近年、多くの企業でカスタマーサクセス、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、CX(カスタマーエクスペリエンス)デザインに関する部門が設立されています。この流れから、顧客との関係構築やエンゲージメント強化が注目されていることが読み取れます。
株式会社ゴンドラは、カスタマーサクセス、CRM、CXデザイン業務経験者118名を対象に、顧客エンゲージメントに関するアンケート調査を実施しました。
今回のアンケート調査では、これらの部門の設立年数や課題、活用されているツールやタッチポイントなどの実態が明らかになりました。
INDEX目次
多くの企業が比較的長期的にCRMやカスタマーサクセスに投資

自社のCXデザイン/カスタマーサクセス部門の設立年数の調査に対する結果では、「1年未満」と回答した企業が5.9%と少なく、「3年未満」が23.7%、「5年未満」が20.3%を占めています。一方で、「10年以上」の運用経験を持つ企業が31.4%と最も多い数値を示しました。
この結果から、多くの企業が比較的長期的にCRMやカスタマーサクセスに投資していることが読み取れます。また、「1年未満」の企業が少ない点は、CRMの導入が短期的なトレンドではなく、長期的な取り組みとして定着していることを示しています。
半数以上の企業がSalesforceを利用

顧客エンゲージメント強化を目的としたツールに関する調査では、最も利用されていたのがSalesforce(55.1%)でした。
次いでZendesk(15.3%)、Intercom(9.3%)、HubSpot(8.5%)、Gainsight(5.9%)と続いています。
Salesforceの高いシェア率から見える「統合管理」の重要性
Salesforceが半数以上の企業に選ばれている要因としては、「高度なカスタマイズ性」と「営業・マーケティング・サポートの統合管理」が可能な点が考えられます。複数部門にまたがった顧客データを一元管理して、シームレスな顧客体験を提供できる点が、特に大企業で評価されているのでしょう。
この結果から、企業が顧客エンゲージメント向上に取り組むうえで、データの統合管理や業務間連携を重要視していることが推察されます。
リアルタイム対応へのニーズは高いが、LTV重視の企業はまだ少数
ZendeskやIntercomは、顧客サポートやリアルタイムでのコミュニケーションを得意とするツールです。このようなツールが一定のシェアを誇っていることから、顧客とのリアルタイムな対話を通じてエンゲージメントを深める戦略が、現在多くの企業で採用されていることが読み取れます。
同時に、顧客生涯価値(LTV)の向上を主軸としたツールである「Gainsight」の利用率が低いこともわかりました。企業全体の戦略としてLTV重視のアプローチを取る企業は、まだ限定的だといえるでしょう。
エンゲージメント強化における主要チャネルはメールが最多

顧客とのエンゲージメントを強化するために主に利用しているタッチポイントの調査に対する結果では、「メール」が64.4%で最も利用されていることがわかりました。
次いで「直接会話(電話、ビデオチャットなど)」が46.6%、「LINE」が22.0%、「Instagram」が19.5%と続いています。
費用対効果の高いメールと、信頼構築に有効な電話の併用が中心
メールは費用対効果が高く、個別の状況に応じたパーソナライズも行いやすいため、エンゲージメント強化の主要なチャネルとして広く採用されています。
一方、電話やビデオチャットなどの直接的コミュニケーションは、顧客との信頼関係の構築に強みを持っています。このことから、重要な意思決定を伴うBtoBビジネスや高額商品の販売において重視されているようです。
長期的かつ効率的なエンゲージメント向上の成功には、CRMを活用して顧客のデータを一元管理し、「メール×電話」の施策を組み合わせることが大切です。
SNSは限定的だが、ターゲット次第では重要性が高まる
LINEやInstagramなどのSNSチャネルも、一部の企業で積極的に活用されていることがわかりました。SNSは、リアルタイムかつ視覚的なアプローチには適しているものの、複雑な顧客課題への対応や、深い関係性構築においては限界があります。
ただし、BtoC企業や若年層をターゲットとしたカジュアルなコミュニケーションにおいては有効性が高いため、今後さらに活用が広がる可能性は十分に考えられます。チャネルの使い分けが、エンゲージメント強化の重要なポイントとなるでしょう。
7割弱の企業に専任チームが存在

自社のCXデザイン/カスタマーサクセス部門の運営体制の調査に対する結果では、専任チームが存在する企業が66.9%と多数を占めています。
その一方で、28.0%の企業が他部門と兼任し、11.0%が外注している現状が見られました。
ツール導入だけでは解決しない「リソース・知識不足」の課題
専任チームを持つ企業が多いことは、カスタマーサクセスを重視する企業が多いことの証拠となります。しかし、その運営には一定の専門知識とリソースが求められるため、課題を抱えている企業は決して少なくありません。
たとえば、Salesforceのような高度なCRMツールは、導入後の継続的な最適化や改善が不可欠です。特に、他部門と兼任している企業の場合、リソースやノウハウが不足することにより、ツールの機能を十分に活用できていない可能性が考えられます。
運用リソース不足なら外注も選択肢に
現状では、CXデザイン/カスタマーサクセス部門の業務を外注している企業は少数派です。しかし、リソース・ノウハウ不足を課題に感じている場合は、外部のサポートを受けることで、Salesforceのような高度なツールを最大限に活かす戦略も一考に値します。
自社の状況に応じて最適な運用体制を見極め、CRMやエンゲージメント施策の効果を最大化することが重要です。
半数以上の企業が顧客エンゲージメントの向上を課題視

調査によると、企業がCXデザインやカスタマーサクセスで抱える主な課題として、「顧客エンゲージメントの向上」(54.2%)が最多でした。
続いて「データ管理の一貫性と正確性」(33.1%)、「タッチポイントの最適化」(24.6%)が挙げられています。
課題解決には「データの統合」と「タッチポイントの最適化」が鍵に
33.1%の企業が、「データ管理の一貫性と正確性」を課題として挙げています。
顧客エンゲージメントの向上には、パーソナライズされたコミュニケーションや適切なタイミングでのアプローチが不可欠です。しかし、データ管理に課題がある場合は、顧客対応の一貫性が失われ、エンゲージメント強化が難しくなります。
また、顧客との接点が多様化するなかでは、「どのチャネルで・どのように顧客にアプローチするか」といったタッチポイントの最適化も重要な課題となります。これらの課題を解決するには、複数のチャネルやツールで収集したデータを統合し、一貫性のあるデータ基盤を構築することが重要です。
顧客エンゲージメント強化に最も効果的な取り組みは「パーソナライズされたコミュニケーション」

顧客エンゲージメント強化に効果的な取り組みとして最も多くの企業が挙げたのは、「パーソナライズされたコミュニケーション」(51.7%)でした。また、「顧客の声を反映するフィードバックループの強化」(39.0%)や「マルチチャネルの活用」(38.1%)も、多くの企業で効果的と評価されています。
パーソナライズされたコミュニケーションが特に評価されていることから、顧客一人ひとりの状況やニーズに応じた対応がエンゲージメントの向上に直結すると考えられます。加えて、顧客のフィードバックを反映した迅速な対応や、マルチチャネル施策を統合的に取り入れることで、いっそうの顧客満足度の向上と長期的な関係構築が期待できるでしょう。
顧客の声を反映しつつ、パーソナライズされた対応を通じて多角的なチャネルでコミュニケーションを行うことが、今後のエンゲージメント戦略の柱となると考えられます。
調査結果についてのまとめ
今回の調査を通じて、企業が抱える顧客エンゲージメントの課題や運営上の課題が浮き彫りになりました。特に、多くの企業で「顧客エンゲージメント向上」「データの統合管理」「タッチポイントの最適化」が共通の課題として挙げられています。
高度なCRMツールを導入している企業が多いものの、運用体制の未整備やリソース不足により、ツールのポテンシャルを十分に活かしきれていないケースも目立ちます。
ツールの導入だけに頼らず、自社の状況に合わせた適切な運用体制を整えることが、エンゲージメント戦略を成功させるための重要なポイントとなるでしょう。
調査結果に対する株式会社ゴンドラ シニアコンサルタント 藤原洋平からのコメント
リソースや専門知識が不足した状態でCRMツールの運用を続けると、データ管理の一貫性やタッチポイントの最適化が十分にできなくなるリスクが高まります。その結果として、顧客エンゲージメント向上の施策が思うような成果につながらない可能性があります。
このような状況を改善するためには、CRM運用を専門家に委託することが効果的です。外部の支援を活用することで、CRMツールの最大限のパフォーマンスを引き出し、顧客エンゲージメントの向上およびLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現できるでしょう。
CRM活用やCXデザインの改善のご検討や現状の施策に懸念をお持ちの方へ
ゴンドラでは、膨大な顧客情報のデータクレンジング、統合、分析、活用までをワンストップでサポートしています。潜在顧客、見込み顧客、優良顧客から休眠顧客まで、あらゆる顧客層を可視化し、それぞれの顧客ニーズを明確化します。
また、CRMデータを徹底的に活用し、顧客ごとに最適なコミュニケーションを設計。「誰に」「何を」「いつ」「どこで」を見極め、タッチポイントをまたいだコミュニケーション施策を展開することで、効率的に顧客エンゲージメントを向上させます。
Web広告からCRM運用まで、あらゆる分野のスペシャリストが、お客様と同じゴールを目指して伴走いたします。CRM活用やCXデザインの改善に関して課題や懸念をお持ちの方は、ぜひゴンドラへお気軽にご相談ください。
調査概要
調査実施会社:株式会社ゴンドラ
実施期間:2024年9月10日~2024年9月17日
対象:全国のカスタマーサクセス、CRM、CXデザイン業務経験がある20歳以上の男女
有効回答数:118
調査方法:インターネット調査
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WRITING 執筆

藤原 洋平
Google、Yahoo! JAPANを中心としたリスティング広告、Facebook、instagram、X(旧Twitter)、LINEを中心としたSNS広告、アフィリエイト広告、インフルエンサーキャスティングなど、webマーケティング全般を手掛ける。
これまで数多くのセミナー・ウェビナーに登壇。書籍「BtoBマーケティングの基本 IT化のインパクトを理解する12 の視点」(日経BP)を執筆。