コホート分析とは、ユーザーを属性ごとに分け、グループごとに行動の傾向を知るための分析手法です。
実は、コホート分析はGoogleアナリティクス(GA4)で簡単に実施することができます。
この記事では、コホート分析のメリットとGA4での設定方法、活用事例を解説します。
ビギニャー君、マーケターとしてさらにステップアップするためにも、今日はGA4の活用事例としてコホート分析について学んでみようか。
コホート分析……?初めて聞く言葉です!先輩、ぜひ教えてください!
コホート分析とは
マーケティング施策を立案するときに活用したい分析手法として、コホート分析というものがあります。コホート分析は、ユーザーを属性や条件で分類して、どのような傾向があるのかを分析する手法です。
GA4を活用してアクセス解析をする企業は、コホート分析を行うことで、より効果的な施策の立案に役立てられるかもしれません。ここでは、GA4の活用事例として知っておきたい、コホート分析の基本的な概要を解説します。
- コホート分析をわかりやすくいうと?
- コホート分析が重要な理由
上記2点について詳しくみていきましょう。
コホート分析をわかりやすくいうと?
コホート分析とは、年齢や社会的な属性によってユーザーを分類し、「それぞれのグループがどのような行動を取るのか」を把握するための分析方法です。コホートは「仲間グループ」という意味を持つ言葉で、もともとは心理学や社会学での分析に用いられていました。
コホート分析を行えば、自社のWebサイトを訪れたユーザーがどのような行動を取っているのかについての統計データを得られます。
コホートの分類方法は、決して年齢や性別などの属性だけではありません。「初めて訪問したユーザー」「このDMからサイトにアクセスしたユーザー」など、さまざまな条件でコホートに分類することができます。
なお、GA4におけるコホート分析は、「ユーザー獲得日」や「イベントを発生させたユーザー」などをグループ化して、定着率やCV数などを分析する手法です。一般的なコホート分析のようにいろいろなグループ分けができるわけではないため、注意が必要です。
コホート分析が重要な理由
コホート分析が重要な理由は、顧客維持率の向上に効果的な分析手法であるためです。ではなぜ、コホート分析を行って顧客維持率を意識する必要があるのでしょうか。それは、新規顧客を獲得するよりも既存顧客の売上を向上させたほうが、コストを抑えて利益を向上させられるためです。
商品だけではなく情報があふれかえっている現代。企業が顧客の関心を引き、自社を選んでもらうことは簡単ではありません。消費者が自分で情報を収集できるようになった今、広告を出すだけでは他社と差別化を図ることは難しくなりました。
そのため、自社コンテンツやSNSなどのさまざまな手法を活用して、コストも時間もかけて新規顧客を獲得する必要が出てきたのです。
対して、一度顧客になってくれたお客さまは自社に興味を持ってくれているので、新規顧客よりも容易にリピート購入してもらいやすい傾向にあります。企業が効率的に利益を獲得するためには、顧客維持率を向上させてリピーターを増やすことが大切なのです。
コホート分析は、新規顧客の獲得が難しくなった現代において、コストを抑えながら利益を上げるために欠かせない分析手法だといえるでしょう。
全然難しいことではなくて、ユーザーをグループ分けしたものをコホートと呼ぶんだよ。
へぇ~、そうなんですね!GA4でコホート分析を行うと、どんなメリットがあるんでしょうか?
GA4でコホート分析を実施すると、3つのうれしい効果が得られるんだよ。
GA4でコホート分析を行う効果・メリット
GA4でコホート分析を実施すると、以下の3つの効果・メリットが得られます。
- 施策の効果測定に役立つ
- マーケティング施策の考案に役立つ
- サブスクリプションサービスの売上向上に役立つ
各項目の詳細を解説します。
施策の効果測定に役立つ
GA4を使ったコホート分析は、おもに顧客維持率(定着率:リテンションレート)を分析する際に活用されます。「新規獲得した会員」や「初めてサイトに訪問したユーザー」を時期別に分けて把握できれば、どれほど顧客を維持できているかを分析できます。
たとえば、「以前会員登録したコホート」よりも「最近会員登録したコホート」のほうが解約率が低ければ、顧客維持率を向上できていることになりますよね。このように、コホート分析は顧客維持率を高めて継続利用してもらう施策の効果測定に役立ってくれます。
マーケティング施策の考案に役立つ
GA4のコホート分析でユーザーが離脱するタイミングがわかれば、マーケティング施策の立案に役立てられます。
たとえば、「ユーザー獲得日から◯日後に維持率が低下する」ということがわかれば、そのタイミングに合わせてクーポンを配布したり広告を配信したりできるでしょう。ぜひ、マーケティング戦略を練るときの材料として、コホート分析を活用してみてください。
サブスクリプションサービスの売上向上に役立つ
近年、定額制で利用し放題の「サブスクリプションサービス」や、インターネットを経由してアプリケーションをレンタルする「SaaS型サービス」が増加しています。サブスクリプションサービスが利益を上げるためには、いかに解約率を下げられるかが重要となります。
新規ユーザーの解約率の把握や、維持率向上に役立ってくれるコホート分析は、現代のビジネスモデルには欠かせない分析手法なのです。
コホート分析の最大のメリットは、やっぱり顧客維持率を高めるときに役立つことだね。
なるほどっ!既存顧客の維持が大切なことは、何度も先輩に教えていただいたので覚えていますっ!ところで、コホート分析ってGA4以外のツールでもできるものなのでしょうか?
そうだね。GA4が一番活用しやすいツールだけど、もちろん他のツールでもコホート分析を行うことはできるよ。
コホート分析に活用できるツール
コホート分析は、主に以下の3つのツールを使って行うことが一般的です。
- Googleアナリティクス(GA4)
- Excel
- データ解析ツール
ここでは、各ツールの特色を解説します。
Googleアナリティクス(GA4)
Googleが提供しているGoogleアナリティクス(GA4)には、コホート分析の機能が搭載されています。登録やリピートの条件、コホートの粒度(毎日・毎週・毎月)、コホートの計算などを細かく設定できます。
無料で利用できて機能も豊富なので、Googleアナリティクスを利用している方は積極的に活用するとよいでしょう。
Excel
コホート分析は、Excelで実施することも可能です。Excelの「ピポットテーブル」の機能を使えば、簡単にコホート分析が行えます。たとえば、次の流れで設定することで、会員登録したユーザーの日ごとの離脱率を分析できます。
- 会員登録日、離脱日、顧客ナンバーなどのデータを用意する
- Excelを開き、用意したデータを入力する
- データ全体を選択し、「メニュー>データ>ピポットテーブル」を選択する
- 「行(横軸)」「列(縦軸)」「値(集計する項目の単位)」を設定する
Excelを使えば、さまざまな項目でコホート分析を行えるため、GA4だけでは分析しきれない情報を得られます。
また、Excelだけではなく、スプレッドシートでも同様の機能を使用できます。スプレッドシートの場合は、「メニュー>挿入>ピボットテーブル」から設定しましょう。
データ解析ツール
コホート分析は、データ解析の専用ツールで行うことも可能です。解析ツールを使用するメリットは、誰でも簡単に高度な分析が行える点です。自社で導入しているものがあれば、コホート分析が行えるかどうか確認してみるとよいでしょう。
へぇ~!Excelとかデータ解析ツールでもコホート分析は行えるんですね!今度やってみようっと!
Web施策を実施しているほとんどの企業がGoogleアナリティクスを導入しているだろうし、まずはGA4から試してみるといいと思うよ。
そ、そうですよね!さっそくGA4でコホート分析をしてみたいのですが、やり方を教えていただけませんか?
GA4を使ったコホート分析のやり方
コホート分析は、Googleアナリティクス(GA4)で行うことが可能です。GA4のコホート分析では、「ユーザを初獲得した日」をグループ化したうえで、定着率やコンバージョン数などの分析が行えます。
ここでは、GA4でコホート分析を行う手順と設定項目の詳細、画面の見方を解説します。
GA4を活用したコホート分析のやり方
GA4でコホート分析を実施するときは、ホーム画面左側の「探索」を選択して、右上に表示される「テンプレートギャラリー」をクリックします。
「コホートデータ探索」という手法が表示されるので、クリックすればコホート分析のデータセットは完了です。
あとは、希望するとおりに各項目を設定していくだけですが、項目の意味が少しわかりにくいため、次項でそれぞれを詳しく解説します。
設定が完了したら、定期的にレポートを確認して時間の経過にともなうユーザー行動の変化をチェックしていきましょう。
GA4でコホート分析を実施するときの設定項目
GAでコホート分析を行うときは、さまざまな項目の設定を行わなければいけません。ここでは、7つの設定項目の詳細を説明します。
登録条件
登録条件とは、どのような条件のユーザーの行動を追うのかを設定する項目です。登録条件としては、次のようなものが挙げられます。
- 初回接触(ユーザー獲得日) :サイトやアプリを初回利用したユーザーを、発生日時で登録
- すべてのイベント:該当期間中のイベント(サイト訪問など)を発生させたユーザーを、初回発生日時で登録
- すべてのトランザクション :該当期間中に購入へ至ったユーザーを、初回発生日時で登録
- すべてのコンバージョン:該当期間中のCVイベントを発生させたユーザーを、初回発生日時で登録
- その他:特定のイベント(クリックやファイルダウンロードなど)を発生させたユーザーを登録
行動を追いたいユーザーの条件に合わせ、最適なものを選択しましょう。
リピートの条件
登録したユーザーが、どのような状態になったら「リピートした」と判断するのかを決める項目です。ここでは、初回接触を除いて「登録条件」と同様の項目を設定できます。たとえば「すべてのイベント」を設定した場合は、サイトに再アクセスした時点でリピートしたと判断されます。
コホートの粒度
コホート分析の詳細を表示する細かさについて設定できます。「毎日」「毎週」「毎月」から任意の期間を選択することが可能です。
たとえば、毎日見てほしいサイトであれば「毎日」、月に1回は訪れてほしいサイトであれば「毎月」を選択することになるでしょう。分析するサイトやアプリに合わせて、最適な粒度を選んでくださいね。
計算
リピートしたユーザーの集計方法を設定できます。集計方法には、「標準」「連続」「累計」の3種類あります。
標準
リピートの条件を満たすすべてのコホートユーザーが含まれ、期間の合計値が表示される。
連続
その期間だけでなくそれ以前のすべての期間でもリピートの条件を満たすすべてのコホート ユーザーが含まれ、期間の合計値が表示される。
累計
データ探索のいずれかの期間でリピートの条件を満たしているすべてのコホート ユーザーが含まれ、各期間の累計値が表示される。
例
たとえば、0週目と1週目、3週目にリピートした場合、各集計方法では次のようにカウントされます。
- 標準:0週目、1週目、3週目にカウント(条件を満たした場合のみカウント)
- 連続:0週目、1週目にのみカウント(連続で条件を満たした場合のみカウント)
- 累計:0週目、1週目、2週目、3週目にカウント(1回でも条件を満たした週があれば、ほかの週もカウント)
内訳
内訳にディメンションを追加することで、より詳しいレポートを作成できます。ディメンションとしては、年齢や性別、言語などさまざまな項目が設定可能です。慣れてきたら、内訳を設定してより高度な分析も行ってみましょう。
値
コホート分析のレポートで使用する指標を選べます。デフォルトは「アクティブユーザーの合計数」になっていますが、イベント数やトランザクションなどを設定することも可能です。たとえば、イベント数を値として設定すれば、条件を満たしたユーザーのイベント発生回数の推移が確認できます。
指標のタイプ
コホート分析レポートで使用する指標の種類を選択可能です。選べるのは、「合計」もしくは「コホートユーザー当たり」の2つです。「コホートユーザー当たり」を選ぶと、%表記で数値を見られるようになるため、よりデータを比較しやすくなるでしょう。
GA4のコホート分析の見方
コホート分析を行うと、GA4にこのような画面が現れます。
一番左の列には日付、一番上の行にはユーザーを獲得してから経過した日数が表示されています。たとえば、「5月13日~2023年5…」の「日3」の欄を見ると「0.27%」と記載がありますよね。
この数値は、該当期間内に獲得したユーザーのうち、3日後に再訪問したユーザーが0.27%だったということを示しています。「訪問から○日後にメルマガを配信すると再訪率の低下が抑えられた」など、施策の効果を測定するひとつの指標として活用できるでしょう。
おお、僕でも簡単にコホート分析のレポートを作成できました!GA4、とっても便利ですね!
そうなんだよ。慣れちゃえば簡単だよね。ところでビギニャー君、こうして作成したコホート分析のレポートは、どんな風にマーケティングで役立てていけばいいと思う?
う~ん。実はよくわかっていないんですよね。先輩、GA4を使ったコホート分析のマーケティング活用事例を詳しく教えてくれませんか?
GA4を使ったコホート分析の活用事例
GA4でコホート分析を行ったあとは、さまざまなマーケティング施策に役立てていきましょう。コホート分析の活用事例として、以下の5つの施策を紹介します。
- ユーザー数・PV数が減るタイミングで施策を打つ
- 新規顧客の獲得数を把握する
- コンテンツを見直すヒントにする
- キャンペーンの効果測定をする
- 需要予測や事業計画に活かす
各活用事例の詳細をみていきましょう。
ユーザー数・PV数が減るタイミングで施策を打つ
コホート分析を行えば、ユーザーがサイトを再訪しなくなるタイミングや、PV数が減少するタイミングを分析できます。完全に離脱するタイミングが把握できれば、再訪を促す施策を打ち出すべき時期がみえてくるでしょう。
たとえば、訪問から4日後に離脱するユーザーが多い場合は、「そのタイミングで新しいコンテンツを更新する」「メルマガでおすすめ記事を案内する」などの施策を実施できます。
新規顧客の獲得数を把握する
ユーザーが減少するタイミングがわかっていれば、「新しいユーザーをいつまでに・どれくらい集めればいいのか」を分析できます。ユーザーの増加や減少の傾向を正確に把握することで、計画的に新しい施策を考案したり収益の予測を立てたりできるようになるでしょう。
コンテンツを見直すヒントにする
コホート分析では、ユーザーがサイトを閲覧している時間(セッション時間)を把握することもできます。各コホートには必ずセッション時間が減少するタイミングが存在しており、そのタイミングは「ユーザーが見たいコンテンツがなくなった」ことを示しています。
セッション時間が減少するタイミングがあまりにも早い場合は、ユーザーのニーズに沿ったコンテンツを制作できていない可能性があるかもしれません。コンテンツの内容を見直したり内部リンクを増やしたりと、セッション時間を増やすための改善策を考える必要があるでしょう。
キャンペーンの効果測定をする
コホート分析では、キャンペーンごとの成果を把握できます。キャンペーン別にユーザーあたりの行動や収益が分析できれば、次回のキャンペーンに活かせますよね。どのキャンペーンにどれほど力を入れればいいかがわかるので、予算や人員の配分を最適化できます。
需要予測や事業計画に活かす
コホート分析を行えば、ユーザーの行動を時系列で把握できます。継続的に調査を続けていけば、月や年ごとの需要変化がつかめるようになり、施策の立案に役立てられます。
たとえば、「月初は再訪するユーザーが増えるから、このタイミングでセールを行う」などの戦略を立てられるかもしれません。また、将来的な需要を予測できるようになれば、事業計画や経営戦略のヒントを得られる可能性があります。
ええ!?コホート分析って、こんなにたくさんの活用方法があるんですね!これはやらなきゃ損かも!
でしょう?GA4を使っているなら、絶対にコホート分析を行っておくべきなんだよね。ということで、うちのメディアのコホート分析と、ユーザー数増加の施策立案をお願いしてもいいかな?
はいっ。さっそくやってみますっ!先輩、詳しく教えてくださってありがとうございました!
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WRITING 執筆
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