたな」「どうしたらいいのかな」と迷うことがあったら、いつでも利用してみてね。
は~い!ありがとうございます!フレームワークで思考を整理できれば、たくさんのメリットが得られそうですね!
そうだね。フレームワークには、大きなメリットが2つあるんだよ。
ビジネスフレームワークを活用するメリット
ビジネスでフレームワークを活用すると、以下のメリットが得られます。
- 業務効率がよくなる
- 費用対効果を高められる
上記の内容を詳しくみてみましょう。
業務効率がよくなる
目的やシーンに適したフレームワークを利用することで、効率的に必要な情報を得て最適な戦略を立てられるようになります。必要以上に思考したり迷ったりする必要がなくなるため、業務効率をグッとアップできます。
費用対効果を高められる
フレームワークで定められた手順に従って分析を進めれば、しっかりと成果を得ることが可能です。たとえマーケティング初心者であっても、フレームワークの流れに沿って市場や自社の状況を整理すれば、自社の課題や取り組むべき施策がみえてくるでしょう。
コストをかけずにマーケティング効果を最大化できるフレームワークは、費用対効果が抜群の施策であるといえます。
でもね、フレームワークには注意点もあるんだ。
え?そうなんですか?
最後に、フレームワークを使うときに気をつけたいポイントを紹介するね。
ビジネスフレームワークの注意点
フレームワークを利用するときは、フレームワーク自体をしっかりと理解する必要があります。目的や分析に必要な情報などを知らないままとりあえず取り組むと、正しく分析できなかったり必要な情報が得られなかったりする可能性があるためです。
また、フレームワークは万能ではありません。「フレームワークを利用すれば完璧な戦略が立案できる」「革新的なアイデアが必ず手に入る」というわけではないのです。
フレームワークはあくまでひとつの手法でしかないため、ほかの方法やツールも活用しながらビジネスやマーケティングを進めていくことが肝心です。
なお、フレームワークを適切に活用するために、研修を通して学ぶことも組織の成長に有効でしょう。「リスキル」という研修会社では、若手~管理職の方までを対象にフレームワーク研修を行っています。興味のある方はぜひ、ご覧になってください。
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