PESOモデルとは、現代人の消費行動の変化に応じて登場した、「トリプルメディア」に「シェアードメディア」を加えた4つのメディアを活用して情報の拡散や集客を狙うマーケティングモデルです。
当記事では、PESOモデルの必要性と4つのメディアについて解説した上で、PESOモデルを活用した代表的な成功事例を紹介します。
先輩っ!このお菓子知っていますか?なんかX(旧:Twitter)でバズったのがきっかけで、売り切れ続出しているみたいなんです!やっと手に入りました〜!
へぇ〜。今はこれが流行っているんだ。そのお菓子の会社は、PESOモデルを上手に取り入れた今時のマーケティングをしているんだね。
PESO……??なんのことですか……?
PESOモデル(ペソモデル)とは?トリプルメディアの進化系
PESOモデル(ペソモデル)とは、4つのメディアを組み合わせて行うマーケティング戦略のことです。4つのメディアの頭文字を取って「PESO」と名付けられています。
もともと「トリプルメディア」と呼ばれる3つのメディアを組み合わせて行うマーケティング戦略があり、そこに新たに「シェアードメディア(Shared Media)」を加えたものがPESOモデルです。
シェアードメディアとは、「Shared」という名前にも表れている通り、「共有する」ことを目的としたメディアです。具体的には各種SNSのことを指します。
そもそもトリプルメディアとは?
トリプルメディアは、以下の3つのメディアからなります。各メディアの頭文字から「PEO」と呼ばれることもあります。
トリプルメディア | 概要 |
ペイドメディア(Paid Media) | お金を払って情報発信を依頼できるメディア。広告のこと |
アーンドメディア(Earned Media) | パブリシティ活動を受けて第三者が情報発信を行う外部メディア。マスメディアやWebメディア、その他各種メディアによる取材・報道など |
オウンドメディア(Owned Media) | 自社が所有・運営するメディア。公式サイトや公式ブログ、公式SNSアカウント、会報誌など |
PESOモデルとトリプルメディア戦略の違い
トリプルメディア戦略とPESOモデルの違いは、SNSに対する考え方です。
トリプルメディア戦略では、SNSは基本的に「アーンドメディア」に含まれます。アーンドメディアは、各種メディアによる取材・報道が中心ですが、第三者の情報発信という点で、一般ユーザーによるSNS投稿もアーンドメディアに分類されていました。
しかしPESOモデルでは、一般ユーザーによるSNS投稿をアーンドメディアから切り出して「シェアードメディア」として扱います。そして、投稿の先にある共有・拡散を重視してメディア活用を考えます。
ちなみにSNS投稿でも、インフルエンサーなどにお金を払って投稿してもらう場合は「ペイドメディア」、企業の公式アカウントでの発信は「オウンドメディア」に含まれます。
ただ、そういった場合でも共有・拡散は重要であり、シェアードメディアとの連携を考えていく必要があるでしょう。
なるほど、PESOってメディアの種類のことを意味していたんですね!
そうそう。SNSでバズったことをきっかけに商品が売れるというように、最近はSNSがマーケティングで重要な役割を果たしているんだよ。
PESOモデルはなぜ必要?マーケティングで注目される理由
トリプルメディア戦略というマーケティングモデルから、さらにPESOモデルが重視されるようになった理由として、現代の消費者の変化があります。
消費者が接するメディアの多様化
インターネット利用が当たり前のものになる以前、消費者が何かの商品やサービスについて知りたい場合、その情報源はテレビや新聞、雑誌といったマスメディアが中心でした。
その状況では、ペイドメディアやアーンドメディアを活用した情報発信だけで、企業は一定の成果を上げることができました。
しかし、インターネットが普及し、さらにスマホの普及で消費者がいつでもどこでもインターネットを気軽に利用できるようになったことで、消費者が何かを調べるときの情報源は多様化しました。
その結果、消費者は企業からの情報発信を受け身で待つのではなく、自ら情報を探しにいき、必要な情報を取捨選択するようになっています。
こういった状況で企業が成果を上げつづけるためには、既存のメディアでの情報発信だけでは不十分で、消費者の行動に対応した新たなメディアの活用が必要になっています。
第三者の口コミ・レビューが重視されている
トリプルメディアにさらにシェアードメディアを加えたPESOモデルが必要とされるのは、消費者が「第三者の口コミや正直なレビュー」を重要視するようになったためです。
多様なメディアから発信される膨大な情報に日々接する消費者は、情報の取捨選択の基準として、企業からの一方的な情報発信よりも、日々のSNS投稿などを通じて信頼できる人、共感できる人の口コミ・レビューに重きを置く傾向があります。
そういった一般消費者の口コミ・レビューは「UGC=User Generated Content」とも呼ばれ、マーケティングにおいて重要なコンテンツのひとつとされています。
また、「インスタ売れ」や「TikTok売れ」という言葉が生まれたことからもわかるように、SNSで発信した情報が企業の売上に直結する事例は増えています。
たしかに、僕の周りでもSNSのレビューを見て商品を購入する人が多い気がします!
ただ実は、シェアードメディアだけで成果を上げることも難しくて、ほかの3つのメディアもしっかりと活用する必要があるんだよ。そのために、それぞれのメディアをきちんと理解しておこう。
PESOモデル構成メディアの特徴
概要 | メリット | デメリット | |
ペイドメディア | お金を払って情報を掲載 広告 | ・不特定多数のユーザーに情報発信 ・情報をコントロールできる | ・広告費がかかる ・ユーザーに敬遠される可能性あり |
アーンドメディア | 第三者が運営している外部のメディア | ・不特定多数のユーザーに情報発信 ・ユーザーからの信頼性が高め | ・情報を完全にはコントロールできない ・情報発信してもらえるかどうかは第三者次第 |
オウンドメディア | 企業が自社で所有するメディア | ・情報をコントロールできる ・企業の資産になる | ・効果が出るまでに時間がかかる ・コンテンツの質と量が必要 |
シェアードメディア | 共有することを目的としたメディア SNS | ・完全ユーザー目線の口コミ ・レビューを獲得できる ・ユーザーからの共感度が高い | ・情報をコントロールできない ・狙って拡散を起こすことが難しい |
PESOモデルを構成する4つのメディアについて、改めてそれぞれの特徴とメリット・デメリットをまとめました。
どれかひとつのメディアに頼るのではなく、マーケティング施策の目的やターゲットに合わせてその時々で最適なメディアを選び、獲得したデータをメディア同士で連携しながら活用していくことが重要です。
ペイドメディア(Paid Media)
ペイドメディアは、お金を支払って情報を掲載してもらうメディアです。広告と呼ばれるものは広くペイドメディアに含まれます。
ペイドメディアは不特定多数のユーザーに対して確実に情報を表示できます。
また、昨今のマーケティングで活用が進むWeb広告は、広告を表示するユーザーを絞ることができ、短期的に効果を得やすくなっています。
ペイドメディアの一例
- マスメディアでの広告
- 各種Web広告
- 各種SNS広告
- イベントのスポンサーシップ
メリット
- 不特定多数のユーザーに情報発信ができる
- 情報を表示する場所や頻度などをコントロールできる
デメリット
- 広告費がかかる
- 広告と分かるとユーザーに敬遠される可能性がある
アーンドメディア(Earned Media)
アーンドメディアは、第三者が運営している外部のメディアです。企業発信ではない第三者の評価になるため、ペイドメディアよりもユーザーからの信頼性が高く、ブランディングに役立ちます。
企業のパブリシティ活動を受けて、各種メディアが取材や報道を行ってくれる場合、アーンドメディアに分類されます。
また、インフルエンサーや著名人がたまたま自社の商品・サービスを気に入ってSNSやブログで自発的に紹介してくれた場合や、外部の口コミ・レビューサイトでユーザーが行う評価もアーンドメディアに分類されます。
アーンドメディアの一例
- 広報によって掲載された取材記事
- インフルエンサーや著名人のSNS・ブログ
- 外部の口コミサイトやレビューサイト
メリット
- 不特定多数のユーザーに情報発信ができる
- ユーザーからの信頼性が高め
デメリット
- 発信内容を完全にはコントロールできない
- 情報発信してもらえるかどうかは第三者次第
オウンドメディア(Owned Media)
オウンドメディアは、企業が自社で所有するメディアです。多くの情報、深い情報を発信でき、顧客育成やブランディングに効果的です。
オウンドメディアの一例
- 自社ホームページ
- 自社ブログ
- メルマガやDM
- SNS公式アカウント
- ホワイトペーパー
メリット
- 情報発信の内容や形態をコントロールできる
- 継続的に情報発信を行うことで企業の資産になる
デメリット
- 効果が出るまでに時間がかかる
- コンテンツの質と量が必要
シェアードメディア(Shared Media)
シェアードメディアは、共有することを目的としたメディアです。一般消費者によるSNS投稿を広く含みます。
4つのなかで唯一、企業ではなくユーザーが完全にコントロールするメディアといえます。
シェアードメディアの一例
- X(旧:Twitter)
- TikTok
- YouTube
メリット
- 完全ユーザー目線の口コミ・レビューを獲得できる
- ユーザーからの共感度が高い
デメリット
- 情報をコントロールできない
- 狙って拡散を起こすことが難しい
それぞれの違いはよくわかったんですけど、具体的にどんな感じで活用すればいいんでしょうか……。あまりイメージが湧かないです。
それじゃあ、PESOモデル活用の代表的な事例を紹介するね。事例を参考にしつつ、自社の商品に合ったメディア戦略を考えることが大切だよ。
PESOモデルの活用・成功事例
シェアードメディアを含むPESOモデルでは、企業からの情報発信の先に、第三者による口コミ・レビューの投稿、共有が生まれることを意識するのがポイントです。
そのために、シェアしたくなる情報を発信することと、それらの情報が認知され、拡散につながるよう、各メディアの連動を意識する必要があります。
ここでは、PESOモデルの成功事例によく見られる、代表的な活用方法を紹介します。
オウンドメディアを中心に認知・拡散を狙う
単なる商品・サービスの紹介ではなく、ターゲットとなるユーザーにとって役立つ情報、興味関心を惹かれる情報、思わず他の人に教えたくなるような情報を発信することで、第三者による共有を生むことができます。
そのために効果的なのが、オウンドメディアです。企業が運営するメディアやブログ、SNSの公式アカウントで継続的な情報発信を継続的に行い、ユーザーにシェアしてもらうことを狙います。
シェア数が多くなって話題になれば、テレビやネット記事といったアーンドメディアに取り上げてもらえる可能性もあります。
ただし、そういった自然発生的な拡散は、なかなか狙って起きるものでもありません。そこで、まずはペイドメディアで広告を出し、オウンドメディアの認知度を高めることも検討しましょう。
オウンドメディアを訪れる人が増えれば、投稿や共有が起こる可能性も上がります。
キャンペーンきっかけで認知・拡散を狙う
即効性のある認知・拡散を狙うなら、キャンペーンの開催がおすすめです。
具体的には、参加者に抽選でプレゼントを用意して、SNSで指定のハッシュタグをつけて投稿をしてもらったり、公式アカウントの投稿をシェアしてもらったりします。
キャンペーンで商品・サービスを利用しているユーザーの投稿を集めることができれば、UGCとしての活用も考えられます。キャンペーンに参加してくれたユーザーに公式アカウントから反応することも効果的です。
これらは、シェアードメディアやオウンドメディアの活用といえるでしょう。また、キャンペーンの認知度を上げるために、SNS広告などのペイドメディアの活用も考えられます。
ターゲット層に強いアーンドメディアから認知・拡散を狙う
プレスリリースや公式アカウントなど企業の情報発信をきっかけとして、メディアが取材や記事に取り上げてくれることがあります。
不特定多数への発信という点ではマスメディアが強いですが、一方でWebメディアに取り上げられると、各メディアの読者にSNSでシェアしてもらえる可能性が高まります。
プレスリリースサイトの選定や公式アカウントでの発信の仕方など、情報を伝えたいユーザーが読者に多そうなWebメディアを意識してみることをおすすめします。
なるほど、イメージが湧いてきました!さっそく、今後のマーケティングに活かしていきます!
ぜひ意識してみて。ただし、PESOモデルは従来のメディア活用に比べて、企業がコントロールできない部分が増えるので、その点は注意が必要だよ。
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WRITING 執筆
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