メールマーケティングにおいて、テキストメールとHTMLメールのどちらがより効果的かは、よく議論されるテーマです。視覚的に魅力的なHTMLメールは一見優れているように思えますが、実際のユーザーの行動データやエンゲージメントの深さを考慮すると、テキストメールにも強みがあることがわかります。
本記事では、実際のデータを用いて、テキストメールとHTMLメールの開封率、エンゲージメント率、セッション時間などのパフォーマンスを徹底的に比較します。どちらの形式がユーザーの深い関与を促し、どちらが即時的な行動を引き起こすのに最適かを解説し、最も効果的なメール戦略を導き出すためのヒントを提供します。メール形式の使い分けを最適化し、メールマーケティング効果を最大化する方法をGoogle Analytics 4(以下、GA4と記載)とMicrosoft Clarity(以下、クラリティと記載)を駆使して深掘りしていきます。
調査概要
・送信時間
2024年10月7日 10:30
・送信対象
弊社メールマガジン登録者をランダムに5000ずつに分けて送信。
・タイトル
どちらのメールも「【マーケ担当者必見】Web広告12種類と、その特徴をまるごと解説!」という同一タイトル。
・計測期間
2024年10月7日~10月14日
送信結果
テキストメール | HTMLメール | |
タイトル | 【マーケ担当者必見】Web広告12種類と、その特徴をまるごと解説! | 【マーケ担当者必見】Web広告12種類と、その特徴をまるごと解説! |
開封率 | 29% | 28% |
CTAクリック数 | 26 | 33 |
エンゲージメント率 | 50% | 30.30% |
平均セッション継続時間 | 5分19秒 | 1分42秒 |
開封率(MAツール計測)の考察
開封率はほぼ同等です。テキストメールがわずかに高いですが、差は1%と小さいため、誤差の範囲だと考えます。
CTAクリック数(記事を見るボタン GA4計測)の考察
HTMLメールは、ビジュアルが豊富なことから、受信者の興味を引き、クリックを促す効果があると考えられます。CTAのクリック数が多いことは、HTMLメールのデザインがユーザーの行動を促進していることを示唆します。
なお、クリック先にURLは以下の記事です。
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エンゲージメント率(GA4計測)の考察
テキストメールのエンゲージメント率はHTMLメールよりもはるかに高く、読者がコンテンツに対してより深い関心を持っていることを示しています。HTMLメールは視覚的に訴える要素が多いため、クリックは促進するものの、読者がコンテンツに深く関与するには至っていない可能性があります。
平均セッション継続時間(GA4計測)の考察
テキストメールの平均セッション継続時間が大幅に長いことから、テキストメールの読者はコンテンツをじっくり読む傾向があることが分かります。逆に、HTMLメールの視覚的なデザインは短時間で理解され、すぐにページを離れる傾向が強いと考えられます。
スクロール率(クラリティ計測)
HTMLメール
スクロール率 | 訪問者数 | 残存率 |
5 | 7 | 43.75% |
10 | 7 | 43.75% |
15 | 7 | 43.75% |
20 | 7 | 43.75% |
25 | 7 | 43.75% |
30 | 7 | 43.75% |
35 | 7 | 43.75% |
40 | 7 | 43.75% |
45 | 7 | 43.75% |
50 | 7 | 43.75% |
55 | 7 | 43.75% |
60 | 7 | 43.75% |
65 | 4 | 25% |
70 | 3 | 18.75% |
75 | 3 | 18.75% |
80 | 3 | 18.75% |
85 | 3 | 18.75% |
90 | 3 | 18.75% |
95 | 1 | 6.25% |
100 | 0 | 0 |
テキストメール
スクロール率 | 訪問者数 | 残存率 |
5 | 8 | 80% |
10 | 7 | 70% |
15 | 5 | 50% |
20 | 4 | 40% |
25 | 4 | 40% |
30 | 4 | 40% |
35 | 4 | 40% |
40 | 4 | 40% |
45 | 4 | 40% |
50 | 4 | 40% |
55 | 4 | 40% |
60 | 4 | 40% |
65 | 4 | 40% |
70 | 4 | 40% |
75 | 4 | 40% |
80 | 4 | 40% |
85 | 4 | 40% |
90 | 3 | 30% |
95 | 0 | 0 |
100 | 0 | 0 |
スクロール率では、テキストメールの方がパフォーマンスが高い結果となっています。これは、テキスト中心のメールがユーザーにコンテンツを最後まで読むよう促していることを示唆します。
一方、HTMLメールはデザインに重きを置いているため、ページの下部までスクロールされにくいことが分かります。残存率においてもテキストメールが優れており、読者がページに留まりやすい傾向が確認できます。HTMLメールはビジュアルがメインのため、読者が短時間でページを離れる傾向があります。
セッションレコードデータ(テキストメール)
セッションレコードデータ(HTMLメール)
テキストメールのセッションレコードデータからは、ユーザーがページを熟読し、より深く関与していることがわかります。
対照的に、HTMLメールはビジュアル要素によってクリックは促進するものの、深い関与や熟読にはつながりにくいことがわかります。このため、テキストメールは、特にユーザーにしっかりとコンテンツを読んでもらいたい場合に効果的な手段であると考えます。
調査結果からのデータ分析についてのまとめ
今回のデータ分析から、テキストメールとHTMLメールにはそれぞれ異なる特長があることが明らかになりました。これを踏まえ、メールマーケティングに取り組む際には、目的に応じてメール形式を適切に選ぶことが重要です。
まず、テキストメールは、ユーザーがコンテンツを深く読み込む傾向があり、セッション時間やエンゲージメント率が高い結果を示しています。そのため、ユーザーに詳細な情報を提供したり、ブランドや製品に対する長期的な関与を促したい場合には、テキストメールが効果的です。専門的な情報をじっくりと読んでもらいたい場合には、テキスト形式を活用することで、ユーザーがコンテンツに集中しやすくなります。
一方で、HTMLメールは、視覚的に魅力的なデザインが特徴で、クリック数が多いことから、短期間での行動を促すキャンペーンやプロモーションに適しています。特に、新商品のお知らせや限定セール、キャンペーン告知など、ユーザーに即座にアクションを促すメールには、HTMLメールが有効です。ただし、読み込み速度が遅くなりがちなので、画像の最適化やページ読み込み時間の改善が必要です。
また、エンゲージメント率を考慮すると、単にクリック数を増やすことだけでなく、その後のユーザーの行動にも注目すべきです。テキストメールでは、クリック後のセッション時間が長く、ユーザーがじっくりとコンテンツを読み込むことがわかります。したがって、ユーザーとの信頼関係を築くためには、テキストメールを通じて、価値のある情報を提供し、コンテンツに深く関与させることが大切です。
最終的に、メールの目的に応じたバランスの取れた戦略を採用することが、メールマーケティングの成功につながります。プロモーションやキャンペーンではHTMLメールを、情報提供や関与を深める際にはテキストメールを活用し、目的に応じたメール形式を柔軟に選択することが効果的です。
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WRITING 執筆
藤原 洋平
Google、Yahoo! JAPANを中心としたリスティング広告、Facebook、instagram、X(旧Twitter)、LINEを中心としたSNS広告、アフィリエイト広告、インフルエンサーキャスティングなど、webマーケティング全般を手掛ける。
これまで数多くのセミナー・ウェビナーに登壇。書籍「BtoBマーケティングの基本 IT化のインパクトを理解する12 の視点」(日経BP)を執筆。