LTVは、お客さまが企業に対して生涯にわたって、もたらしてくれる利益を意味する指標です。LTVを活用すると、目標CPAや最適な広告費がわかるようになります。
マーケティングではなぜLTVが重要で、いつ活用すべきものなのでしょうか?本記事では、企業の利益拡大やWeb広告運用に欠かせない、LTVの意味と活用方法についてわかりやすく解説します。
また、記事の後半では、ゴンドラの管理職社員によるリアルなLTV事情をお伝えします。
先輩先輩!この商品の広告予算を決めておいてって言われたんですけど、広告予算ってどうやって決めればいいんですか!?
お、いい質問だね。広告予算は、LTVから限界CPAを算出したうえで決めることが大切なんだ。
え、LTV…!?なにその「命の価値」的な言葉は……!?先輩、よくわからないので詳しく教えてください!
INDEX
LTVとは
LTVとは、「Life Time Value」を略した言葉です。利益拡大や広告費の最適化など、LTVはマーケティング活動において欠かせない考え方です。まずは、マーケターが必ず知っておきたいLTVの意味と重要性を解説します。
LTVをわかりやすくいうと?
LTVは日本語に直すと「顧客生涯価値」です。わかりやすくいうと、お客さまが企業と取引をスタートしてから終わるまでの期間に、どれだけ利益をもたらしてくれるかを表す数値です。
一般的に企業やブランド、商品に対して高い愛着心(ロイヤルティ)を持っているお客さまほど、何度も商品をリピートしてくれる可能性が高く、LTVは高くなります。
実際この記事を読んでいる人の中にも、お気に入りのブランドの商品を繰り返し購入した経験がある方は多いかもしれません。このような企業への愛着や購買行動が、LTVに大きく貢献しているのです。
マーケティングではなぜLTVが重要なの?
マーケティングの際は、どうしてLTVの考え方が必要になるのでしょうか。LTVが重要な理由について4つ紹介します。
継続利用を促せる
LTVを意識してマーケティングを行うと、継続利用を促せるというメリットがあります。近年は、従来の「売り切り型」に代わって「サブスクリプション型」のサービスが増加してきました。定額で使い放題のサブスクリプション型サービスは、継続利用により利益拡大・安定化を狙うビジネスモデルです。
このビジネスモデルは、長期的な取引により利益を最大化するLTVの考え方と非常に親和性が高いといえます。継続利用を前提としている商材やサービスは、とくにLTVを高めるための施策が重要となるのです。
企業の利益をアップさせるため
さまざまな商品やサービスがある今、自社製品を消費者に選んでもらうためには、多くのコストと時間が必要となります。たとえ新規顧客獲得に取り組んでも、十分な利益を得るには時間がかかるケースが多いです。
また、マーケティングには「1:5の法則」と呼ばれる考え方があります。これは新規顧客の獲得が、既存顧客の売上アップより、5倍コストがかかることを意味する言葉です。
このような背景により、既存顧客のリピートによって利益を向上させる、LTVの考え方が注目されるようになってきました。
顧客満足度を可視化できる
LTVは、顧客の満足度をはかるための指標にもなります。LTVが向上しているとき、お客さまは商品に満足していて、長く商品を利用してくれていることがわかります。
反対にLTVが下がっているときは、お客さまが商品に何らかの不満を抱いている可能性があるかもしれません。
もちろん、商材のなかには何度も繰り返し購入する必要がないものもあるため、「LTV=お客さまの満足度」とひと括りにはできません。しかし、満足度を数値化するひとつの指標として、LTVの考え方は活用できるでしょう。
Web広告運用の目的を決められる
LTVは、Web広告運用の目的を決めるときにも役立ちます。LTVが低い場合、顧客単価、購買頻度、購買期間、顧客ロイヤルティなどに課題があると考えられます。どこに課題があるかをしっかりと理解できれば、次のように自社に合ったWeb広告運用の目的を決められるようになるでしょう。
- 関連商品の購入をおすすめする広告で単価をアップしよう
- ブランドイメージを高める広告でファン化を目指そう
LTVの考えを広告運用に活かせれば、効率的な訴求で広告コストの削減も実現可能です。
なるほど。お客さまが長期的にもたらしてくれる利益をLTVというんですね!
LTVは、マーケティングのときにいろんなところで役立ってくれるんだよ。ちなみに、LTVにはいくつもの計算方法があるんだ。
LTVの計算方法
LTVは、以下のように複数の方法で算出できます。
- LTVの基本の計算方法
- 新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストを使った計算方法
- チャーンレートを使った計算方法
各計算方法の詳細をみてみましょう。
LTVの基本の計算方法
LTVの基本の計算方法は、次のとおりです。
LTV=平均顧客単価×購買頻度×継続期間×収益率
たとえば、平均顧客単価1,000円、収益率が50%の雑誌を月に1回、2年間(24ヶ月)定期購読されている場合、LTVは1,000円×1回×24か月×50%=12,000円です。
新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストを使った計算方法
基本の計算式から「顧客獲得コスト」と「顧客維持にかかるコスト」を差し引けば、コストを反映したLTVが計算できます。
LTV=平均購買単価×購買頻度×継続期間×収益率-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
コストを加味した全体像を把握したいとき、施策に割くコストを最適化したいときは、こちらの方法で計算してみてもよいでしょう。
チャーンレートを使った計算方法
チャーンレートとは、解約率を指す言葉です。LTVは、チャーンレートを加味して計算することも可能です。サブスクリプション型サービスを展開する企業には、チャーンレートを活用した計算方法が向いています。
LTV=平均購入単価÷チャーンレート
平均購入単価を引き上げて解約率を低く抑えれば、LTVを最大化できます。この計算式に粗利率をかければ、利益ベースでLTVを計算することも可能です。
ふむふむ…。LTVが高いほうが、企業にとってはいい状態だということですね!
うん、とっても簡単にまとめるとそういうことになるね。それじゃあビギニャーくん、LTVを高めるためにはどうしたらいいと思う?
LTVを高める…!?うーーーん、どうしたらいいんだろう!!?
LTVを最大化するマーケティング戦略
LTVを高めたいときは、どのようなアプローチをすればよいのでしょうか。以下では、LTVの向上に効果的な施策を5つ紹介します。
- 購入単価を上げる
- 購入頻度を増やす
- 契約期間を延ばす
- 自社を好きになってもらう
- 収益率を高める
商材や想定するユーザー像によって、最適な施策は異なります。紹介する内容を参考に、自社に合った施策にカスタマイズしてみてくださいね。
購入単価を上げる
顧客の購入1回あたりの単価を上げると、LTVを向上できます。商品の値上げだけではなく、上位モデルをおすすめする「アップセル」や関連商品をおすすめする「クロスセル」、セット販売なども有効です。
ただし、購入単価アップは顧客離れのリスクをはらんでいる点に注意しましょう。無理な値上げや商品の提案が、顧客に不快感を与える可能性は十分に考えられます。商品の特性や顧客層などをよく理解したうえで、無理のない範囲で実施することが大切です。
購入頻度を増やす
商品を今よりも頻繁に買ってもらえるようになれば、同じ単価でもLTVを高められます。購入頻度の増加には、積極的な情報発信がおすすめです。具体的には、買い替え時期や商品の魅力を知らせるリマインドメールの配信、定期的なキャンペーンの実施やクーポンの配布などが効果的です。
また、SNSやオウンドメディアをうまく活用できれば、繰り返し購入してくれる熱狂的なファンを獲得できる可能性があります。
契約期間を延ばす
期間を定めて契約しているサービスの場合、契約期間を延ばすことでLTVの向上を目指せます。密なコミュニケーションで顧客ニーズを満たす、解約しそうな顧客にお得な情報を提供するなどの施策が有効です。
契約期間を延ばすためには、顧客の利用動向を注視し、解約の兆候をいち早く察知することが肝心です。CRMなどを活用して、常に顧客の行動を観察・分析しておきましょう。
自社を好きになってもらう
顧客のロイヤルティ(企業への愛着)を高めて自社を好きになってもらうことも、非常に大切です。ブランドのイメージを高めて顧客のファン化を狙うには、次のような施策が有効です。
- 会員特典を用意する
- ランク制度を設ける
- 独自の世界観を構築する
「サービスを利用し続けるメリットが多い」と感じてもらえれば、顧客から高い愛着を持ってもらうことができます。
収益率を高める
商品の原価を抑えて収益率を高めることも、LTVの向上には欠かせません。どれほどたくさん商品を売っても、収益率が低ければ企業が利益を得るのは難しいためです。
収益率を高めるために有効な施策は、決して材料費を減らすことだけではありません。MAツールの活用やシステムによる業務自動化など、企業の経費や人件費の見直しなども収益率アップには効果的です。
先輩のおかげで、LTVについてはかなりわかってきました!ですけど、LTVと広告にはどんな関係があるのですか?
LTVを向上させるためには、広告の活用が欠かせないんだよ。それにさっき話したとおり、LTVがわかると広告予算を決められるようになるんだ。
LTVを最大化する広告運用の方法
企業が利益を増やすためには、1回商品を買ってくれた顧客にリピーターになってもらい、生涯の購入回数を増やすことが大切です。何度も商品を購入してもらってLTVを高めるためには、以下の2点を意識して広告を打ち出すことがとても重要になります。
- 具体的な目的を定めておく
- LTVを把握し、目標CPAを算出する
これから紹介するポイントを踏まえて広告を運用できれば、新規顧客獲得だけではなく、既存顧客の単価アップも狙えるでしょう。
具体的な目的を定めておく
LTVを高めるために広告運用するときは、具体的な目的を定めておくことが大切です。新規顧客を獲得したいなら、認知度を上げるために「テレビCMで多くの消費者に情報を届ける」ことが有効でしょう。
リピート購入を促したいなら、商品の買い替えタイミングを見て「会員向けのメルマガ広告を配信する」という施策が有効かもしれません。
「新規顧客を獲得したいのか」「リピート購入を促したいのか」「顧客単価を向上したいのか」など、目的ごとに適している広告の内容や媒体は異なります。まずは広告の目標を明確にして、それに合った施策を考えることが大切です。
LTVを把握し、限界CPAを算出する
広告にかける予算を考えるときは、LTVがとても重要な役割を果たしてくれます。LTVがわかれば、CPA(顧客や成約を1件獲得するための広告コスト)の限界がわかるようになるためです。
極端な話、LTVが10,000円の商品の粗利率が50%だとすると、限界CPAは10,000円×50%=5,000円になります。この計算式から、成約1件あたりの広告費用を5,000円未満に抑えるべきだとわかるのです。
この商材で100人の顧客獲得を目指すなら、5,000円×100人=500,000円が広告費の最大値となります。このように、LTVを活用すると適切な広告費を把握できるのです。
わー、ありがとうございます!教えていただいたことを参考に、依頼されていた広告の予算を考えてみます!
LTVはマーケティングや広告の運用でとっても重要になる考え方だから、ぜひ今後の業務に活かしてみてね。ちなみに、LTVの最大化を目指すときはツールの活用が欠かせないんだけど、何を使えばいいかわかるかな?
つ、ツール!?うんと……、CRMとか!?
LTVを最大化するために活用したいツール
LTVの最大化を目指すためには、顧客情報の一元管理やひとり一人に対する適切なアプローチが欠かせません。このような業務を人の手で行うことは難しいため、ツールを活用して効率化・自動化することが一般的です。LTV最大化に役立つツールとしては、以下の3つが挙げられます。
- MAツール
- CRM
- AI
各ツールの詳細や強みをみてみましょう。
MAツール × LTV
「MA(マーケティングオートメーション)ツール」とは、新規顧客の獲得や見込み顧客の育成を自動化してくれるツールです。たとえば、見込み顧客のリスト化やメルマガの配信・分析、顧客のスコアリングなどを実施してくれます。
MAツールは、見込み顧客の情報を一元管理し、ひとり一人の興味関心や行動に応じた施策を自動で行ってくれます。顧客のロイヤルティを高めてファン化してくれる効果があるので、高いLTVをもたらしてくれる顧客を育成できるでしょう。
CRM × LTV
「CRM(Customer Relationship Management)」は、顧客と良好な関係性を構築するための施策を自動化してくれるツールです。自社顧客の情報を蓄積・分析し、適切なコミュニケーションのサポートを行ってくれます。
CRMを活用すれば、顧客の属性や好みを一元管理でき、ニーズに沿ったアプローチを効率的に行えるようになります。
顧客は自分向けにカスタマイズされた提案や情報を受け取れるため、満足度が高まって優良顧客へ育ってくれる可能性が高まるでしょう。その結果、購入単価や継続利用期間がアップし、LTVの最大化につながるのです。
AI × LTV
近年注目度が高まっているAI(人工知能)の活用も、LTVの最大化には有効です。最近は、AI機能が搭載されているMAツールやCRMが登場しています。AIは膨大なデータの特徴を学習し、人間に近い思考回路のネットワークでマーケティングを支援してくれます。
たとえば、ひとり一人の行動履歴や購入品を分析して次の施策を提案したり、メルマガをパーソナライゼーションしたりすることが可能です。顧客データを踏まえた精度の高い分析や提案は、LTVの最大化に大きく貢献してくれるでしょう。
やった~!正解ですっ!今後MAツールやCRMを使って施策を打ち出すときは、LTVについてもしっかりと意識していきますね!
ところでビギニャー君。マーケティング施策の成果を向上させるためには、LTV以外にもいろいろな指標を知っておく必要があるんだよ。
そうなんですね。どんな指標が重要になるのでしょうか……?
LTVと一緒に覚えたい重要指標
LTVの考え方をしっかりと理解して利益の最大化を目指す際は、他にもいくつかの指標を押さえておかなければいけません。ここでは、LTVと関係性が深い4つの指標を紹介します。
- CAC
- ARPA
- MQL
- ユニットエコノミクス
各指標の意味や計算方法をみてみましょう。
CAC
CAC(Customer Acquisition Cost)とは、顧客を1人獲得するために必要なコストを意味する言葉です。CACの計算方法は、次のとおりです。
CAC=顧客獲得コスト(広告費・人件費など)÷新規顧客獲得数
CPA(顧客1人を獲得するためにかかる広告コスト)とは異なり、イベント出展や人件費など、あらゆるコストを含める点が特徴的です。CACを加味してLTVを計算することで、施策のコストを適切に管理できるようになります。
ARPA・ARPU
ARPA(Average Revenue Per Account)とは、1アカウントあたりの平均売上金額を意味する言葉です。ARPAの計算方法は、次のとおりです。
ARPA=売上÷アカウント数
この指標を使えば、LTVを計算するときに必要となる平均購入単価をアカウントベースで算出できるようになります。なお、売り上げをユーザー数で割れば、1ユーザーあたりの平均売上(ARPU:Average Revenue Per User)が算出できます。
MQL
MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティングで獲得した見込み顧客のうち、商品やサービスに高い関心を抱いている人を指します。
MQLのうち、とくに有望な見込み顧客をSQL(Sales Qualified Lead)と呼びます。MQLやSQLを明確に定義しておくことで、限られたリソースでも成果の高いマーケティング活動が実施できるようになり、LTVの向上に役立てられるでしょう。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスとは、顧客1人あたりの採算性や事業健全性を意味する言葉です。ユニットエコノミクスは、次の計算方法で算出できます。
ユニットエコノミクス=LTV÷CAC
ユニットエコノミクスの目標値は、3~5程度であるといわれています。数値があまりにも低いときは収益悪化、高いときは機会損失が発生している可能性があります。
わわ、新しく知る指標ばかりです!勉強になりますっ!
参考になったみたいでよかったよ。今後ビギニャー君もLTVの考え方を取り入れる機会が増えるだろうし、最後にLTVを最大化する戦略の事例を紹介しておこうかな。
わ~い!ありがとうございますっ!
LTVを最大化する戦略事例
LTVの最大化を目指すときは、具体的にどのような戦略を実施していけばよいのでしょうか。ここでは、3つのパターンに分けて具体的な戦略事例を紹介します。
- BtoC商材
- BtoB商材
- シーズナル商材
それぞれを詳しくみていきましょう。
BtoC商材
一般消費者向けのBtoC商材は、顧客の感情や心理状況に購入頻度や契約期間が影響されやすいという特徴があります。そのため、LTVを最大化する方法のひとつとして、顧客の心理状況を利用した戦略が挙げられます。たとえば、次のような方法で顧客の感情を刺激してみることが有効です。
- シーズンごとに限定品を販売してコレクター心をくすぐる
- 契約更新ごとにプレゼントを提供する
- SNSや広告での接点を増やし、ブランドへの好感度をアップさせる(ザイオンス効果)
- 解約や乗り換えを損だと思わせる特典を用意する(サンクコスト効果)
顧客の心理状況を理解してマーケティング戦略を実施すれば、「この企業は私をわかってくれている」と思ってもらえます。その結果、ファンや優良顧客になってもらえて、LTVを最大化できる可能性が高まるのです。
BtoB商材
BtoC商材とは異なり、法人向けのBtoB商材は機能や価格、費用対効果などを合理的に判断されて購入される傾向にあります。そのため、商品の有用性を伝えるための施策が非常に効果的です。
顧客獲得の際は、Web広告や自社コンテンツなどのデジタルマーケティングはもちろん、セミナーや展示会などのイベントも有効でしょう。ポイントは、相手の課題や悩みをじっくりとヒアリングし、課題解決のためにともに取り組む姿勢で向き合うことです。
「この製品で課題を解決できる」「これだけの費用対効果が得られる」と伝えられれば、単価が高い商品や契約期間が長い商品でも前向きに検討してもらえるでしょう。
また、購入・契約後もサポートを続けることが非常に大切です。長期的なサポートはアップセルやクロスセルのチャンスを生み出し、顧客満足度の向上にもつながります。その結果、LTV向上に一役買ってくれるのです。
シーズナル商材
シーズナル商材は、特定の季節に販売される商品・サービスのことです。たとえば、夏の水着や冬のこたつなどが例として挙げられます。シーズナル商品は、ユーザーのニーズが高まるタイミングで露出を高める戦略がもっとも効果的です。
ピーク時は商品を見てもらうだけで購入につながる可能性があるため、積極的に広告やSNSなどを活用していきましょう。
また、まとめ買いや贈答用のニーズを踏まえた戦略を実施できると、購入単価や購入頻度を大幅に増やせます。シーズンオフは、割引販売やメンテナンス商品の販売に力を入れましょう。アプローチ方法を工夫すれば、シーズナル商品であっても効率的にLTVを向上させられます。
LTVに関しては、少しわかった気がします。
でも、実際数字を扱うとなると、まだちょっと自信が…
そうだよね。じゃあ実際に、うちの社員さんに質問してみようか。
ゴンドラの管理職社員がLTVのよくある質問に答えてみた
株式会社ゴンドラのCRM副本部長の黒川さんに、LTVの考え方についてインタビューしました。管理職だからこそ語れる、リアルなLTV事情についてお伝えします。
LTVはなぜ、算出しなければいけないのですか?
新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍のコスト※がかかると言われています。加えて、日本は人口減少が進み、今後、見込み客の数が少なくなっていきます。
したがって、新規顧客の獲得に大きな費用を投じるよりも、既存顧客と良好な関係を築き、継続購入などにより顧客のLTVを高めることを重要視すべきだと考えています。
※米国大手コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーのフレデリック・F・ライクヘルドが提唱
算出したLTVは何に活用できますか?
LTVは、限界CPAの設定にも有効に活用できます。2つのケースを想定してみましょう。
2つのケース | 計算例 |
1回の購入金額だけでCPAを算出する場合 | 1,000円×50%=500円(購入単価×粗利率) |
LTVを加味してCPAを算出する場合 | 1,000円×50%×10回/12ヶ月=5,000円(購入単価×粗利率×購入回数) |
このように、LTVを考慮して限界CPAを設定することで、最適な投資と機会損失を防ぐことができます。
LTVを設定するうえでの注意点はありますか?
業界や商品・サービスの特性、ビジネスモデルや状況によって算出が若干異なります。例えば以下の通りです。
- リピート商材:購入単価×購入回数×継続期間
- サブスクリプション商材:顧客の平均単価×粗利率/解約率
- BtoB商材:顧客1人あたりの年間取引額×粗利率×顧客1人あたりの継続年数
算出方法を適切に使うことで、施策の精度も向上します。
LTVは、算出期間を設定すべきだと思いますか?
業界や商品・サービスの特性、ビジネスモデルや状況によって算出期間を設定する必要があります。例えば、通販業界は、1年間で設定している場合が多いです。自らのビジネスモデルと目標に基づいて、最適なLTV算出期間を選定しなければなりません。
LTVが低くなってしまう原因は、何が考えられますか?
企業、商品、サービスのファンになった顧客であればあるほど、長期かつ継続的にサービスをご利用いただける確度が高まるため、結果としてLTVが向上しやすくなります。
したがって、LTVを上げるには、顧客が特定の商品やサービスに抱く愛着や信頼である顧客ロイヤルティを高めなければなりません。
ただし、LTVが高い顧客が顧客ロイヤルティの高い顧客とは限らないという点に注意する必要があります。「他社に切り替えるのが面倒で仕方がなく使い続けている」 といった場合です。一律に顧客ロイヤルティが高いと判断してしまうと、ミスリードをしてしまう可能性があります。
顧客ロイヤルティはどうやって高めるのでしょうか?
主に3つのアプローチで顧客ロイヤルティを高められます。
- 顧客理解をする
- 顧客体験価値を高める施策を実行する
- カスタマーサービスの質を高める
まずは、顧客理解から始めることをおすすめします。
顧客理解をするうえで大切にしていることはありますか?
大事なのは、「お客様がどのような意図で、 商品やサービスを選んで購入しているか」を知ることです。また、購入時だけでなく全体の顧客体験に着目し顧客理解を深めると、課題も見えやすくなってきます。
LTVを上げるにはさまざまな施策がありますが、優先順位はありますか?
事業課題次第です。事業によって課題や優先度が違います。例えば、定期購入施策が順調なのであれば、無理に改善する必要はありません。それよりも、新規顧客の獲得から定期購入していただくところまでの施策をしたほうがよいと考えられます。
ひとつのたとえですが、LTVを上げるには、「バケツの穴を塞ぐ(継続率を上げて、解約率を下げる)」イメージで課題を発見して、改善していくことが重要ではないかと思います。穴が完全に塞がった強固なバケツにでしたら、そこに真水を流しても流れ落ちることはないですよね。
LTVアップよりも、新規獲得をご提案するケースはありますか?
私はCRM側の立場ですが、新規獲得が課題だと感じたら、ゴンドラとしてご提案します。「何がなんでもCRM」では本末転倒ですので、課題に応じた判断が必要です。
LTV向上に関して、アドバイスがあればお願いします。
アドバイスは3つあります。
- 顧客理解の上、顧客ロイヤルティを高めること
- 購入だけでなく全体の顧客体験を良くすること
- LTVの算出項目に対して適切な施策を実施すること
LTV向上には、以上の3つが重要だと考えています。「バケツの穴を塞ぐ」イメージでぜひ、LTV向上を目指してみてください。
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WRITING 執筆
LIFT編集部
LIFT編集部は、お客様との深いつながりを築くための実践的なカスタマーエンゲージメントのヒントをお届けしています。