パーソナライズとは、一人ひとりの興味・関心や行動に合わせて、サービスを最適化する手法です。
パーソナライズ戦略を実施すれば、お客さまのニーズを満たし、効率的かつ効果的に消費者の関心を集めることが可能です。
本記事では、いまさら聞けないパーソナライズの意味や効果、企業活用事例をご紹介します。
シニヤン先輩!最近「パーソナライズ」って言葉をよく聞くんですけど、あまりピンときていなくて……。どういう意味なんですか?
パーソナライズは簡単に言うと、「一人ひとり(=パーソン)に合わせて、それぞれのお客さまに最適な情報を提供する仕組み」だよ。
INDEX
パーソナライズとは?
近年のマーケティングでは、さまざまなシーンでパーソナライズを活用する重要性が高まっています。「そもそもパーソナライズって?」「よく聞くけど詳しい意味を知らない」という方は多いかもしれません。まずは、パーソナライズの概要をわかりやすく解説します。
- パーソナライズの意味を簡単に言うと?
- パーソナライズと今までのマーケティングの違い
- パーソナライズの重要度が増した背景
これらの項目を詳しくみてみましょう。
パーソナライズの意味を簡単に言うと?
パーソナライズは、日本語に直すと「お客さま一人ひとりの興味や関心・行動に合わせて、サービスを最適化すること」という意味です。パーソナライズでは、不特定多数のユーザーに同じ情報を一方的に発信することはしません。
CRMなどに蓄積した個人の行動や嗜好を分析し、個人ごとにカスタマイズ(パーソナライズ化)した情報発信を行います。たとえば、ECサイトが、全顧客に「新商品の〇〇が今だけお買い得!」と商品をおすすめするときは、パーソナライズされた情報を提供できていません。
パーソナライズを実行してサービスを最適化するためには、お客さまの過去の購入履歴などを踏まえる必要があります。そのうえで、「あなたには購入品の関連商品の△△がおすすめです!」と一人ひとりに合わせて表示内容を変えるのです。
このように、パーソナライズを広告やWeb接客の中に取り入れると、お客さまごとの属性に適した、さまざまなニーズに対応できるようになります。
パーソナライズと今までのマーケティングの違い
パーソナライズを活用したマーケティングは、従来のマーケティング手法と大きく異なります。従来のマーケティングで一般的だったのは、企業が伝えたい情報を不特定多数へ一気に届ける手法です。この手法は「マスマーケティング」と呼ばれ、インターネットが普及する前まで多くの企業で実施されていました。
また、DMの送付や展示会の開催、テレマーケティングの実施など、従来はマンパワーによるアプローチが一般的でした。対して、パーソナライズを活用したマーケティングは、顧客一人ひとりに対して個別でアプローチする点が特徴的です。
さらに、パーソナライズでは、CRMやMAなどのマーケティングツールを活用してアプローチを自動化します。そのため、従来のマーケティングに比べると、少ない手間で効率的に顧客の心に刺さる情報を届けられるようになっているのです。
パーソナライズの重要度が増した背景
パーソナライズの重要度が増した背景には、顧客ニーズの多様化が挙げられます。マスメディアや店頭でしか情報収集ができなかった時代とは異なり、インターネットが普及した現代、私たちは自ら能動的に情報を収集できるようになりました。
SNSで口コミを収集したりインターネットで比較サイトを検索してみたり、ブログやYouTubeで詳しいレビューを見たり……などなど。ユーザーが自ら収集できる情報が増えるにつれて、一人ひとりが抱く興味やニーズが多様化するようになったのです。
このような状況下で、今までどおり企業が伝えたい情報を一方的に届けるだけでは、ユーザーの興味・関心を引くことはできません。そのため、個人のニーズに合わせた提案を行って「私のことをわかってくれている」「私のための情報だ」と思わせ、他社と差別化を図ることの重要性が増したのです。
パーソナライズは、とくに広告やWeb接客で活用される機会が多いんだ。
し、知らなかったですっ!今シニヤン先輩の説明を聞いて思い出したのですが、パーソナライズと似たような言葉があったような気が……?
パーソナライズと関連用語の違い
パーソナライズと似た言葉として、「レコメンド」と「カスタマイズ」という言葉が存在しています。一見意味が似ているように思えるため、区別できていない方は多いかもしれません。ここでは、各言葉の違いを詳しく解説します。
パーソナライズとレコメンドの違い
レコメンドとは、「おすすめ」「推薦」を意味する言葉です。ECサイトなどを閲覧していて、関連商品がおすすめ欄に表示された経験がある方は多いでしょう。このおすすめ機能が、レコメンドなのです。レコメンドはパーソナライズ戦略のひとつです。
パーソナライズとカスタマイズの違い
カスタマイズとは、顧客自身が自分の好みやニーズに合わせて使いやすいように設定することです。たとえば、自分が使いやすいようにパソコンを組み上げることが、カスタマイズの一例として挙げられます。
パーソナライズとカスタマイズの違いは、「誰が行うのか」というポイントです。パーソナライズは商材を提供する側が、カスタマイズは顧客自身が情報や商材などを最適化します。
なるほどぉ、こうしてそれぞれの意味をみてみると、ぜんぜん違うんですね!しっかりと整理できました!
よかったよかった。ところで、パーソナライズは僕たちの身近なところで行われているんだけど、心当たりはない?
心当たり……。あっ!たくさんありますっ!
身近にあるパーソナライズの具体例
パーソナライズという専門用語を聞くと、なんだか難しく感じてしまうかもしれません。しかし、パーソナライズされたサービスは、私たちの身の回りにもたくさん存在しています。ここでは、BtoBとBtoCの2種類に分けてパーソナライズの具体例をご紹介します。
BtoBビジネスでのパーソナライズの具体例
BtoBビジネスにおけるパーソナライズ戦略の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- メールマガジン
- オウンドメディア
- ホワイトペーパー
- セミナーの案内
たとえば、問い合わせをしたことがある企業から、自社の業種や課題にマッチした提案をするメールや電話が来るのはよくあることです。いろいろな企業に手当たり次第同じ商品をおすすめするのではなく、問い合わせ履歴を反映し、一社一社に合った提案をするのはパーソナライズの手法です。
また、Web上の行動履歴を反映しておすすめ記事や資料を表示したり、自社と関連が深そうなセミナーの案内が届いたりするのもパーソナライズ戦略のひとつだといえます。
BtoCビジネスでのパーソナライズの活用例
BtoCビジネスにおけるパーソナライズの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- ECサイトや動画サイトのレコメンド機能
- パーソナライズド広告
- パーソナライズド検索
- SNSのパーソナライズ表示
たとえば、Amazonには、ユーザーが閲覧した商品に関連するおすすめ商品をレコメンドする機能があります。YouTubeにも同様のレコメンド機能があるため、「一度猫動画を見ると、トップページが猫で埋め尽くされる」なんてことは珍しくありません。
他にも、ユーザーの属性や地域を反映して広告や検索結果を表示するGoogle機能、フォローしているユーザーの投稿に似た投稿を表示させるSNSの機能など……。
このようにパーソナライズの手法は、私たちが利用するあらゆるサービスに活用されています。パーソナライズ化された情報を提供してもらえると興味が湧きやすいですし、ついついクリックしたくなりますよね。
そんなお客さまの心理をマーケティングに活かす考え方を、「パーソナライズドマーケティング」といいます。パーソナライズはWebサービスとの親和性が高いですが、もちろん実店舗での接客応対でも役立ってくれます。
言われてみれば、僕たちの生活にはパーソナライズがあふれている気がしてきました!
そうなんだよ。YouTubeもAmazonもGoogleもTwitterも、全部パーソナライズされた情報を届けてくれているんだ。
パーソナライズではお客さまの情報をもとにアプローチするから、コンバージョン率アップにつながりやすいんだよ。
パーソナライズのメリットと効果
パーソナライズ戦略を実施すれば、企業からの一方的な発信ではなく、ユーザーが求めている情報の発信が可能となります。実際にWeb接客や広告、ECサイトなどでパーソナライズを用いたアプローチをすることには、多くのメリットがあります。
- 効率的なマーケティングが行える
- 潜在顧客を発掘できる
- カスタマーエンゲージメントを高められる
- LTVの向上につながる
ここでは、4つのメリットを詳しく解説します。
効率的なマーケティングが行える
パーソナライズを活用すると、一人ひとりのニーズに合った提案ができ、効率的にコンバージョンを得られるというメリットがあります。
たとえば、とあるECサイトでは美容液が一番人気の商品だったとしましょう。しかし、ダイエット目的でそのサイトを利用している人は、一番人気の商品をあまり魅力的に感じないかもしれません。そのため、人気だからとやみくもに美容液をおすすめしても、買ってもらえる可能性は低いでしょう。
この場合は、購入履歴を参考にダイエット食品を提案したほうが、コンバージョンにつなげられる確率が上がるというわけです。企業はパーソナライズによってコンバージョン率をアップでき、お客さまは快適な購買体験ができるため、双方にメリットが発生します。
潜在顧客を発掘できる
お客さまのなかには、自分が求めている情報やニーズをはっきりと自覚していない「潜在顧客」も非常に多いものです。
パーソナライズを導入すれば、CRMに蓄積したお客様の属性や嗜好を分析することで、本人も気づいていないニーズを見つけられます。このように、パーソナライズは潜在ユーザーや新しいニーズの発掘にも有効なのです。
カスタマーエンゲージメントを高められる
カスタマーエンゲージメントとは、企業とお客さまとの間に構築される信頼関係や親密さを表す指標です。カスタマーエンゲージメントが高いと、お客さまは企業やブランドを自ら進んで選んでくれるようになり、他社への競争優位性を高められます。
パーソナライズ体験をしたお客さまは、「私のことをわかってくれているな」「やっぱりここの商品が安心だな」と、企業に信頼を寄せてくれる可能性が高まります。その結果、カスタマーエンゲージメントや顧客満足度がアップして、リピート購入を促すことが可能となるのです。
LTVの向上につながる
LTVとは、お客さまが生涯にわたって企業にもたらしてくれる利益を指します。パーソナライズを活用してカスタマーエンゲージメントを高められれば、リピーターや顧客単価の向上につながり、最終的にLTVの大幅な増加が期待できるのです。
マーケティングには、新規顧客を獲得するときは、既存顧客に商品を販売するときの5倍のコストがかかる「1:5の法則」という言葉があります。もちろん、パーソナライズは新規顧客の獲得にも効果的ですが、企業の利益向上に直結する既存顧客へのアプローチにも高い効果を発揮してくれます。
こうやって、ユーザーの行動、興味・関心をはじめとしたさまざまな情報を分析して、「一人ひとりへの提案を最適化する」ことがパーソナライズなんだ。
なるほど!たしかに、パーソナライズを広告やWeb接客に取り入れたら、コンバージョン率が上がりそうですね!メモメモ……。
ただし、パーソナライズにはメリットだけではなくてデメリットもあるから、その点も理解して活用することが肝心だよ。
パーソナライズのデメリットと課題
一見メリットしかないように思われるパーソナライズ。しかし、実はデメリットや課題も隠されているため、活用するときは注意する必要があります。
- 個人情報の問題がある
- 顧客が望んでいる情報を届ける必要がある
ここでは、パーソナライズの2つのデメリットを紹介します。
個人情報の問題がある
パーソナライズの最大のデメリット、それは「プライバシーの問題」です。近年はパーソナライズされた情報提供やマーケティングが当たり前になってきています。
しかし、パーソナライズを体験したお客さまのなかには「監視されている」「個人情報を知られている」と恐怖を感じてしまう方も少なくありません。
このような消費者に配慮するために、GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)という規制を施行している国もあります。
日本でも、今後は個人情報へ配慮するために新しい法律や規制が制定される可能性は十分に考えられます。企業はお客さまの心理負担やデータの取り扱いに配慮しながら、適切な範囲内でパーソナライズを活用することを意識しましょう。
顧客が望んでいる情報を届ける必要がある
パーソナライズを行うときは、顧客の情報を収集・分析して、各々が必要としている情報を届ける必要があります。
ここで注意したいのが、「企業が収集・分析した情報が反映されるタイミング」と、「ユーザーが情報を求めるタイミング」が異なる場合がある点です。顧客が”今”望んでいる情報を提供できなければ、パーソナライズの効果は半減してしまいます。
また、「企業が導き出した顧客が求める情報」と「顧客が本当に求める情報」が一致しないケースもあります。パーソナライズを実施するときは、スピード感を大事にしつつ、顧客の反応を検証して改善を繰り返すことが欠かせません。
たしかにパーソナライズは便利ですけど、情報が企業へ筒抜けになっていると考えるとちょっと怖いです……。
そうだよね。でも過度にパーソナライズを怖がるんじゃなくて、メリットとデメリットの両方を理解して適切な範囲で活用することが大切なんだよ。
わかりましたっ!ところで先輩、パーソナライズって難しそうですが、どのように実施すればいいのですか?
パーソナライズを行う方法
一人ひとりの興味・関心や行動履歴に合わせた情報提供を、人の力で行うのは不可能です。そのため、企業がパーソナライズ戦略を実施するときは、マーケティングツールの導入が欠かせません。パーソナライズ戦略を行うときに有効なツールとしては、以下のようなものが挙げられます。
- レコメンドエンジン
- Web接客ツール
- MAツール
- CRM
各ツールの詳細をご紹介します。
レコメンドエンジンでパーソナライズ
レコメンドエンジンは、ユーザーの過去の行動をもとにおすすめの商品やコンテンツを表示させてくれるツールです。ユーザーが好む商品を自動で表示できるため、手間を減らしつつ売上アップを狙えます。
Web接客ツールでパーソナライズ
Web接客とは、サイト上でユーザー一人ひとりに合わせたコミュニケーションをとる、Webマーケティングの手法のひとつです。
Web接客ツールを導入すると、最適なタイミングでクーポンを配信できたり、個別の質問対応を自動化したりできます。まるでお店で接客を受けているかのような体験を届けられるため、ユーザー満足度を向上させる効果があります。
MAツールでパーソナライズ
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、新規顧客の獲得や見込み顧客の育成を自動化するためのツールです。MAツールを導入すると、以下のような業務を自動化できます。
- 見込み客のリスト化
- メルマガの配信
- スコアリングによる顧客の分類
- セミナーの管理
見込み顧客を関心レベルに分けてリスト化したり、それぞれに合ったアプローチを自動で行ったりできるため、パーソナライズ戦略にMAは不可欠です。顧客との良好な関係性を構築するサポートになるので、自社のブランド力向上にも役立ちます。
CRMでパーソナライズ
CRMは、日本語に直すと「顧客関係管理(顧客管理)」という意味を持つ言葉です。顧客の情報を集めて分析して、顧客満足度を高めるマーケティングツールを指すこともあります。CRMの代表的な機能は、以下のとおりです。
- 顧客管理:顧客の情報や行動履歴などを蓄積
- 顧客分析:人気商品の傾向を分析し、新規ユーザー獲得を目指す
- 問い合わせ管理:問い合わせの内容やメールの管理
- 販促機能:メールマガジンの配信やイベントの顧客リスト作成
顧客の情報を管理・分析するだけではなく、それを反映した施策まで実施できる点がCRMのメリットです。なお、MAツールとCRMツールは似ているため、どちらを導入すればいいか迷う方もいるでしょう。
見込み顧客段階では「MAツール」、自社の顧客になってからは「CRM」を使うのが一般的なので、訴求したいターゲットに合わせて選ぶことが大切です。
なるほどなるほどっ!僕、パーソナライズについてだいぶわかってきました!
おっ、よかった。これからは、ビギニャー君もクライアント企業にパーソナライズ戦略を提案する機会が増えるだろうし、最後にパーソナライズマーケティングの事例をみておこうか。
はいっ!先輩!
パーソナライズをマーケティングで活用する事例
実際にパーソナライズ戦略をマーケティングに取り入れる際は、どのような施策を実施すればいいのでしょうか。ここでは、6つのパターンに分けてパーソナライズ戦略の一例をご紹介します。
- ECサイト
- 動画配信
- メルマガ
- ニュース配信
- 広告
- SNS
ぜひ自社で実施できそうな施策例を見つけてみてくださいね。
パーソナライズをECサイトに活用
ECサイトを運営している企業では、「レコメンド機能」と「パーソナライズドメール」の施策がおすすめです。ユーザーの購入履歴や行動履歴を分析し、おすすめ商品を表示させたりクーポンを配信したりすれば、リピート率や購入単価アップを狙えるでしょう。
パーソナライズを動画配信に活用
動画配信でも役立つのが、「レコメンド機能」です。一人ひとりの興味関心を反映したコンテンツをおすすめできると、訴求力をグッと高められます。また、動画広告を配信するときは、ユーザーの属性や地域などに合わせて表示させるパーソナライズの手法もおすすめです。
パーソナライズをメルマガに活用
メルマガはマーケティングに欠かせない手法ですが、「配信しても読んでもらえないことが多い」という課題を抱えています。そのため、きちんと読んでもらえるメールを配信することが大切です。
「20代で仕事に悩むあなたへ!」「転職したいマーケターへ」など、属性や関心、ユーザーの課題などを踏まえたメールを配信すると、開封率をアップさせられます。
パーソナライズをニュース配信に活用
ニュース配信でも、パーソナライズは重要となります。年齢や地域を踏まえた情報を優先的に表示させる、関心のあるカテゴリを選択してもらい、それに合わせてニュースを配信するなどなど……。ニュース配信にパーソナライズを活用すれば、閲覧数を大幅にアップできるでしょう。
パーソナライズド広告
ユーザーの行動履歴や属性をもとに表示される広告を、「パーソナライズド広告」と呼びます。自社と相性がいいユーザーに広告を見てもらえるため、効率よく成約率アップを狙えます。パーソナライズド広告は、Amazonや検索エンジン、SNSなどで表示させることが可能です。
SNSはパーソナライズされたコンテンツが配信
TwitterやInstagramなどのSNSでも、コンテンツがパーソナライズされて表示されます。たとえば、自分がフォローしているユーザーに似た投稿やアカウントが表示されたり、興味関心に合ったSNS広告が表示されたりした経験がある方は多いでしょう。
SNS運用をするときは、アカウントのカテゴリやSNS広告のターゲティング設定などをしっかりと行うと、パーソナライズした情報を届けやすくなります。
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WRITING 執筆
LIFT編集部
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