物流業界の2024年問題とは?EC市場に必要な解決策を紹介【マーケティング・DX化】

物流業界の2024年問題とは?EC市場に必要な解決策を紹介【マーケティング・DX化】

2024年問題とは、働き方改革法案によってドライバーの労働時間に上限が設けられることで生じる問題の総称です。

この記事では、2024年問題の概要や影響についてわかりやすく解説します。2024年問題は、これからの物流業界・EC市場に大きな打撃を与えると考えられています。

有効な解決策やEC業者が生き残るための戦略を、マーケティングやDXの観点から考えていきましょう。

ビギニャー

わ!今朝頼んだ事務用品、もう届いたんですか!?最近は通販で買った商品がすぐに届くから、本当に便利になりましたよね。

シニヤン

そうだねぇ。でも、2024年問題の影響があるし、今後はECサイトの利便性が下がってしまうかもしれないよ。

ビギニャー

え、そうなんですか!?2024年問題って…?荷物がすぐに届かなくなるのは困りますっ。

物流業界の2024年問題とは

翌日配送サービスや送料無料など、ECサイトは私たち消費者にとって利便性の高いものへと進化し続けています。しかし、2024年問題により、今後はこれまでのような物流サービスを受けることが難しくなるかもしれません。

2024年問題は、簡単にいうと「ドライバーの労働時間が制限されることで生じる影響」のことです。ECサイトの普及により、2024年問題が与える影響は非常に大きくなると考えられています。

まずは、今必ず押さえておきたい2024年問題の概要を学んでいきましょう。

2024年問題をわかりやすくいうと?

2024年問題とは、働き方改革法案によって、自動車運転業務の労働時間に上限が課されることが原因で生じる問題の総称です。2024年4月1日以降、トラックドライバーやタクシードライバーの時間外労働時間が「年間960時間」に制限されます。

ドライバーの労働時間を制限することは、一見ドライバーの労働環境を改善するポジティブな取り組みのように思えます。しかし、長距離移動や荷物積み下ろしの待機時間が必要なトラックドライバーにとって、稼働時間が制限されることは仕事量が制限されることと同義です。これにより長距離輸送が困難となり、物流に大きな影響が出ると考えられているのです。

EC市場の拡大により荷物の量は年々増加する一方ですが、今後は運べる荷物に制限がかかることになります。国の試算によると、このまま対策を取らなければ2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力が不足する可能性があることが判明しています。

物流が制限されると、物流業界やEC業界だけではなく消費者にも影響が出るでしょう。物流の負担を軽減するためには、運送会社やEC事業者を含む荷主企業のみならず、消費者の意識や行動を変える取り組みが不可欠です。

2024年問題によって生じる影響

2024年問題によって生じる具体的な影響として、次の4つが挙げられます。

  • ドライバーの給料が減る
  • 物流業界の人手不足が深刻化する
  • 物流コストが増加する
  • 配送サービスの品質が低下する

どのようなことなのか、詳しく説明します。

ドライバーの給料が減る

ドライバーの労働時間が制限されれば、そのぶん残業代も減ることになります。

厚生労働省の調査によると、月80時間以上の時間外労働をしている自動車運転業の従事者は約4割であることがわかっています。月80時間以上の残業をしているドライバーの場合、2024年問題の影響によって時間外労働が減ることは確実です。

なかには、残業代の高さに魅力を感じてトラックドライバーに従事する方も少なくありません。給料が減ることになれば、転職を検討する方が増えるのは間違いないでしょう。

物流業界の人手不足が深刻化する

厚生労働省によると、2022年9月時点でのトラック運転者の有効求人倍率は2.12倍だということが判明しました。この数値は全職種平均の約2倍で、物流業界では慢性的な人手不足が深刻化していることを示しています。

今ですら人手が不足している物流業界ですが、高齢化や給料の減少により、今後はさらに人手が足りなくなっていくと予測されています。労働者不足が原因で、事業を継続することが難しくなる企業も出てくることでしょう。

物流コストが増加する

時間外労働の制限によってドライバーが運べる荷物の量が減れば、物流業者の利益も減ります。その一方で、燃料代や車両の維持費は年々高騰する一方です。それを補うために、多くの物流業者は配送料の値上げに乗り出すでしょう。

物流コストの増加は、EC事業者を含む荷主企業はもちろん、消費者にも影響します。ECサイトで買い物をするときの送料だけではなく、私たちの生活に欠かせない日用品や食材の値上げにもつながるでしょう。

配送サービスの品質が低下する

労働力や時間外労働の減少は、配送サービスの品質にも直接的な影響を与えます。

短期間での長距離輸送ができなくなれば、当日・翌日配達は困難となるでしょう。地域によっては、輸送を断られることもあるかもしれません。実際、国土交通省は2024年問題によって生じる需給ギャップについて言及しており、東北や四国などの地方部における供給がひっ迫すると示しています。

必要なときに必要なものが手に入らなくなれば、私たちのビジネスや日常生活が大きく制限されることになります。

2030年問題への対策も必要

2024年問題と一緒に押さえておきたい課題として、「2030年問題」というものがあります。

2030年問題とは、日本国内の人口の約3割が高齢者になることで引き起こされる問題の総称です。多くの企業が人材不足に陥り、人件費が高騰したり人材獲得競争が熾烈化したりすることが懸念されています。

2030年問題は、もちろん物流業界にも暗い影を落とします。今よりもさらにドライバーの高齢化が進み、いっそう人手不足が深刻化していくと考えられているためです。

このままの状態を放置すれば、物流コストの高騰に歯止めが利かなくなるおそれがあります。関連業界はもちろんのこと、消費者も巻き込んだ早めの対策を講ずることが不可欠となっていくでしょう。

ビギニャー

えぇ!?これってかなり大問題ではないですか!?トラックドライバーがいなくなったり必要な荷物が届かなくなったりしたら、困るどころか生活できなくなる企業や人もいるのでは……?

シニヤン

そうなんだ。今や物流は僕たちのインフラといっても過言ではない要素だからね。だからこそ、関連業界が協力しながら問題を解決していかなくちゃいけないんだ。

ビギニャー

うちの会社はEC事業者のお客さんも多いし、他人事じゃないですね。EC事業者みたいな、荷物の配送を依頼する側の企業にできることはありますか?

EC事業者・荷主企業にできる2024年問題の解決策

EC事業者をはじめとした、荷物の輸送を依頼する側の企業ができる2024年問題への対策として、以下のようなものが挙げられます。

  • 配送料やオプションの見直し
  • 消費者への呼びかけ
  • 生産・物流ラインの見直し
  • DX化の推進
  • 運送会社に対する柔軟な対応

各対策の詳細をみていきましょう。

配送料やオプションの見直し

真っ先にできる対策は、配送料やオプションの見直しです。

現在、多くのEC事業者が送料無料や翌日配達・発送などのサービスを提供しています。しかし、今後は2024年問題により物流コストの増加や人手不足が進んでいくため、従来のようなサービスの提供は難しくなります。そのため、配送料の値上げやオプションの廃止を検討する必要が出てくるのです。

ただし、いきなり配送料の値上げやオプションの廃止を行うと、多くの消費者から反感を買ってしまいます。どうしてこのような措置が必要になったのかについて、じっくりと時間をかけて説明してから実施する必要があります。

また、運送会社の負担を軽減できるオプションを用意しておくことも大切です。注文時に「複数の注文をまとめて受け取る」「受け取り日時・場所の指定」などの選択肢を提示すると、現場に不必要な負担を強いることを減らせるでしょう。

消費者への呼びかけ

物流の負担軽減には、消費者の協力も不可欠です。事業者からも積極的に消費者へ呼びかけ、可能な範囲で運送会社の業務を軽減する取り組みに参加してもらいましょう。

消費者への呼びかけとしては、次のようなものが有効です。

  • 1回の注文でまとめ買いしてもらう
  • 置き配・自宅以外で受け取ることも検討してもらう
  • 確実に受け取れる日時を登録してもらう
  • 住所を正確に登録してもらう

大切なのは、ドライバーにとって大きな負担となる再配達を防ぐことです。近年は「どうせ送料無料だから」と、再配達を前提に注文する消費者も少なくありません。

ECサイト上の表記は「送料無料」でも、実際は梱包作業やトラックでの運送、地域担当者の配達にかかる人件費や燃料費など、物流には多くのコストが発生しています。そのことを説明し、物流業者・配達業者の負担や重要性を理解してもらう取り組みも重要です。

現在、国は消費者の意識改革や行動変容を促すために「送料無料」表記の見直しを行っています。今後は、「商品価格+送料」の表記がスタンダードになっていくかもしれません。

生産・物流ラインの見直し

生産ラインや物流ラインに無駄な工程やコストがかかっていないかを確認することも、2024年問題対策に有効です。

  • 生産に必要な材料の配送をまとめられないか
  • 生産や倉庫のオペレーションは適切か
  • 物流業者に支払うコストは適正か
  • ゆうパケットやメール便など、よりリーズナブルな配送方法に変更できないか

上記のようなポイントを見直してみると、運送会社と自社コスト双方の負担軽減につながります。

また物流会社を選ぶときは、提携する配送業者が多いかどうかを確認しておきましょう。配送ルートの選択肢が多い業者のほうが、最適なルートでコストを抑えた配送を行ってくれる可能性が高まります。

DX化の推進

物流問題の解決には、IT技術を活用したDX化が欠かせません。データを活用して配送・物流を効率化できれば、業務の大幅な自動化・効率化を目指せます。

荷主企業側ができるDX化施策の一例としては、次のようなものがあります。

  • 顧客への配送状況の連絡
  • 倉庫の在庫・受入状況の適切な管理
  • 注文状況に応じた従業員のシフト管理

社内の配送・物流に関連する業務を自動化することで、無駄な業務や人件費の大幅な削減につなげられるでしょう。

運送会社に対する柔軟な対応

運送会社の負担を軽減できるよう、柔軟な対応で協力する姿勢も重要です。必要な対応は企業によってさまざまですが、集荷時間の希望を聞き入れたり、仕分けや荷積みしやすいようにパレット化したりと、可能な範囲で歩み寄ると運送会社の負担を減らせます。

もちろん、荷主企業の負担増加となるため、このような対応は義務ではありません。しかし、2024年問題の解決には、トラックドライバーだけではなく関連する業界全体で取り組むことが不可欠です。よりスムーズに荷物を運べるよう、企業間で相談しながら対応範囲を検討していくとよいでしょう。

シニヤン

現状できることといえば、こんな感じかな。事業者が主体となって取り組むのはもちろんのこと、顧客に対しても協力を呼びかけることが重要だよ。

ビギニャー

なるほどぉ。どれも急にできる対策ではなさそうなので、早いうちから取り組んでおく必要がありそうですね。

シニヤン

そうだね。でも、やっぱり荷主や消費者だけの取り組みには限界があるから、運送会社も積極的に対策をしていかないとダメなんだ。

運送会社にできる2024年問題の解決策

運送会社にできる2024年問題への対応策は、以下のとおりです。

  • 再配達防止に向けた取り組み
  • 輸送業務の見直し
  • DX化の推進
  • ロジスティクステック(物流テック)の活用
  • 採用マーケティングの実施

対応策ごとの詳細をみていきましょう。

再配達防止に向けた取り組み

ハードルが低く即効性がある取り組みとして、再配達の削減が挙げられます。今まで再配達に費やしていた労働力を他の業務に再配分できれば、不足している労働力を補うことが可能です。

運送会社が行える再配達防止策としては、置き配やコンビニ受け取りへの協力を呼びかけることや、配達日時のメール・LINE連絡などがあります。アプリやLINEで簡単に配達日時を指定できるサービスを提供することも有効でしょう。

輸送業務の見直し

輸送業務を効率化できないか、あらためて見直してみましょう。例えば、次のような取り組みをすれば、大幅な負担軽減や業務効率化が目指せるかもしれません。

  • 中継輸送:1つの工程を複数人で分担して運送する
  • 共同輸配送:同じ納品先を持つ運送業者が荷物を持ち寄り、連携して配送する
  • モーダルシフト:鉄道や船舶も活用しながら貨物輸送を行う

上記の取り組みは2024年問題だけではなく、環境負荷の低減にもつながります。業界各社で連携を取りながら、より輸送業務の負担を軽減する方法について考えてみましょう。

DX化の推進

運送会社のDX化推進も、2024年問題への対策になります。具体的な取り組みの一例として、次のようなものがあります。

  • データを活用した配車・配送計画のデジタル化や最適化
  • 配送予約システムの構築
  • 勤怠管理システムの導入
  • 配達手続きのデジタル化
  • AIを活用したオペレーションの効率化

実際、すでに物流DXを導入することで経営資源やコストの最適化に成功している運送会社もあります。いきなりすべての工程をDX化することは難しいので、可能な範囲からITシステムの活用を始めてみるとよいでしょう。

ロジスティクステック(物流テック)の活用

ロジスティクステック(物流テック)とは、IoTやAI、ロボットなどの最新テクノロジーを活用して、物流関連業務の自動化・効率化を実現する取り組み・技術です。自動運転やドローンを活用した配達や、ロボットを使った倉庫業務などが代表的な例です。

少しずつですが、物流テックを取り入れる企業が増えつつあります。実際、楽天グループでは自動配送ロボットやドローンによるデリバリーサービスの提供を始めています。

物流テックは、物流DXを実現するための取り組みのひとつです。技術もコストもかかる取り組みではありますが、物流業界の課題解決には物流テックの活用が重要となります。今すぐ取り入れることが難しい場合でも、「どのようなことができるのか」「自社にはどのような物流テックが適しているのか」などの情報を収集しておきましょう。

参考:Rakuten Drone

採用マーケティングの実施

採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングの手法を取り入れることで、人手不足の解消を目指す取り組みです。

転職希望者だけではなく転職潜在層や退職者、過去の選考参加者にもアプローチして、より多くのターゲットから自社にマッチする人材の獲得を目指す点が特徴的です。また、自社の社員にも積極的に働きかけ、定着率の向上やリファラル採用の活性化を狙います。

人材不足が深刻化するこれからの物流業界では、採用マーケティングの重要性が高まっていきます。今後は給料や待遇だけではなく、企業そのものに魅力を感じてくれる人材を採用することが、安定した企業経営につながっていくでしょう。

シニヤン

労働時間や労働力が不足していくのは間違いないから、それを補うためにIT技術やマーケティングの考え方を取り入れることが重要になっていくかな。

ビギニャー

DX化やマーケティングって、こういう問題の解決にも役立つんですね!ところで先輩、配送料の値上げや配送品質の低下が起きたら、EC事業者は顧客が減っちゃうんじゃないですか?

シニヤン

その可能性は高いね。2024年問題によるダメージを最小限に抑えるには、マーケティング戦略や顧客との向き合い方を見直す必要があるんだ。

2024年問題の影響を受けないEC事業者になるための対策

配送料の値上げや配送オプションの廃止を行っても消費者に選んでもらえるEC事業者となるためには、マーケティング戦略を見直す必要があります。

今、EC事業者が行っておきたい対策は、次の3つです。

  • ファンを育成する
  • CRMに注力する
  • 顧客目線に立つ

各項目について詳しく説明します。

ファンを育成する

こだわりや愛着を持って自社商材を選んでくれるファンが増えれば、配送料や配送オプションに多少の変化があっても、継続利用してもらえる可能性が高まります。ファンは「好きなブランドを広めたい」「協力したい」と思ってくれるので、新規顧客の呼び込みや単価向上などの効果も得られるでしょう。

ファンと協力しながら企業の利益を拡大する戦略を「ファンマーケティング」と呼びます。ファンマーケティングを実施するときは、次のような施策が有効です。

  • SNSにおける交流
  • ファンコミュニティの運営
  • ファンミーティングの開催
  • 会員サービスの提供
  • 体験型イベントの実施
  • リファラル(紹介)プログラムの実施

外的要因に左右されにくいビジネスモデルを構築するためにも、ファンの育成を意識しながらマーケティングを実施しましょう。

CRMに注力する

CRMとは、顧客の情報や行動をデータとして蓄積し、それを活かしながら良好な関係性を構築する取り組みです。例えば、顧客の好みにあった商品を提案したり、サービスを一人ひとりのニーズに応じてカスタマイズしたりする施策が一例として挙げられます。

CRMの実施には、ファンの育成やLTV・ロイヤルティ向上などの効果があります。しっかりと信頼関係を築ければ、多少配送面で不便を感じることがあっても、顧客に選ばれる企業になれるでしょう。

顧客目線に立つ

どのような施策を実施するときでも基本となるのが、顧客目線に立つことです。マーケティングやCRMの実施時はもちろんのこと、商品開発やカスタマーサポートなど、すべてのプロセスで顧客の気持ちを考えながら対応しましょう。

物流の滞りやコストの増加など、2024年問題について考えるときは、ついつい「自社に生じる影響や負担」に目が行きがちです。しかし、影響を受けるのは消費者も同様です。そのことを理解し、顧客の不安や負担を軽減するために何ができるのかをしっかりと考えていきましょう。

シニヤン

顧客目線で価値を提供できれば、「お金」や「便利さ」だけではない判断基準で自社を選んでもらえるようになるんだ。

ビギニャー

たしかに大好きなブランドの商品なら、多少配送に料金や時間がかかっても気にならないですもんね。これからは、2024年問題に負けないサービスの提供やブランディングに力を入れていくぞっ!

シニヤン

おっ、その意気だ。ビジネスだけじゃなくて、プライベートでも物流の負担を軽減するための配慮を忘れないようにしていこうね。

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