トータルエクスペリエンス(TX)とは、「UX・CX・EX・MX」の4つをリンクさせて総合的に取り組み、お客さまや従業員、企業全員に良質な体験を生み出す戦略です。
この記事では、TXの効果や効果的な取り組みの例についてわかりやすく解説します。
近年IT業界でトレンドになっているTXですが、まだまだ意味や重要性は浸透していません。
メリットが豊富なトータルエクスペリエンスを取り入れて、市場での競争優位性を高めていきましょう。
先輩、最近IT業界で「トータルエクスペリエンス」って言葉をよく聞くんですけど、どんな意味なんですか?
おっ、ちゃんとトレンドを勉強していてえらいね。トータルエクスペリエンスは、最近話題になっている戦略なんだよね~。
INDEX
トータルエクスペリエンス(TX)とは?
トータルエクスペリエンス(TX)とは、次の4つをリンクさせ、総合的な体験を向上させるビジネス戦略です。
- ユーザーエクスペリエンス(UX)
- カスタマーエクスペリエンス(CX)
- エンプロイーエクスペリエンス(EX)
- マルチエクスペリエンス(MX)
トータルエクスペリエンスでは、お客さまが得られる体験はもちろん、従業員の体験や現実世界では難しい最先端の技術を活用した体験の満足度を高めることを目指しています。この4つの分野をリンクさせることで、それぞれの体験が相乗効果を生み、個別で取り組むよりも大きな価値が得られるようになるのです。
従来の経営戦略では、顧客の満足度にかかわるUXやCXの向上が重要視されることが多い傾向にありました。そこに従業員の体験(EX)やデジタル体験(MX)を追加し、トレンドを押さえつつ関係者全員の利益を追求している点が、トータルエクスペリエンスの大きな特徴です。
トータルエクスペリエンス(TX)が重要視される理由
近年、トータルエクスペリエンスが重要視されるようになったことには、昨今の情勢が大きく関係しています。企業や従業員、お客さまは直接コミュニケーションを取ることが難しくなり、物理的な距離を取る必要が出てきました。
今までのように対面で仕事をしたり、お客さまに提案したりできなくなったため、「企業と従業員」「企業とお客さま」の関係性を維持することが難しくなりつつあります。
実際、“Gartnerが2021年8月に国内企業に勤める従業員および経営者に対して実施した調査において、自社と他社の競合環境について尋ねたところ、過半数 (53.0%) の回答者が5年前と比べて厳しくなっていると回答しました。一方で、優位になっていると回答した割合はわずか11.0%でした ”※
このような状況のなかでお客さまを獲得するためには、従業員の士気を高めて、より高品質なサービスや革新的な商品を提供することが大切です。
つまり、従業員やお客さま全員が満足できる体験を提供できる企業は、市場で大きな優位性を確立しやすくなります。企業が利益を上げるためには、関係者全体が満足感・利益を得られる仕組みづくりが大切なのです。
たしかに、従業員の満足度とかやる気って、企業の業績と関連が深そうです!みんなが幸せになれる取り組み、なんだか素敵ですね~!
とってもいい考え方だよねぇ。トータルエクスペリエンスに取り組むと、ほかにも企業にとって嬉しいメリットがたくさんあるんだ。
トータルエクスペリエンス(TX)に取り組むメリット・効果
トータルエクスペリエンスに取り組むと、以下の3つのメリットが得られます。
- 商品・サービスの品質が向上する
- 企業全体の成長につながる
- 企業利益やイメージ向上につながる
各項目の詳細を詳しくみていきましょう。
商品・サービスの品質が向上する
今までも、UXやCXを単体で取り組む企業はたくさんありました。しかし、従来行われていた1つの要素に特化する取り組みには、ほかの要素が疎かになってしまうという問題点がありました。たとえば、顧客体験(CX)を向上させる取り組みをすれば、お客さまの満足度は高められます。
しかし、そのぶん従業員の負担は増えることになり、ストレスや疲れを感じた従業員の満足度(EX)は低下するでしょう。その結果、従業員が十分にパフォーマンスを発揮できなくなり、CXが前よりも落ちてしまう可能性があるのです。
トータルエクスペリエンスでは、関係者すべてが利益を得られるように多方面から取り組むので、どこかにしわ寄せがいくことを防げます。結果的に、常に高品質なサービスや商品が提供できるようになり、他社との差別化を図れるのです。
企業全体の成長につながる
トータルエクスペリエンスは従業員のモチベーションアップにつながるため、社内の協力や連携の強化に効果的です。開発やマーケティング、カスタマーサービスなどが一体となれば、今までは独立していたデータやアイデアの連携が可能になります。
新しい施策やアイデアが生まれやすくなり、より企業の利益につながる革新的な取り組みが目指せるでしょう。トータルエクスペリエンスは、長期的な企業成長に欠かせない考え方なのです。
企業利益やイメージ向上につながる
トータルエクスペリエンスに取り組むと、顧客と良好な関係性を構築できるため、企業により多くの利益をもたらす優良顧客を育成しやすくなります。さらに、社内のエンゲージメントも高められるため、従業員のモチベーションや生産性を向上する効果も得られるでしょう。
顧客からも従業員からも信頼されている企業になれれば、求人応募の増加や離職率の低下も実現できます。このような社内外に対する取り組みは、ステークホルダーへの強いアピールになり、企業のブランディングにつながるのです。
ところで、トータルエクスペリエンスを構成する4つの「体験」が、それぞれどんな意味かわかるかな?
え、えっと……。なんだか似たような用語が多くて混乱しています……!
それじゃあ、トータルエクスペリエンスを構成する要素と、効果的な取り組みの例について説明しておくね!
トータルエクスペリエンス(TX)の4つの要素と取り組み事例
トータルエクスペリエンスを構成する4つの要素は、以下のとおりです。
- ユーザーエクスペリエンス(UX)
- カスタマーエクスペリエンス(CX)
- エンプロイーエクスペリエンス(EX)
- マルチエクスペリエンス(MX)
各要素の詳細と具体的な取り組み事例をみていきましょう。
ユーザーエクスペリエンス(UX)とは
ユーザーエクスペリエンス(UX:User Experience)とは、お客さまが商品やサービスの利用を通して得られる体験のことです。「ECサイトの使いやすさ」や「商品の使いやすさ」、「店舗の過ごしやすさ」などがUXの一例として挙げられます。
最近はモノ・サービスの品質・価格差がなくなる「コモディティ化」が進んでいるため、モノだけではなく体験を重要視するお客さまが増えつつあります。
企業は他社と差別化を図るために、UXを高めるための取り組みをする必要があるのです。良質なUXを提供するためには、ユーザー目線で商品やサービスを作ることが重要です。例えば、次のような取り組みがUXを向上させる取り組みとして挙げられます。
- Webサイトの導線を整えて使いやすくする
- 商品を素早く顧客のもとへ届ける
- 見やすいように商品を陳列する
- いつでもカスタマーサービスが受けられる体制を整える
必要な取り組みは、企業が取り扱う商材やターゲット、販売経路などによって異なります。適切なペルソナの設定や市場分析などを行うと、お客さまのニーズを整理しやすくなるでしょう。
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは
カスタマーエクスペリエンス(CX:Customer Experience)とは、商品やサービスを利用したときの顧客体験です。購入前の接客から商品問い合せ、使用感、購入後のアフターサービスなどといったすべての体験が評価対象となります。
「購買行動におけるUXを積み重ねたものがCXになる」と考えておくとわかりやすいでしょう。例えば、どれほど美味しい焼肉屋さんでも、「お店が汚い」「接客対応が悪い」など顧客体験に1つでも欠点があれば、総合的な評価は下がりますよね。
CXを向上させるためには、お客さまが体験するすべてのプロセスでプラスの感情を抱いてもらえるよう、ユーザー目線に立った施策の実践が大切なのです。
そのためCXの向上には、顧客心理や行動の把握が欠かせません。具体的な取り組み事例としては、次のようなものが挙げられます。
- CRMによる顧客データの収集や分析
- カスタマージャーニーの活用
ITシステムやフレームワークを活用して、お客さまとの接点や感情・行動、課題などを細かく分析してみましょう。顧客理解を深められれば、CX向上に必要な改善点を見つけやすくなります。
エンプロイーエクスペリエンス(EX)とは
エンプロイーエクスペリエンス(EX:Employee Experience)とは、労働環境や待遇、キャリア形成など、従業員が体験する仕事に関するあらゆる事柄です。従業員が抱く企業への感情や満足度は、業績に大きく影響します。
不満を抱えている従業員が多ければ、職場の雰囲気が悪くなってパフォーマンスは下がります。反対に従業員の満足度が高ければ、イキイキと前向きに働ける環境になって業績のアップを目指せるでしょう。
お客さまの体験や利益だけではなく従業員も大切にすることで、成長できる企業経営が実現できるのです。EXを高めるための取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
- 従業員サーベイ(アンケート)の実施
- 面談の実施
- 労働時間や作業内容の適正化
- 快適な職場環境の整備
- 公正な人事評価の実施
EXを高める取り組みは定着率や生産性の向上にもつながるため、結果的にCXを大きく向上させることにも役立ちます。
マルチエクスペリエンス(MX)とは
マルチエクスペリエンス(MX:Multi-Experience)とは、さまざまなデバイスやテクノロジーを通して、現実世界では経験できないような体験をすることです。これだけ聞いても、何をすればいいのかをイメージしにくいかもしれません。
具体的には、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を活用した体験、あらゆるデバイスをインターネットに繋いで操作するIoTなどがMXに含まれます。例えば、次のような取り組みがMXの代表例として挙げられます。
- スマートフォンのカメラを通じた「家具配置シミュレーション」
- 画面上で洋服を試着する「バーチャルフィッティング」
- 素早く商品を受け取れる「モバイルオーダー」
MXに取り組めば、チャネルやプラットフォームを超えたシームレスなサービスを提供できるようになり、大幅なCX向上が望めます。近年は、オンラインで顧客に良質な体験を提供することの重要性が高まっているため、トータルエクスペリエンスの要素に組み込まれているのです。
なるほどぉ!取り組むべきことがたくさんあって大変そうですけど、これは確かにメリットが多そう。僕も、さっそくお客さんへ提案する戦略にトータルエクスペリエンスを取り入れてみたいですっ!
でしょでしょ?それなら、トータルエクスペリエンスに取り組むときのコツもみておく?
はいっ!ぜひ教えてください!
トータルエクスペリエンス(TX)に取り組むときのコツ
トータルエクスペリエンスに取り組むときは、以下の3点を意識すると成果を得られやすくなります。
- ITツールを活用する
- 4つの要素をバランスよく取り組む
- KGI・KPIを設定しておく
詳しくみてみましょう。
ITツールを活用する
トータルエクスペリエンスに取り組む際は、ITツールの活用が欠かせません。例えば、CRMやMAツール、SFAなどのツールは良質な顧客体験の提供をサポートしてくれます。
また、テレワークなど働き方が多様化している現代。従業員が快適に仕事をするためには、どこからでも効率的に仕事ができる業務システムの導入が不可欠です。
MXの実施にも、ITやデジタル技術を用いた知識・ツールは必要でしょう。ITツールの活用は、従業員と顧客の双方に多くのメリットをもたらします。
トータルエクスペリエンスに取り組むなかでITツールを取り入れていけば、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革する「DX化」も実現できるでしょう。そうすれば、企業はより競争優位性を確立できるようになります。
4つの要素をバランスよく取り組む
トータルエクスペリエンスに取り組むときは、4つの要素のバランスを意識することが肝心です。UXやCX、MXに偏ればEXが低下してしまいますし、EXだけを極端に重視すればUXやCXを向上させることは難しくなります。
ITツールで業務を自動化することで従業員の負担を減らしつつ、各要素を向上させる施策を考えることが大切です。
KGI・KPIを設定しておく
4つの要素に対してバランスよく取り組むためには、客観的に成果を把握するための指標が必要となります。全体のバランスが取れているかを確認するためにも、最終目標(KGI)と中間目標(KPI)を設定しておきましょう。
KGIとKPIを設定するときは、定量的に判断できる目標にすることが大切です。「何をもって成功とするのか」についての共通認識をもっておくと、各要素への取り組みを計画的に進められるようになります。
先輩、ありがとうございます!さっそく、僕もトータルエクスペリエンス戦略を活用していこうと思います!
ぜひぜひ。役に立ったみたいでよかったよ。またわからないことがあったら何でも質問してね!
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WRITING 執筆
LIFT編集部
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