企業がお客さまと信頼関係を築くためにコミュニケーションを取る際は、さまざまなツールや手法を活用できます。
顧客とのコミュニケーションは情報伝達だけでなく、ニーズの把握やCRMを実行するうえでとても大切な取り組みです。
この記事では、コミュニケーションツールごとの特徴や戦略のポイント、施策の事例を紹介します。
この前クライアント企業から「顧客との関係性や信頼関係を強化する方法」を相談されたんですが、思いつかなくて。先輩、何かいい方法はないですか……?
それなら、コミュニケーションツールを工夫してみるのはどうかな?コミュニケーションツールにはさまざまなものがあるから、少し変えるだけで顧客との関係性にいい影響を与えられるんだ。
コミュニケーションツールって、そんなにたくさんの種類があるんですか?
INDEX
顧客とのコミュニケーションツール一覧
企業がお客さまとコミュニケーションを取るときに活用できるツールは、私たちがいつも使っている連絡ツールよりもたくさんあります。ここでは、代表的なコミュニケーションツールの種類と特徴を簡単に紹介します。
- 紙DM
- 電話
- SMS
- Eメール
- LINE
- アプリプッシュ
- ブラウザプッシュ
- チャットボット
- ビデオチャット(New)
それぞれのツールを詳しく解説します。
紙DM
紙DMは、その名の通りメッセージや商品カタログなどを封筒に入れて紙媒体で送るダイレクトメールを指します。サンプルを同封できたりカタログが手元に残ったりするので、情報と体験の両方を届けられる点がメリットです。
制作費や送料がかかってしまいますが、メールの開封率が低い顧客や休眠顧客、デジタル機器が苦手なシニア層へのアプローチに効果的です。
電話
電話は、番号さえわかればすぐに直接話せる点がメリットのツールです。提供できる情報は音声だけになってしまいますが、アプリをインストールしたり難しい操作をしたりする必要がない点が魅力です。
電話であれば、どのような年齢層のターゲットにもアプローチしやすいでしょう。なお、電話は営業のためだけではなく、以下の目的で活用されることもあります。
- コールセンターでの事務手続き
- お問い合わせ対応
- アフターフォロー
など
上記のように、お客さまから電話をもらうことを「インバウンド」と呼びます。インバウンドでのコミュニケーションにも力を入れれば、顧客満足度の向上やリピートの促進を目指せるでしょう。
SMS
SMSは、相手の電話番号がわかっていればメッセージが送信できるサービスです。SMSを送信すると画面上に受信通知が表示されるため、メールと比べると気づいてもらえやすく、開封率も高いというメリットがあります。
文字数制限はありますが、すぐに情報を届けて確実に見てもらいたいときは非常に便利です。
Eメール
メールは、文章だけではなく画像でも情報を提供できる点が強みのツールです。やり取りの内容を検索・確認しやすいので、しっかりと履歴を残したいときにおすすめです。
定期購入を促すフォローメールや新商品・セールの案内、定期配信のメルマガ、クーポンの配信など、活用方法は無数に考えられます。
ただし、すぐに開封してもらえなかったり、そもそも目を通してもらえなかったりすることもあるため注意しましょう。
LINE
SNSのひとつであるLINEは、友だち追加とブロック機能を使って希望する情報をピンポイントで受け取れる点が強みのコミュニケーションツールです。チャット形式でお互いが気軽にやりとりできるため、顧客からの返信率は高くなりやすいでしょう。
ただし、以下のような弱点もあります。
- 友だちを集めるための工夫が必要
- 長文のテキストは読まれにくい
- メールほど細かくターゲットを絞って配信できない
LINEは、目的やターゲットに合わせてメールと使い分けることが大切です。
アプリプッシュ
アプリプッシュとは、スマートフォンにインストールしているアプリから、自動的に音や表示で情報を通知する機能です。
セールの情報やクーポン情報などを配信して売上の向上を狙ったり、アプリへの関心を高めたりするために使用されます。アプリプッシュを表示させれば、継続的なサービスへの誘導が期待できます。
ブラウザプッシュ
ブラウザプッシュとは、通知を許可したお客さまに対してWebブラウザ経由でプッシュ通知を送信することです。配信単価が安いうえに、アプリをダウンロードしていない顧客にも通知を表示でき、コンバージョンの増加やWeb接客のフォローができる点がメリットです。
ただし、表示できる情報に限りがあるため、広告としての訴求力は弱い点を押さえておきましょう。
チャットボット
チャットボットは「チャット」と「ボット」を組み合わせた言葉で、人工知能によって自動的な会話を可能にしたプログラムです。24時間対応していたりお問い合わせに対応する時間の短縮に役立ったりと、企業にとってもお客さまにとってもうれしいポイントが多いツールです。
ただし、初期コストがかかり正確な回答をさせるための細かなサポートが必要であるというデメリットがあります。安定稼働させて投資したコストを回収するまでには、少しだけ長い期間が必要になるでしょう。
ビデオチャット(New)
ビデオチャットは、遠隔でも顔と顔を合わせてコミュニケーションできる点が強みのツールです。1対1だけではなく、複数人でコミュニケーションを取ることもできるので、さまざまなシーンで活用できます。
当記事で紹介したツールのなかで、唯一顔を合わせて話せるのがビデオチャットです。場所や時間を問わずにスピーディーな情報伝達をしたいとき、親近感や信頼感を抱いてもらいたいときに活用しましょう。
こんなにたくさんのコミュニケーションツールがあると、何がいいか迷ってしまいますね。
そうだね。それぞれに一長一短があるから、自社や顧客に最適なツールを選ぶことが大切なんだよ。
どうすれば、最適なコミュニケーションツールが選べるんでしょうか?
顧客に最適なコミュニケーションツールの選び方
顧客とのコミュニケーションツールを選ぶときは、自社の事情だけではなく、顧客にとっての利便性も考慮しなければいけません。とくにツールを選ぶときに意識したいのは、以下の4つのポイントです。
- 確実かつ素早く情報が届けられるか
- 簡単にいつでも使えるか
- いつでも確認できるか
- 伝えたい情報の量や内容に合っているか
各ポイントを詳しくみてみましょう。
確実かつ素早く情報を届けられるか
顧客とのコミュニケーションにおいて、情報をすぐに届けることは非常に重要です。旬な情報を旬なうちに届けたり、顧客の問い合わせにすぐ対応したりするスピーディーさは、顧客の購買意欲に大きな影響を与えます。できるだけタイムラグなく、なおかつ確実に情報を届けられるツールを導入しましょう。
簡単に使えるか
簡単に使えるツールを導入することも、顧客とのコミュニケーションでは大切です。たとえば、コミュニケーションツールとして独自のソフトを用いれば、企業にとっての利便性は上がります。
しかし、使い方がわかりにくいソフトだと、顧客には「操作が難しい」と離脱されてしまうでしょう。反対にメールやチャットであれば、スマートフォンから簡単に連絡に対応してもらえます。離脱のリスクを低減するためにも、誰でも簡単に操作できるツールを導入することが大切なのです。
いつでも確認できるか
いつでもどこでも簡単に確認できるツールであるかも、チェックしておきたいポイントです。たとえば、ビデオチャットは非常に有用性が高いツールです。
しかし、「機材が必要」「気軽に参加できない」と利用のハードルが高く、顧客に抵抗感を抱かれる可能性があります。顧客とコミュニケーションを取る際は、双方が任意のタイミングで気軽に対応できるツールを選ぶ必要があるのです。
伝えたい情報の量や内容に合っているか
伝えたい情報の量や内容に合わせてツールを選ぶことも大切です。たとえば、あまりにも長い商品紹介の文章をLINEで送っても、読んでもらうのは難しいでしょう。この場合は、DMでカタログを送るなどの対応が適しています。
また、契約に関する重要な内容をブラウザプッシュで表示させてしまうと、個人情報の流出につながるかもしれません。この場合は、個人情報が残らない電話などでやり取りをしたほうがよいでしょう。
このように、情報の量や内容によって適しているツールは異なります。1つのツールにこだわるのではなく、目的に合わせて最適なツールを使い分けることが大切です。
最適なコミュニケーションツール選びは、ビジネスやマーケティングにおいてとっても重要性が高いんだよ。
顧客とのコミュニケーションツール選びが重要な理由
お客さまとのコミュニケーションはビジネスにおいて常に大切なものですが、最近は前よりもいっそう重要度が増しています。その背景には、以下のような時代の変化が隠されています。
- 消費者のニーズが急速に変化し、多様化してきているから
- お客さまに“選ばれる”ことが重要になってきているから
- CRMの重要性が増してきているから
3つの理由を詳しくみてみましょう。
消費者のニーズが急速に変化し、多様化してきているから
昔と比べると、今は商品の数や種類が大幅に増えました。インターネットの普及でいろいろなサービスを比べられるようになり、より自分に合ったものを選びやすくなってきています。
パソコンを例に取ってみると、近年はゲームや動画編集に特化したもの、動作の素早さを追求したパソコンなど数え切れないほどの商品が売られています。
そのため、消費者は自分で「どれがいいかな」と商品を調べ、自分のニーズにマッチするものを選べるようになりました。時代の変化とともに消費者のニーズが大きく変化し、一人ひとりが異なったニーズを持つようになってきたというわけです。
ニーズが変化するなか、従来の価値観のままサービスを提供していれば、顧客に魅力的な別サービスへ乗り換えられる可能性があります。顧客のコミュニケーションのなかでニーズを読み取り、それを満たせるサービスを提供し、つなぎとめることが重要なのです。
お客さまに“選ばれる”ことが重要になってきているから
情報があふれかえっている現代、新しくお客さまを獲得するのは以前よりも難しくなりました。お客さまが簡単に情報を集められるようになり、興味を持つ商品やサービスの選択肢が増えたからです。
従来はお客さまが自分からECストアを訪問して商品を買っていました。しかし、今後は企業側からお客さまに近づいて、選ばれるために努力することの重要さが増しています。
「お客さまを知り、ちょうどいいタイミングで最適なツールを使って情報を提供し、惹きつけること」が、今後生き残っていくためには大切なのです。
CRMの重要性が増してきているから
お客さまとのコミュニケーションは、CRMという観点からみても重要です。CRMとは、顧客の情報をまとめて管理し、ビジネスやマーケティングに活用していく考え方です。
お客さまとのコミュニケーションは、商談をスムーズにしたり相手のニーズを理解したりするときに役立ちます。しかし、そもそも相手の好きな商品やこれまでの行動を知らなければ、最適なコミュニケーションの方法はわかりません。
たとえば、これまでの行動から「パソコンで動画編集をする」「以前に処理スピードについてお問い合わせがあった」ことがわかっていたとします。すると、「次は処理スピードが早くて動画編集に向いているパソコンをおすすめすればいい」と判断できるでしょう。
スムーズなコミュニケーションのためには、購入履歴やお問い合わせ履歴などを通して、顧客との関係性を管理しておくことが重要です。つまり、コミュニケーションを取るときは、CRMの考え方をもとにすることが大切なのです。
また、CRMで情報を一元管理して社内の各部署が連携できれば、さらに効果的な施策の考案や商品開発にもつなげられます。
今の時代、企業が生き残っていくためにはコミュニケーションツールの最適化が欠かせないんですね!
そうそう。それに、最適なコミュニケーションツールで顧客との関係性を強化できれば、多くのメリットが得られるんだよ。
へぇ~、どんなメリットが得られるんですか?
ツールで関係性を強化するメリット
コミュニケーションツールを最適化して顧客との関係性を強化すると、3つのメリットが生じます。
- 一人ひとりに合った提案ができる
- 従業員のモチベーションが上がる
- 商品やサービスへのフィードバックがもらえる
各メリットの詳細をみてみましょう。
一人ひとりに合った提案ができる
コミュニケーションツールを活用すれば、一人ひとりに合った提案ができるようになります。たとえば、CRMに蓄積した顧客の情報とコミュニケーションツールを組み合わせれば、以下のような施策を実施できます。
- 各顧客が興味を持ちそうな商品をメールでおすすめする
- お問い合わせ履歴がある顧客にアフターフォローの電話をする
- 買い替えのタイミングでLINEクーポンを配信する
広告だけでは実現できないワンランク上の訴求が、コミュニケーションツールの活用によって可能となるのです。
従業員のモチベーションが上がる
コミュニケーションツールを通して顧客と接点を持つことは、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。直接顧客とやり取りをすればやりがいを感じやすくなりますし、ときには顧客からお褒めの言葉をもらう機会もあるかもしれません。
広告を打ち出すだけでは、このように顧客からの直接的な反応をもらうのは難しいものです。コミュニケーションツールの活用は従業員の士気を高揚させ、よりよい施策の実施を後押ししてくれます。
商品やサービスへのフィードバックがもらえる
顧客とコミュニケーションを取ることで、商品やサービスへのフィードバックを得られます。カスタマーサポートのなかでご意見をいただくこともあれば、雑談のなかで顧客が何気なく放った言葉が商品開発のヒントになることもあるでしょう。
お客さまとの会話やメッセージのやり取りは、全てがビジネスやマーケティングに活かせる財産です。コミュニケーションツールの活用は、フィードバックのチャンスを大幅に増やしてくれるのです。
ところでビギニャー君、お客さまとコミュニケーションを取るときは、どんな点に気をつければいいと思う?
コミュニケーションの注意点……!?考えたこともなかったです……!詳しく教えてください!
顧客とのコミュニケーションツール活用時のポイント
お客さまとのコミュニケーションは、どのような方法で取ってもいいというわけではありません。よりスムーズで効果的なコミュニケーションのためにも、以下のポイントを意識してみましょう。
- ターゲットが利用しやすいツールを把握する
- 複数のコミュニケーションツールを使う
- コミュニケーションの頻度と内容を見極める
各要素を詳しく解説します。
ターゲットが利用しやすいツールを把握する
お客さまのなかには、LINEをよく使う人もいれば、メールをよく使う人もいます。年代によっては、デジタルツールよりも紙媒体の情報のほうが喜ばれるかもしれません。人によって使いやすいツールは違うので、ターゲットが利用しやすいツールを知ることが重要です。
なお、コミュニケーションツールを選定するときは、以下の条件を念頭に置いておくと失敗しにくくなります。
コミュニケーションツールの条件
- すぐに最新の情報を届けられる
- 専用のコミュニケーションツールが必要ない
- 新しい操作を覚える必要がなくて使いやすい
- 24時間受付や待機時間が不要など、いつでも使える
- 記録が残り、お問い合わせ内容をいつでも読み返せる
複数のコミュニケーションツールを使う
コミュニケーションツールを活用するときは、複数ツールの使用をおすすめします。
- 電話は直接話せるけど、内容を記録として残せない
- メールはいつでも見れるけど、SNS世代には気づいてもらえない
上記のように、それぞれのツールには異なった長所と短所があります。そのため、複数のツールを使ってコミュニケーションを取るとより効果的なのです。
また、人によって希望する連絡ツールも違うかもしれません。窓口をいくつか持っていると、状況や目的に応じてコミュニケーションを取りやすくなります。
コミュニケーションの頻度と内容を見極める
コミュニケーションを取るときは、適切な距離感を保ちつつ相手のストレスにならない頻度や内容にすることが肝心です。もちろん、ツールやターゲットによって最適な頻度は変わります。
しかし、「セールの案内は初日と最終日のみにする」「連絡は数日間隔を空ける」など、頻度と内容に少し気をつけると、顧客からの反感を防げます。
コミュニケーションを取るときのポイントはわかったんですけど、具体的にどんなシーンでツールを活用すればいいのか悩んでしまいます…!
それなら最後に、コミュニケーションツールを活用して顧客との関係性を強化する施策について一緒に考えてみよっか。
コミュニケーションで関係性を強化する施策事例
ツールを用いた顧客とのコミュニケーションを通し、関係性を強化して売上アップにつなげる施策を考えてみましょう。ここでは、新しく開店する美容室で施策を実施してみます。
まず、新しくオープンした店舗であるため、新規顧客を獲得しなければいけません。新規顧客を獲得するために、お店のLINE公式アカウントのQRコードを記載したチラシを配布し、友だち登録特典としてトリートメント無料券を配信します。
この際、LINEの機能を使ってアンケートを取ったり、予約を受け付けたりしてもよいでしょう。来店してくれた方にはメルマガを配信して、トレンドの髪色やヘアアレンジを紹介。同時に、サンクスクーポンやお誕生日特典などを配信して、リピーターへ育成します。
リソースがある場合は、ビデオチャットでヘアアレンジ講座を開いたり、紙DMと一緒に新商品のサンプルを送ったりするという手もあります。さまざまなコミュニケーションツールで顧客の心を掴めば、長く来店してくれる優良顧客が育成できるかもしれません。
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