GDPRやITPは、最新のGoogleアナリティクス「GA4」が登場する背景となった規則・制限のことです。
「どうしてGA4に切り替える必要があるの?」「GDPRやITPは広告業界にどんな影響を与えるの?」
この記事では、そんなGA4とCookie規制の関連性、Web広告業界が抱える課題と対策について詳しく解説します。
INDEX
GDPR・ITPとは?GA4の登場背景を詳しく解説
GDPRやITPとは、企業が取得する消費者の個人情報利用について規制する規則や制限のことです。Webマーケティング関係の仕事に就いている方であれば、単語だけでも目にしたことがあるかもしれません。
近年、世界中でGDPRやITPと同じような法令や規制を設ける国が増えてきています。まずは、今話題の個人情報に関する規制を4つご紹介します。
- GDPR
- ITP
- 個人情報保護法
- CCPA
詳しくみてみましょう。
GDPRとは
GDPRとは、2018年にEUで施行された、個人情報保護のための規則のことです。正式名称は、「General Data Protection Regulation(ジェネラル・データ・プロテクション・レギュレーション)」です。
この規則によって、IPアドレスやCookieなど「今まで個人情報とみなされていなかった情報」が個人情報とみなされるようになりました。
また、企業が個人情報を取得する場合はユーザーの同意を得なければならないルールも、このGDPRがきっかけで広く普及しました。
これらのルールは、EUにある企業やEUにサービスを提供している企業だけでなく、管理者または処理者が「EU領域内で行う処理」に対しても適用されます。
つまり、EU圏内にいるユーザーからWeb上の行動データを取得している場合も、GDPRの適用範囲に含まれてしまうのです。
さらには、旅行などでEU圏内に短期間滞在した日本人のCookieにもGDPRが適用されます。このようにGDPRは適用範囲が広く、デジタルマーケティングを行っている人に大きな影響を与えたのです。
ITPとは?
ITPとは、Appleが提供しているWebブラウザ「Safari」に搭載している、トラッキング防止機能のことです。正式名称は、「Intelligent Tracking Prevention(インテリジェント・トラッキング・プリベンション)」です。
ITPにより、Safariでは「Web上でどのようなサイトをどのくらい閲覧したのか」「何を購入したのか」などCookieデータの取得に一部制限がかけられました。広告を目的としたユーザー行動データの収集が規制されています。
ITPは2017年に最初のバージョンである「ITP1.0」がリリースされてから、現在もアップデートが続けられています。アップデートを重ねるたびに、その規制範囲は大きくなっています。
改正個人情報保護法とは?
日本では、2022年4月より改正個人情報保護法が施行されています。今までCookieに関する規制はありませんでした。しかし、この法律によりCookieによって取得される情報が「個人関連情報」として扱われるようになりました。
個人関連情報とは、IPアドレスや端末固有ID、広告IDなどの識別子、位置情報、閲覧履歴、購買履歴など、個人が特定されない情報です。
現在、個人関連情報に関しては収集や取り扱いに制限はありません。しかし、個人関連情報をほかの企業に提供することで個人の識別が可能となる場合は、本人の同意を得ることが義務付けられています。 Cookieなどで取得した情報を外部データと紐づける処理を行う企業においては、事前にユーザーから同意を得なければいけません。
CCPAとは?
CCPAとは、米国カリフォルニア州で2020年1月から施行された、カリフォルニア州の住民に対するプライバシー保護を定めた州法です。正式名称は、「California Consumer Privacy Act(カリフォルニア州消費者プライバシー法)」です。
この法律では、企業がユーザーから個人情報を取得する際、その旨を通知することを義務付けています。個人情報を広く定義している点、カリフォルニア州内の事業所はもちろん、住民の個人情報を取り扱う場合も適用となる点が特徴的です。
GDPRやITP、そのほかの世界中の関連した法律・規制は、Google Analyticsの計測方法にも影響を与えます。 なぜなら、従来のGoogle Analyticsであるユニバーサルアナリティクス(UA)は、Cookieを使ってデータを計測しているためです。 GDPRやITPと関連性が深いCookieについてわかりやすく解説します。
Cookieとは?
Cookieとは、ユーザーがブラウザでWebサイトを訪問したときに、ユーザーの情報を一時的に保存する仕組みや保存した情報のことです。
Cookieで保存される情報はさまざまで、IDやパスワード、メールアドレスなどの属性情報や、Webサイトの訪問回数などのアクセス情報などが一例として挙げられます。Cookieには以下の2つの種類があります。
- 1st Party Cookie(ファーストパーティクッキー)
- 3rd Party Cookie(サードパーティクッキー)
ファーストパーティクッキーは、アクセスしたサイトのドメインによって発行される、サイト内だけで機能するCookieです。サードパーティクッキーは、複数のサイトを横断して機能するCookieです。
Cookieの仕組みがあることで、一度ログインしたサイトに自動でログインできるようになるなど、今までの行動にもとづいた機能が使えるようになります。
Cookie規制とは
Cookie規制とは、Cookieが保存しているユーザーの情報の利用について制限する動きのことです。現在は、サイトを横断して情報を収集するサードパーティクッキーに関する規制がメインとなっています。
しかし、今後ファーストパーティクッキーに関する規制が出てくる可能性はゼロではありません。現在も、すでに多くのブラウザがCookie規制に対応するために仕様を変更しています。
- SafariのITP機能(サードパーティクッキーのブロック)
- Chromeのプライバシー保護機能(サードパーティクッキーの段階的廃止)
- Firefoxの包括的Cookie保護機能(プライバシー機能のデフォルト化)
このように、Cookie規制はWeb業界に多くの影響を与えています。もちろん、広告業界への影響も無視することはできません。
Web広告業界は、GDPRの施行やITPの導入によって大きな影響を受けました。 なぜなら、「いままで可能だった施策」ができなくなったからです。 GDPRやITPが広告業界に与えた2つの影響について解説します。
- 計測ツールの精度が落ちる
- リターゲティング広告が制限される
詳しくみてみましょう。
計測ツールの精度が落ちる
Webサイトや広告のPV数、滞在時間、CV数などを計測するツールは、多くの企業が導入していることでしょう。計測ツールは、通常Cookieを使ってデータを取得します。そのため、GDPRやITPによってCookieでの情報収集が制限されれば、計測精度が落ちてしまうことは避けられません。
多くの方が活用している従来のGoogle Analytics「UA」は、ファーストパーティクッキーを使ってデータを計測しています。ゆえに、サードパーティクッキーを使ったツールと比べると影響はそこまで大きくありません。
しかし、ITPの影響でSafariからのアクセスの場合は1日でCookieが削除されてしまうため、計測結果の精度が下がることは避けらないでしょう。
また、サードパーティクッキーが利用できなくなれば、広告を一度クリックし、後日別ルートでサイトにアクセスしてCVに至る「ビュースルーコンバージョン」の計測ができなくなります。
たとえ影響が少なかったとしても、今後Cookie規制が厳しくなれば、ファーストパーティクッキーを用いたツールであっても計測ができなくなる可能性があります。
そのためGoogle Analyticsユーザーは、Cookie規制に対応したGA4(google Analytics 4 プロパティ)へ移行する必要があるのです。
リターゲティング広告が制限される
リターゲティング広告とは、一度自社のサイトを訪れたユーザーをターゲットに、自社の広告を配信するインターネット広告手法です。
たとえば、ECサイトで商品を見てからほかのサイトに移動したとしましょう。この際、移動先のサイトでECサイトの広告が出たときは、リターゲティング広告が表示されていることになります。
リターゲティング広告には、サードパーティクッキーの機能が用いられています。そのため、今後GDPRやITPなどの規制によって広告表示が難しくなる可能性があるのです。
「とりあえずリターケティング広告を出しておこう」では、コンバージョンを獲得することができなくなってしまった今。「いかにリターケティングに頼らない仕組みを構築し、PDCAを回していくか」というのが、業界における大きな課題になっています。
GDPRやITPのCookie規制の動きに対応しながらデジタルマーケティングを実施するために欠かせないのが、アクセス解析ツール「GA4」です。
Googleの発表によれば、GA4はこれまでのCookieに依存しないトラッキングの仕組みを用いて計測しています。※1
さらにGA4では、世界中のCookie規制や法改正に対応できるよう、常にアップデートが行われています。たとえば、Cookie規制に対応するために以下のような機能を備え付けていました。※2
- EUのデータはEU内で処理する
- ユーザーのデータ収集を国単位でコントロール可能にする
- IPアドレスを保存しない
Cookieに依存しないデータ計測が可能なGA4。今後、デジタルマーケティングにおいて必須のツールとなっていくでしょう。
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GDPRやITPのCookie規制に対応するためには、どのようなポイントに気をつけてマーケティングをすればいいのでしょうか。
ここでは、以下の4つの対策法をご紹介します。
- 同意管理ツールを導入する
- サードパーティクッキーに依存しない
- リターゲティングに依存しない
- 代替手段を活用する
4つの対処法を詳しくみてみましょう。
同意管理ツールを導入する
同意管理ツールとは、Webサイトの訪問者に対してCookie取得の同意確認・管理が行えるツールのことです。同意管理ツールを導入すれば、Cookie規制に対応しながらユーザーの情報を収集できます。
近年、画面に「Cookieの取得に同意しますか?」という内容のポップアップを表示させるWebサイトが増えてきました。
これは、同意管理ツールの機能のひとつです。同意管理ツールには、無料・有料のもの、海外の規制に対応したものなどさまざまな製品があります。自社やCookie規制の状況に合わせ、最適なものを選択することが大切です。
サードパーティクッキーに依存しない
GDPRやITPのCookie規制に対応するためには、サードパーティクッキーに依存しない体制を整えることが大切です。具体的には、ファーストパーティデータの活用が重要となります。 ファーストパーティデータとは、自社で集めた顧客の情報のことです。たとえば、以下のようなものが含まれます。
- ECサイトに登録されている顧客情報
- MAツールやCRM、SFAで蓄積分析しているデータ
- ファーストパーティクッキーで集めたユーザー行動データ
- 顧客の購買履歴など
ファーストパーティデータは自社に興味を持ってくれているユーザーから得た直接的な情報なので、信頼性も有用性も高いというメリットがあります。
これからの時代は、ファーストパーティデータを活用して、一人ひとりの興味やニーズに応じた「One to Oneマーケティング」を行うことが肝心です。
ファーストパーティデータの活用は、お客さまからの信頼感や親密さ(カスタマーエンゲージメント)を高める、「エンゲージマーケティング」にも効果的です。
リターゲティングに依存しない
Cookie規制が行われると、サードパーティクッキーによるリターゲティング広告の配信が難しくなります。そのため、リターゲティング広告に依存しないマーケティング活動が重要となるのです。 具体的なマーケティング施策の一例としては、以下のようなものが挙げられます。
- SNSマーケティング
- 動画マーケティング
- オウンドメディアの活用
- メルマガによる顧客の育成
- インフルエンサーマーケティング
上記のような、企業が積極的に情報を発信してユーザーの心を引き付けるコンテンツマーケティングが、Cookieレス時代にはおすすめです。
代替手段を活用する
リターゲティング広告に依存していた企業は、代替手段として「プラットフォーマーのドメイン内で活用するターゲティング広告」を活用しましょう。
これは、GoogleやYahoo!が持っている情報を活用し、ユーザーの興味関心や属性に合わせて配信する広告のことです。 たとえば、Yahoo!広告を配信するときを例に取ってみましょう。
Yahoo!では、Yahoo!広告をクリックしたユーザーをセグメント化しているので、そのセグメント情報をもとに、最適な相手に広告を配信することが可能です。これを「広告クリッカーターゲティング」と呼びます。
ほかにも、GoogleやFacebookのようなプラットフォームでは、自社で収集した情報を活用した独自のターゲティング広告が配信できます。プラットフォーマーが保有する情報をプラットフォーマーのドメイン内で利用するため、ファーストパーティ扱いになりCookie規制の対象となりません。
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