顧客関係をより良好に構築していきたいと考えるマーケターにとって、CRMやメール配信システムの導入は非常に有効な手段です。
システムの効果を最大化するためには、それぞれの機能の違いやメリットをしっかりと理解したうえで、自社に適しているシステムを導入することが大切です。
本記事では、CRMとメール配信システムの違いを解説します。
シニヤン先輩!来月からステップメール施策をやってみようと思っているんですけど、どのシステムを使って配信するか迷っているんです~!アドバイスをください!
そうだなあ、僕的にはCRMの中から選べばいいと思っているんだけど……。あ、CRMとメール配信システムどっちがいいとか希望ある?予算とかもあると思うし。
うーん、今のところ、全然わからなくて……。CRMとメール配信システムって何が違うんでしょうか?
CRMとメール配信システムの違いは?
CRMとメール配信システムの違いは、主体が「顧客管理」にあるのか、「メールマーケティング」にあるのかという点です。CRMは「顧客管理」に、メール配信システムは「メールマーケティング」を重視したシステムとなっています。
また、CRMは「包括型」のシステムです。顧客管理を細かく行いつつ、メール配信なども含め、マーケティングに必要な幅広い施策に対応しています。さまざまな機能において一定基準のパフォーマンスが期待できる、非常に高機能なシステムであるといえるでしょう。
一方、メール配信システムは「特化型」です。顧客管理も可能ではありますが、その機能は非常にシンプルなので、物足りなく感じることもあるでしょう。
しかし、メール配信機能は非常に優れており、高い効果を発揮します。メール配信システムは限定的な機能に特化しているため、高いパフォーマンスを低コストで実現可能です。
なるほど……!「メールに強い」って聞くとメール配信システムを選びたくなる気もしますけど、メールを配信するには結局、顧客管理も必要ではあるわけで……。そうなるとCRMが強いのかな?あれ、わかんなくなってきたぞ、むむむ……。
あはは、なんだか余計迷わせちゃったね。どっちを選んでどんなツールを使うのかは、自分の「今の状況」や「優先したいこと」を基準にして選べばいいんだよ。
CRMとメール配信システム、どっちを使うべき?
ステップメールの配信に、CRM・メール配信システムどちらを使うのかは、社内の状況や予算、目的から決めていくとよいでしょう。CRMとメール配信システムで適しているケースをみていきましょう。
CRMが向いているケース
次のような方には、CRMが適しています。
- ひとつのシステムで、顧客管理からメール送信まで包括的に対応したい
- Web上の行動履歴など細かな情報まで把握、管理したい
- 顧客情報を部門間で共有したい
CRMを導入するときは、初期設定の工数や金銭的コストが多くかかるでしょう。しかし、マーケティングに役立つ機能が豊富なので、一度導入すれば長く高い効果を発揮します。メール配信に限らず、さまざまなマーケティング施策で一定のパフォーマンスを実現したい場合は、CRMがおすすめです。
メール配信システムが向いているケース
次のような方には、メール配信システムがおすすめです。
- 高度なメール配信の機能を使いたい
- 最低限の顧客データ管理ができればいい
- できるだけコストを抑えたい
せっかく高機能なCRMを導入しても、オーバースペックになってしまったらもったいないですよね。コストを抑えつつメール配信に力を入れたいときは、メール配信システムを選ぶとよいでしょう。
予算や人的リソースなどに問題がないのであれば、「最初にCRMを導入して、データを使いこなせるようになったらメール配信システムも導入する」という選択肢もあります。
包括的に優れた機能を持つCRMに対して、メール配信システムで部分的機能の強化を行うと、より高度なメール配信が可能です。各システムの良さが最大限引き出され、顧客関係の強化をより加速させられるでしょう。
僕は、ゆくゆくのことまで考えてCRMにすることが多いかなあ。予算にもよるけど。あとで「両方使いたい」ってなったとき、CRMのあとにメール配信システムを導入したほうがいろいろと楽だからね。
なるほどぉ。先輩、よく考えてみたら僕、CRMとメール配信システムについてそんなに詳しくないんですよね。それぞれについて、もっと詳しく教えてもらえませんか?
あれ?詳しく教えていなかったっけ?ごめんごめん。
CRMとは?
CRMとは、顧客満足度を向上させるためのさまざまな機能を包括的に備えたシステムです。また、顧客を中心に考えたビジネス展開を行うことで、効率的に利益を向上させるマネジメント手法をCRMということもあります。ここでは、CRMの機能とメリットを学んでみましょう。
CRMの機能
CRMは、マーケティングに必要な顧客管理の機能を包括的に搭載しています。製品によって異なりますが、使える機能としては次のようなものが挙げられます。
顧客のデータ管理
CRMのメイン機能は、顧客データの管理です。顧客の氏名や性別などの属性情報はもちろん、購入商品、お問い合わせ履歴などをシステム上に蓄積して管理できます。属性ごとに顧客を分類したり、お問い合わせ履歴を見ながらクレーム対応をしたりすることも可能です。
顧客分析
CRMは、顧客情報を管理するだけではなく分析することも可能です。また、分析結果をレポートとして出力する機能も搭載されています。
「この属性の顧客は商品Aを好む」「この顧客にはこのアプローチが有効」などの分析結果が、自動的に取得可能です。効率的に精度の高い判断が下せるようになるでしょう。
会員サービスの提供
CRMでは、会員サービスの提供も可能です。会員登録フォームやマイページの作成、プラットフォームの構築、各会員に適した情報提供などを行えます。
CRMに蓄積した情報をもとに会員サービスを提供するため、一人ひとりに合った最適な施策が実施可能です。再訪率や定期購入、年間利用回数の増加を促し、LTV(Life Time Value)の最大化を目指せるでしょう。
マーケティング支援
CRMは、マーケティング支援機能も豊富です。ECサイトやカスタマーサポートなどの複数チャネル(経路)から集めた顧客情報を統合・分析することで、さまざまな施策に活かせるでしょう。
たとえば、CRMの情報をもとに会員ランクを設定したり、契約確度をスコア化したりできます。また、会員ごとに適したクーポンやおすすめ商品の情報の配信、お誕生日クーポンの送付などの施策も可能です。一人ひとりに適した内容のメールマガジンの送信にも対応しています。
このようなマーケティング施策を、人の力だけで行うことは難しいものです。企業の財産ともいえる顧客情報を有効活用してマーケティングに活かすためには、CRMの活用が欠かせません。
カスタマーサポート
CRMでは、満足度の高いカスタマーサポートの実現も支援してくれます。商品購入や購入後のカスタマーサポートにおいては、対応のスピーディーさが満足度に直結するといっても過言ではありません。
CRMでお客さま情報や購入商品、お問い合わせ履歴を確認しながら顧客対応ができれば、高品質かつ素早いカスタマーサポートが行えます。
また、お問い合わせ情報を蓄積して情報が溜まっていけば、最適な解決策を最短で見つけられるようになるでしょう。CRMを活用すればするほど、カスタマーサポートの顧客満足度を高められるというメリットがあります。
CRMのメリット
CRMを導入すると、次のようなメリットが得られます。
マーケティングを効率化できる
CRMの導入によって、マーケティング業務の大幅な効率化が目指せます。顧客の分類やメールマガジン送信などの業務を自動化することにより、少ない手間・リソースで効果の高い施策を打ち出せます。
さらに、データを一元管理することで情報共有を効率化できる点も大きなメリットです。属性データや今までのサポート履歴を即座に確認できるため、業務の属人化を防いでより高品質なサービスの提供を目指せます。
顧客の満足度向上につながる
CRMがあれば顧客情報が可視化されます。一人ひとりの思考や傾向がわかるようになるため、従来よりも的確なサービスの提供を目指せるでしょう。顧客情報の可視化は企業側にメリットをもたらしてくれるだけではなく、顧客の満足度向上にも一役買ってくれます。
「自分の好みをわかってくれている」「話がすぐに通じてありがたい」など、自社をまた利用したいと思わせるマーケティングを実現しやすくなるでしょう。
経営戦略に活かせる
CRMに蓄積される情報はさまざまです。お客さまの好みや購入履歴はもちろん、ときにはクレームや失注の履歴が蓄積されることもあります。
このような情報は、企業にとって重要な資産となってくれます。顧客情報やクレーム、失注の情報を分析すれば、今後の経営戦略に活かせる学びを得られるでしょう。マーケティングや営業部門だけではなく、経営層にとってもCRMは重要な意味を持っているのです。
……とまあ、CRMは顧客管理主体のシステムなわけだね。対して、メール配信システムは……。
メール配信システムとは?
メール配信システムは、メールマーケティングに特化した機能をもつシステムです。多数の顧客に対して一斉にメールを配信する機能が備わっており、おもにメールマガジンや営業メール、お知らせメールなどを送るために使われます。ここでは、メール配信システムの機能やメリットを詳しくみてみましょう。
メール配信システムの機能
メール配信システムの代表的な機能は、次のとおりです。
メールマガジンの配信
メール配信システムのメイン機能は、文字通りメールマガジンの配信です。顧客に対して一斉配信をするのはもちろん、属性ごとにリストを作成して限定的に配信したり、リストごとに内容を変えて配信したりできます。
また、メールを送信するためには顧客リストの管理も必要になってくるため、一部の顧客管理機能も備わっています。適切に使えば高度なパーソナライズ配信などもできる、メール配信機能に特化したシステムです。
ステップメールの配信
ステップメールとは、各顧客の状態に合わせてメールを配信する手法です。「メルマガ登録ありがとうメール」「商品発送メール」「アフターフォローのメール」などを一人ひとりに送信可能です。ステップメールで顧客に適したアプローチができれば、良好な関係性の構築やファン化が目指せます。
効果測定
メール配信システムでは、メールマーケティングの効果測定も行えます。メールの開封率やリンクのクリック率を計測し、次回の施策に役立てられます。
Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールと連携すれば、リンクをクリックした後の行動も詳しく把握可能です。ただし、効果測定ができるのはHTMLメールのみである点に注意しましょう。
メール配信システムのメリット
メール配信システムを導入すると、次のようなメリットが得られます。
メール配信業務を効率化できる
メール配信システムを導入すれば、メールマーケティング業務を効率化できます。大量配信や一斉配信、メルマガの作成、ステップメールの配信が簡単に行えるようになるため、メール配信業務に関連する手間を大幅に削減できるでしょう。
また、システムを通して作業することで、送信先のミスや送信漏れなどのヒューマンエラーを防げます。メール配信のために時間や労力を無駄にすることを防げるので、他のマーケティング業務にリソースを割けるようになるでしょう。
PDCAサイクルを回せる
メール配信システムには効果測定機能が搭載されているため、PDCAサイクルを回せるというメリットもあります。メールマガジンを配信する際、開封率やクリック率は非常に重要な指標です。
効果測定をしながらタイトルやデザイン、内容を調整して改善していけば、より効果的なメールマーケティングにつなげられます。メール配信システムの効果を最大化するためにも、導入時は必ず効果測定と改善をセットで行いましょう。
CRMとメール配信システム、どっちにもメリットがあるんですね!こりゃ、いよいよどっちにするか決められなくなってきました……。
そうだね。だからこそ、最初に説明したように自社の目的に合わせて選ぶことが大切なんだよ。
そうだ。最近は、メール配信にCRMを活用する考え方も重要になってきているんだ。
メール配信にCRMを活用する事例
CRMとメール配信システムは、どちらにも捨てがたいメリットがあります。そのため、どちらかひとつを選ぶのではなく、一緒に活用するCRMメールというのもひとつの選択肢です。CRMメールの事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- フォローメールに活用する
- ステップメールに活用する
- メール以外の施策に活用する
各施策を詳しくみてみましょう。
フォローメールに活用する
CRMメールの活用シーンとしておすすめなのが、フォローメールです。CRMに蓄積された顧客情報を活用し、「誰が・いつ・何を購入したのか」を分析してみましょう。次のように、一人ひとりの状況に応じたフォローが行えるようになります。
- 購入直後:お礼メールの送信
- 購入2週間後:使用感のお伺いと活用法の紹介
- 購入3か月後:メンテナンスのご案内
- 購入6か月後:消耗品のクーポン配布
- 購入1年後:1年点検のご案内
顧客が「今求めている」アプローチを行えば、「メールが有益だ」と思ってもらえて開封率が上がる可能性があります。メールを一斉配信するよりも費用を抑えられますし、マーケティング効果も大幅にアップできるおすすめの活用事例です。
ステップメールに活用する
ステップメールにCRMを活用するのも、CRMとメール配信をかけ合わせるおすすめの活用法です。たとえば、会員登録後、ECサイトへの訪問状況や閲覧商品の履歴、興味関心に合わせて継続的かつ段階的にメールを配信します。顧客に忘れられることを防ぎ、継続的な利用を促せるようになります。
さらに、定期的に接点を持ってアプローチすれば、親近感を抱かせたりファン化を促したりする効果を得ることも可能です。
メール以外の施策に活用する
CRMやメール配信システムに蓄積した情報は、メール配信以外にも活用できます。
「メールを開封した顧客に絞ってアプローチする」「メールを開封しない顧客には他の手法で訴求する」など、顧客の今までの行動に合わせてアプローチ方法を変えてみましょう。顧客ごとに最適なアプローチ方法や内容を把握できるようになります。
CRMやメール配信システムに蓄積されたデータは、マーケティング施策実施時に幅広く使える大切な「財産」です。ぜひメール配信にとどまらず、さまざまなシーンで活用してみてくださいね。
先輩、ありがとうございます!どちらを導入するか決められました!
おっ、それはよかった。またわからないことがあったら遠慮なく聞いてね。
CONTACT お問い合わせ
WRITING 執筆
LIFT編集部
LIFT編集部は、お客様との深いつながりを築くための実践的なカスタマーエンゲージメントのヒントをお届けしています。